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K-POPはなくなる!? 世代間人気を超え米国カルチャーへ浸透「K-インヴェイジョン」とは

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BTS

 今年のK-POPの世界的人気をうらなう上で、興味深い話題が取り上げられている。K-POPはMZ世代(ミレニアルとZ世代)や一部のファンに受け入れられている“サブカルチャー”だったが22年以降、支持層の世代間格差がなくなり、米国を中心によりメジャーカルチャー化していくというものだ。

 最近、いくつかの韓国現地メディアは、K-POPが米国でどのように受け入れられているかを調査した記事を掲載している。なかでも興味深い論点として、50~60代の白人女性・男性にも人気の裾野が広がっているというものがある。

 例えば、大手紙のひとつであるハンギョレ新聞は、テキサス州出身の50代女性ジョー・アンリのケースを紹介した。事業を営んでいた彼女は、今からおよそ4年前に200万ドルの損失を出し失意のどん底にいた。そんな彼女に友人がひとつの曲を送った。BTSの『2!3!それでも良い日がもっと多いことを)』だ。

 当初、彼女は「50代女性がなぜアイドル?」とまったく興味も持てなかったという。だが車のなかで偶然に曲をかけたところ感動。世界が自分に対して背を向けたと失望していた彼女にとって、大きな慰めになったという。曲を聞いて涙や感情が止まらず、高速道路に車を停めたため、事件が起きたと勘違いしたパトカーが近寄ってきたほどだったという。

 もともと、韓流ドラマはアジアの中年女性を中心に消費されていた。一方、K-POPは2000年代中盤から米国の若者に広がった。そして彼女のケースのように、近年では50~60代の女性&男性までその影響が広がっているという話が増えている。

 また、米国の若者たちの親や保護者も、BTSをはじめK-POPには好意的だという。というのも、米国アーティストの曲は暴力的かつ性的、また扇動的な内容が多いが、BTSは「足りない自分を愛する」というような慈愛に満ちたポジティブなメッセージを投げかけるからだ。ヒップホップやロックよりも、K-POPの方が“ベター”と考えている訳だ。

 K-POPが米国で影響を広げている背景として、米国の社会的背景から読み解こうとする識者もいる。現代の米国の若者は、菜食主義や環境問題、消費者の倫理など社会問題に興味が強い。BTSやBLACK PINKなど人気グループは若者の声に耳を傾け、前時代的な資本主義的悪弊や価値観に対して積極的に行動を起こしメッセージを発する。その“時代の代弁者”としての要素が、若者たちの“忠誠心”をさらに強める循環を生んでいるという。

 K-POPがここまで影響を持つ理由は、ルックスやエンタメ的な要素も多分にあろう。だが、それ以上に世界の実情や新しい社会に存在やメッセージがフィットしている、また求められているという根源的な理由がありそうだ。

 世界各国では現在、米国へのKカルチャーの浸透を「ブリティッシュ・インヴェイジョン」ならぬ、「K-インヴェイジョン」と表現するケースも増えてきた。K-POPのトレンドが続くかという話題もさることながら「なぜK-POPが浸透しているのか」をつぶさにみていくことは、世界のカルチャーシーン、もしくは世界の在り方そのものを理解する上でも示唆に富むものとなりそうだ。

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2022/01/15 17:00
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