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「週刊朝日」最終号発売、名門誌が休刊に追い込まれた3つのキーワード

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「週刊朝日」(朝日新聞出版)2023年 6/9 休刊特別増大号

 1922年に創刊し、昨年100周年を迎えた日本の最古の週刊誌「週刊朝日」(朝日新聞出版)が、5月30日発売号でその歴史に終止符を打った。

「今でこそ週刊誌の存在は当たり前ですが、それを根付かせたのが『週刊朝日』。太宰治と心中した山崎富栄の日記をスクープしたり、吉川英治の『新・平家物語』が大ヒットしたりして、部数はグングン伸び、1950年代後半には150万部以上を記録しました。司馬遼太郎の『街道をゆく』、山藤章二の『ブラック・アングル』、西原理恵子と神足裕司の『恨ミシュラン』、ナンシー関の『小耳にはさもう』など、ヒット企画をあげればキリがありません。

 しかし、後発の『週刊新潮』(新潮社)や『週刊文春』(文藝春秋)など、出版社系週刊誌が台頭する中で、ヌードグラビアを掲載せず、芸能スキャンダルからも距離を置く新聞社系週刊誌は徐々に勢いを失っていました。近年の部数は10万部を割っていましたから、ピーク時に比べて20分の1にまで落ち込んだことになります」(出版社系週刊誌の関係者)

 ネットに押されて週刊誌はどこもジリ貧状態。もともと速報性ではテレビや新聞に劣るだけに、いよいよ存在意義が問われる段階に差し掛かっているが、「週刊朝日」には自分の首を絞めるような失態もあった。

「『週刊朝日』を語る上で避けて通れないのが、2012年に掲載された橋下徹氏の特集記事です。当時、時代の寵児だった橋下徹大阪市長(当時)を特集した連載に、橋下氏の出自に触れる記述があり、猛烈な抗議が寄せられたもの。連載中止はもちろん、朝日新聞社が正式に橋下氏に謝罪する騒ぎとなりました。

 これについて当時、社内では見本が刷り上がった際、“こんなものを世に出したらとんでもないことになる”という声はあったものの、結果的に雑誌は世に出てしまった。週刊朝日は週刊誌の中でも“良識派”と見られていただけに、一気に信頼を失いました」(フリー記者)

 「週刊朝日」には、社内にも“敵”がいた。

「朝日新聞は1988年に『AERA』を創刊し、一時は『朝日ジャーナル』『アサヒグラフ』を加え、4誌体制の時期がありました。このうちジャーナルとグラフは21世紀を待たずに休刊となりましたが、週刊誌全盛の時代ならともかく斜陽の時代に、読者が被る『AERA』と『週刊朝日』の2誌がある意味は最後までわからなかった。一時は2誌を統合するという話も社内にはあったようですが、うまくいきませんでした。

 これで『AERA』が最後の1誌になりますが、『AERA』の部数は『週刊朝日』より少ない。ネットメディアの『AERA dot.』が堅調なので『AERA』を残すという判断のようですが、新聞以外の紙媒体が消えるのは時間の問題です」(前出・週刊誌関係者)

 ただ、これまで挙げた理由はある意味ですべて“些末なこと”。決定的だったのは、時代の風の変化だ。

「団塊世代が世を動かした時代は、戦争への反省からリベラル的な思想への関心が強く、そういった層に呼応する朝日新聞の紙面づくりは評価されてきました。しかし不景気が続く中、2000年代以降にネットが一気に普及すると、右寄りの論調が俄然、勢いを持つようになり、“左寄り”の朝日新聞はネットで叩かれるように。その流れは、慰安婦問題の誤報で決定的になり、それ以降、朝日はネットでは“フルボッコ”状態です。

 現代の雑誌はネットが命。記事がネットでバズれば雑誌も売れますが、良質な記事でも“朝日”という看板があるだけで、ネットでは嫌われてしまう傾向は強かった。近年は編集部の士気も下がっていたようです。しかし、たとえ時代の流れだとはいえ、芸能人のスキャンダルやエロ記事、“独占告白”や“衝撃スクープ”とは一線を画した種々雑多の記事が載る総合週刊誌がなくなることは、大衆文化を語る上では大きな損失だと思います」(大手出版社関係者)

 刺激に満ちた世の中に、じっくり読ませる週刊誌の居場所はなかったか。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/06/01 02:06
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