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東京ガスの供給約款は暴力団とその家族から生存権すら奪うか?

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 暴力団の市民社会へ接触を断つことを目的にした暴力団排除(暴排)条例が、全都道府県で施行されるようになってから今年で10年が経つ。1991年のピーク時、暴力団勢力(暴力団構成員及び準構成員)は9万1000人いたが、2005年以降は減り続ける一方で、昨年(2020年)末現在で2万5900人と16年連続で減少し、史上最少となった。

 暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、1992年施行)と暴排条例が暴力団勢力を社会から徹底的に締め出した結果だ。しかし、堅気の世界に戻ろうと、暴力団から脱退しても、「元暴5年条項」で脱退後の5年間は暴力団関係者と見なされ、銀行口座、保険、携帯電話の契約をできないようにしてしまったから、一度でも暴力団に籍を置いた人間には住みづらい社会となっている。

 たとえ罪を償い出所した後でも社会から受け入れられず、生きづらさを感じなければならないことは、今年2月に公開された西川美和脚本・監督の映画『すばらしき世界』でも描かれた。映画では人生の大半を刑務所で過ごした、元ヤクザの容易ならざる人生の再スタートを役所広司が熱演。また1月に劇場公開され、Netflixでも5月から独占配信されている藤井道人監督の『ヤクザと家族 The Family』はヤクザ本人でなく、関わる家族も社会から締め出される厳しい現実を我々、視聴者に突きつけた。

 特に暴排条例が全国津々浦々で施行されるようになり、ヤクザは昔のようにシノギを得る道を断たれた。たとえ、暴力団ときっぱり縁を切っても5年もの間、銀行口座も開けない、携帯も持てないとなると暴力団本人も家族も普通の生活は送れない。状況は家族にとっては更に過酷で、反社会的勢力の関係者が身内にいるということだけで妻や娘は、職場や学校での居場所を失うケースも。

 日本国憲法は第25条で、(1)すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(2)国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと、“すべての国民”の「生存権」を守ることを国の責務と定めている。が、暴力団、そして、その家族は対象から除外されているように見える。

 そんな中、苦しい境遇にある彼らにとどめを刺す処置が東京ガスによって取られた。9月23日に配信された「NEWSポストセブン」(小学館)の記事によると、東京ガスは10月1日付で約款を変更し、新たに「現在かつ将来にわたって暴力団、暴力団員(中略)等の反社会的勢力に該当しないことを表明し、保証していただきます」の一文を加えたのだという。

 同社のホームページを確認すると、10月1日から実施の一般ガス供給約款には、「反社会勢力の排除」が新たに設けられ、「お客さま及び当社は、このガス需給契約成立時において、自己又は自己の役員が、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業・団体、総会屋等その他これらに準ずる者(以下 総称して「暴力団員等」といいます。)及び以下の各号のいずれか一にも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを表明し、保証するものとします。違反した場合はガス需給契約を解約することがあります」の一文を入れた。

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