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ラジオ批評「逆にラジオ」第35回

稀代のイジられキャラ・狩野英孝を“泳がせる”壮大な長尺コント『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』

karinobakari.jpg『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』

 当代随一の“イジられキャラ”狩野英孝の取扱説明書が更新された。しかし、書き換えた主は意外にも、縦横無尽にツッコむ剛腕司会者ではない。むしろその対極に位置する、ボケの世界の住人・バカリズムこと升野英知である。つまりそこにあるのは、「ツッコミ対ボケ」という、笑いの典型的な構図ではない。12月9日、『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』(ニッポン放送 毎週月曜22:00~24:00)にゲスト出演した狩野は、升野の繰り出す質問によって巧みに「泳がされる」ことで、秀逸な迷言・妄言を連発することに成功した。

 この日の放送はスペシャルウィークにつき、特別編成の3時間スペシャル。その中の1時間を、番組は狩野に費やした。「費やした」という言葉が、これほど相応しいケースも珍しい。何しろそこには、中身などひとつもなかったのだから。

 番組中盤、ゲストとして呼び込まれた狩野はまず、「テレビでは話さない、狩野さんの素顔に迫りたい」と、升野からその主旨を告げられる。この時点で、これ以降の会話が芸人同士の馴れ合いではなく、一定の距離を保ったインタビュー形式であり、ドキュメンタリーであることが決定される。なんの前触れもなくバカリズムワールドが立ち上がり、狩野ワールドを完全に飲み込んだ瞬間である。

 だが次の瞬間、いきなりそのバカリズムワールド崩壊の危機が訪れる。「僕はそういう風には思ってないですけど、テレビだと割と飛び道具的な部分もあるじゃないですか?」という升野の質問に対し、狩野が「パーティーグッズ扱いね」と、思わぬ自覚を明かしたのである。まさかの展開である。自分自身を客観的に把握されてしまうと、このコントは終わってしまう。

 状況を立て直すため、升野は「今おいくつなんですか?」という、恐ろしくどうでもいい質問を放つ。だが、そのどうでもいい流れが功を奏し、続けて放った「ひとりっ子なんですか?」という問いに、「ふたりっ子です!」と即答する狩野。いよいよエンジンが掛かってきた。手応えを得た升野が一歩踏み込んで、「イジられるという部分はあったんですか?」と訊くと、「いやいやいやいや、そんなの一切ないですよ!」と断言し、「クラスでのパーティーグッズ的なポジションではなかったんですか?」という質問には、「ないないないないないない」と食い気味に6回否定する狩野。冒頭の「パーティーグッズ扱い」に対する自覚症状はなんだったのかという、摩訶不思議な立ち直りっぷりである。そして、いよいよ狩野らしい自己肯定感の強いフレーズが、期待以上の極小スケールで放たれる。

「学級会でも、相当回してましたからね、僕」

 学級会をまるで『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)のように語る、この「針小棒大」感こそが狩野の真骨頂である。映画学校時代には、「レボリューション」というあだ名で呼ばれていたらしい。

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