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「撮り鉄」過激なマナー違反をどうする? 鉄道会社のキビしい実態

「撮り鉄」過激マナー違反をどうする? 鉄道会社のキビしい実態の画像1
JR東日本公式「撮り鉄コミュニティ」ルームより

 近年、しばしば問題視されているのが、鉄道写真を趣味とする「撮り鉄」のマナー問題。目に余る迷惑行動が全国各地で報じられ、鉄道会社が対策に頭を悩ませる中、少しずつ新たな取り組みが始まっている。

 JR東日本は昨年11月、鉄道ファン向けの「撮り鉄コミュニティ」というサービスを開設。撮影した鉄道写真の投稿や閲覧を無料で楽しめるほか、月額1100円の有料会員は、特別撮影会への参加などのサービスを受けることができる。

「SLやまぐち号」が走るJR山口線の沿線では、迷惑駐車やゴミのポイ捨てなどをなくす取り組みとして、撮り鉄向けの撮影スポットを整備。無料で開放している。

「近年、私有地に入る、撮影に邪魔な木を勝手に切る、駅員に暴言を吐く、挙句の果てには運行を妨害するなど、狼藉を働く撮り鉄の例が絶えません。ただ、本来ならば鉄道ファンは、鉄道会社にとって大切なお客様のはず。

 それなら撮り鉄を厳しく排除するのではなく、彼らが喜びそうなサービスを提供することで、お互いにwin-winの関係を築こうというのが、こういったサービスです。撮る側はよりよい場所で撮影でき、鉄道会社や周辺住民は、安全な運行や平穏な生活が確保できる。撮り鉄は鉄道ファンの中でも一大勢力で、こういった試みはむしろ遅すぎるぐらいです」(ビジネス誌記者)

 マナーの悪い撮り鉄のせいで、鉄道ファン全体への目は厳しくなっている。こういったサービスは、誰もが幸せになる解決策への第一歩に見えるが、現場の事情を知る交通ライターの見方は厳しい。

「問題を起こす撮り鉄は、自分の都合で勝手に木を切ったり、人の敷地に車を停めたり、たまたま映り込みそうになった一般人を躊躇なく怒鳴りつけるような、一般常識を著しく欠いた人たち。鉄道会社が用意した撮り鉄向けの有料サービスに入るような鉄道ファンは、はなから常識があるマナーのいい人でしょうし、電車の運行妨害までするような過激派は、用意された撮影スポットなんて見向きもしないでしょう。

 そもそも鉄道会社にとって、撮り鉄は必ずしもいいお客さんではありません。撮り鉄が好む撮影スポットは駅から離れている場合が多く、彼らが持ち込む機材も多い。乗り鉄は運賃を払いますが、撮り鉄は自家用車で移動する者が多いので、鉄道会社には1円も落とさないからです」(交通ライター)

 一口に鉄道ファンといっても好みの対象は多岐に分かれており、鉄道会社にはメリットの薄い鉄道ファンもいるということ。それでも無下にできないのは、昨今の鉄道会社が厳しい状況に置かれているからだ。

「これまでも鉄道事業は決して儲かるビジネスではありませんでしたが、コロナで客足がいよいよ落ち込み、採算を取るのが厳しくなっています。JR北海道では次々と廃線が決まっていますが、地方の過疎化が進む以上、この流れが全国にも広まるのは確実です。各鉄道会社は、ほんの少しでも稼げるプランを模索しており、撮り鉄もきっちりマネタイズする必要があるのです。

 ただ、撮り鉄に関してはあまりに問題が多く、鉄道関係者のみならず広く怒りの声が沸き上がっています。ある鉄道会社では数年前、撮り鉄が線路に侵入して列車を緊急停車させる事件があり、幹部は『次にこんなことがあったら損害賠償請求する』と怒り心頭でしたよ。今後、撮り鉄が何かトラブルを起こせば、見せしめもかねて莫大な額の賠償請求をされる可能性は大いにある。いつまでも傍若無人に振る舞っていると、いつか大変な目に遭いますよ」(同上)

 撮り鉄の賠償金で経営が回復する、なんて、ブラックジョークだけはやめてほしいが……。

 

 

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2022/09/09 06:00
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