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池田大作氏死去の新聞記事に見る“訃報”の難しさ、そして各紙が頭を悩ませたその扱い

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創価学会

 15日、創価学会の名誉会長・池田大作氏が死去。国内の会員数827万世帯(公称)を誇る宗教団体のトップの死はメディアでも大きく取り上げられたが、宗教界の大物ともなると、お悔やみ記事ひとつを書くのも大変な苦労が伴うという。

「新聞記事は客観性が命ですが、宗教家は内外で評価が極端に分かれることも多く、中立的な記事を書くのが非常に難しい。池田氏の場合、細かく来歴を振り返れば、選挙違反が問われた大阪事件や、学会を批判する出版物に圧力をかけた言論出版妨害事件などにも触れざるを得ませんが、学会は間違いなく嫌がるでしょうから、結果として全体的にサラッと扱うことにならざるを得ません。

 本来であれば、池田氏ほどの影響力の持ち主なら、本記(事実関係を報じる記事)、評伝、サイド記事、語録、関係者コメント、知人らの言葉、担当記者が見た素顔など、フルに紙面に展開してもおかしくありませんが、そこまでの扱いではなかったのは、各方面への配慮が働いた結果でしょう」(大手紙記者)

 新聞記事は客観性と共に正確性も命だが、とりわけお悔やみ記事はミスが許されない。事実を淡々と伝えることが求められる訃報は一見、簡単そうに見えるが、実は記者にとっては大変な仕事だという。

「突然亡くなった著名人の場合、情報を確認してから訃報を書きますが、かなりの高齢だったり、重篤な病気に罹っている人物の場合、訃報は用意しておくのが当たり前。池田氏の場合、かなり前から健康不安説が伝えられており、少なくとも数年前には訃報は用意されていたはずです。

 ただ、1度書き上げたら終わりではなく、情報は日々アップデートしておく必要がありますし、場合によっては、訃報が届く前に関係者にコメントをお願いするパターンもある。事情を汲んでコメントしてくれる人もいますが、中には“不謹慎だ”と怒る人もいて……まぁ当たり前ですよね。“◯◯新聞が訃報を用意している”という情報が漏れてもマズいですし、著名人の訃報は優秀な記者の仕事です」(同上)

 ちなみにお悔やみ記事に対する反応には土地柄があり、「伝統的に西日本の方が、訃報に割くスペースが大きい」(同上)のだそう。また、池田氏の訃報に関しては大手紙でも扱いは分かれた。

「いわゆる五大紙(読売・朝日・毎日・産経・日経)の中で、池田氏死去を1面トップで報じたのは読売。これはひとえに学会との関係の深さの表れでしょう。読売は与党にべったりで、自公が手を組む状況で、池田氏死去の扱いが大きくなるのは必然。同時に、聖教新聞(創価学会の機関紙)は数年前から一部の配達業務を読売に委託しており、学会とはビジネスパートナーでもあります。

 岸田政権の支持率が完全に危険水域に入り、自民が頼りとするのは学会の組織力。カリスマトップの死去で求心力が弱まることが懸念される状況の中、その死を1面トップで大々的に取り上げることで、組織の引き締めを狙ったものと見られます。

 一方、毎日は扱いに悩んだはずです。毎日は政権とは距離を置くスタンスですが、系列の印刷会社が聖教新聞や創価学会の機関紙などを印刷しており、学会とは関係が深い。当日の1面トップは速報性が低い文化ネタでしたから、池田氏の訃報をトップに持ってきて“忠誠心”を示す手もありましたが、流石に躊躇(ためら)ったようですね」(マスコミ関係者)

 また別のタイミングで、氏の功罪に触れる記事にお目にかかれるか。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/11/24 09:00
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