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BTS他アイドルとファンがより親密な関係に!?エンタメ先進国韓国でファンテックが台頭

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写真/Getty Imagesより

 近年、ファンテックという言葉が広がりつつある。これは、エンターテイメントや芸能人、もしくはアーティストを愛する「ファン」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語だ。ビジネス的には、旧来からあるファンサービスを、デジタル技術で提供する新たな動きを総称する言葉となっている。

 ここ数年、クリエイターや芸能人がYouTubeやインスタグラムなどSNSを通じてコンテンツを配信し、視聴された数によって広告料(もしくは投げ銭など)を収益とするモデルが定着してきた。また、ファンクラブなどでグッズやチケットを販売。メディアやサービスを使い分けて収益構造を多角化させることが、業界のビジネスモデルとして定着しつつある。

 ただクリエイターがYouTubeなどプラットフォームを利用した場合、手数料を取られてしまう。そのような状況を変えていくため、ファンテックの全体像をみるに、アーティストが自前で、かつデジタル上で収益化できるようサポートするサービスが多く登場している。将来的には各界の有名ブランドがアマゾンなど大手ECを離脱するという動きと同じように、芸能人やアーティストの“大手プラットフォーム離れ”を加速させていきそうだ。

 ところで、エンタメが元気な韓国では、自前もしくは外部サービスを利用して、自分たちとファン専用のプラットフォームを作ろうという動きが加速しているという。

 この分野では、BTSの所属芸能事務所であるHYBEがリリースしている「Weverse」、大手ゲーム企業・NCSOFTの「Universe」などがすでに有名だ。Weverseは自社所属アーティストのほかに、2020年に米国のアーティストであるグレイシー・エイブラムス、アレクサンダー 23、英バンド・New Hope Clubなど、7組の海外アーティストと契約。自前のプラットフォームを使用した収益戦略に拍車をかけている。

 一方、21年にリリースされたNCSOFTは現在、200以上の国向けにサービスされており、累積ダウンロード数が2000万件を突破した。こちらは他の競合プラットフォームとは異なり、自社所属のタレントや芸能人がいない。そのため、中小芸能事務所のタレントと個別に契約を結び収益化していく狙いだ。今後、ゲーム業界と相性が良いタレントを囲い込むことができれば、大きく成長するのではないかとの期待も膨らんでいる。

 最近では、韓国大手芸能事務所の一角・SMエンターテインメントの系列会社・DearUが、「bubble for Sports」というスポーツ選手専用のファンコミュニケーションアプリをリリースする計画を発表してもいる。DearUは「DearU bubble」というプラットフォームを2020年から運営。これは、芸能人やタレントが作成するメッセージをファンが1対1のチャット形式で受け取れるプラットフォームなのだが、今回はそのスポーツ選手版をリリースするということらしい。

 韓国では今年以降多くのアイドルや芸能人が、よりクローズドな形のファンビジネスを展開していくことになるだろうという専門家の分析が目立っており、加えてスポーツ選手やインフルエンサーもこの流れに合流するとみられている。言い換えれば、YouTubeなど大手プラットフォームへの依存度を下げ、自前のサービスのなかでファンを囲い込む傾向がより強くなると言うものだ。おそらく、その新たなプラットフォームのなかでは、NFTやオリジナルコンテンツが流通し、新たな経済圏が生まれてくる可能性もある。

 韓国芸能界のビジネスモデルがどのように変化するか、またその変化を促すためのファンテックはどのように発展するか。業界関係者にとってもファンにとっても、キャッチアップすべきテーマのひとつとなりそうだ。

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2022/01/28 17:00
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