日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > “未成年少女集団”AKB48の「喜び組問題」を「文春」だけが書けた理由とは?
【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第32回】

“未成年少女集団”AKB48の「喜び組問題」を「文春」だけが書けた理由とは?

akb0215.jpg「週刊文春」2月18日号

●第32回(2月10日~2月16日発売号より)

第1位
「AKB48は社長の『喜び組』」(「週刊文春」2月18日号)

第2位
「検察暴走の果て『罪なき罪』をつくる検察の大罪」(「週刊朝日」2月26日号)

第3位
「スクープ!『小沢に犯された兄・由紀夫に期待するのはムダです』鳩山邦夫『新党旗揚げ』宣言」(「週刊現代」2月27日号)

 このところ、写真週刊誌の元気がない。「フライデー」は、朝青龍の暴行事件をスクープしたまではよかったが、被害者として朝青龍の個人マネジャーが名乗り出たことをそのまま伝え、実は別人で、傷害事件にまで発展しそうだという「事実」を十分に取材することなく、「週刊新潮」に美味しいところをさらわれてしまった。

 往時、三十数人いた編集部員が半分まで減らされたために、もう一歩の押しが足りなくなっているのではないか、心配だ。

 さて、国会の論戦は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長の政治とカネの話ばかりに終始していて、盛り上がりに欠けること甚だしい。その一番大きな理由は、鳩山首相が「秘書が秘書が、母が母が」と、ガキのような答弁しかできないことにある。与謝野馨元財務相が、鳩山邦夫元総務相から「兄貴がしょっちゅう母のところに行き、子分に配る金をもらっていた」と聞いたと質問、「平成の脱税王」と批判したことに腹を立て、色をなして反論したが、国民の多くは、そんなことがあってもおかしくないなと思うばかりである。

 兄弟は他人の始まりという言葉は、この兄弟のためにあるようだ。「週刊現代」はタイミングよく邦夫氏にインタビューし、こう言わせている。

「兄は魂を二つ持っているんですよ。一つは小沢さんに売り、もう一つはどうしたかというと、労働組合に売ってしまったんです。選挙のためにね。だから今の兄には魂がない。自分というものがないんです。総理大臣をやっている鳩山由紀夫は抜け殻で、小沢さんの操り人形。自分で何も決められないのは当然です」。母親からの献金については、「私は母からのカネを個人のカネとして使い、自分の政治資金管理団体には一切入れていません。(中略)ところが兄は資金管理団体に入れた。それで辻褄合わせに、死んだ人の名前まで使った。そのために虚偽記載で刑事事件になった。同じ母のカネではありますが、処理の仕方が兄と私とでは根本的に違うんです」と話している。

 カネに関しての感覚は、どっちもどっちだと思うのだが、家族で食事をしていたとき、「由紀夫さん、あなたは小沢さんが嫌いなのだから、一緒の党にいるのをやめて飛び出したら」と、母親が言ったということだ。

 子どもたちに十億円以上の資金援助をし、政治的なアドバイスまでしていたのだ。鳩山家のゴッドマザーを、高齢というだけで喚問しないというのはおかしいと、私も思うのだが。

 弟の邦夫氏は、与謝野発言で慌てて記者会見し、「兄が母にカネを無心したという話は、母から聞いていないし、私も事実を全く知らない」と打ち消した。しかし与謝野氏は、国会で質問した後、邦夫氏から「質問は良かった。私もあなたの話を裏付ける」と言われたと話している。

 優柔不断は、この兄弟共通のようだ。

 第2位は、「週刊朝日」。小沢一郎幹事長を起訴できなかった検察に対するバッシングの嵐が続くなかで「朝日」は、三井環元大阪高検公安部長と緒方重威元広島高検検事長を引っ張り出し、ジャーナリストの魚住昭氏を司会に、検察を痛烈に批判している。

 三井氏は、検察の調査活動費を裏ガネにしている実態を告発しようとして、大阪地検特捜部に逮捕され、今年の1月18日まで服役していた。緒方氏は、朝鮮総連本部の不動産売買をめぐり、詐欺の疑いで逮捕され、地裁で懲役2年10月、執行猶予5年の判決が出され、控訴中である。

 小沢幹事長の件では、「三井:霞ヶ関というより検察を守るための”小沢つぶし”ですわ。民主党が取り調べの可視化法案を出したり、検察庁の人事にも手を突っ込むと匂わせているでしょう。検察にとって小沢さんは”目の上のたんこぶ”ですから」「緒方:たしかに、元検事として、このような地検の暴走に対して、高検、最高検などの上層部が現場の検察官をどうして押さえられなかったんだという思いがあります」と語る。

 読みどころは、緒方氏が、特捜の取り調べで、一度自白していることを、魚住氏が聞いて、こう答えている。

「本当に情けないことで、ずっと後悔しているのですが、私も『虚偽の自白』をしています。(中略)取り調べる側から取り調べを受ける側になってわかったのは、検察は人格を破壊して被疑者や参考人から思うような供述を取るということです」。一番辛かったことはと聞かれて、家族をダシにされたことで、家族からのメールを見せられ、「副部長から『争うなら裁判に5年はかかるよ。あんたそのとき80歳だろ。それから実刑で入ったら死ぬまで出られない。(中略)』と言われたんです。僕がのみ込めば家族のためにもいいのかなと、それで僕は落ちたんです」。恐ろしいのはそれからだ。認めたはいいが、どうやってウソの供述をしようかと悩んでいたが、杞憂に終わった。「具体的に事実を供述しなくても検察はすでに共犯者から得た供述をもとにしたストーリーをつくっていましたから、そのとおりの調書が作成され、後は調書にサインするだけだった」(緒方氏)

 いま、許永中の詐欺事件に絡んで有罪になり、収監されている元ヤメ検の田中森一氏は、私にこう語ったことがある。

「検察がやろうと思えばなんでもできる。現に、俺がそうやってきたからね」

 私はいまでも、小沢一郎幹事長は、ゼネコンから多額の裏金を受け取り、それを隠すために、政治資金団体を使って資金操作をしたのではないかという疑惑をもっている。そこまでたどり着けなかった検察の捜査力劣化を憂えている。

 だが、今回の捜査で、検察側が起訴さえしてしまえば後は何とかなると、十分な証拠固めをせずに強引な捜査をした結果、小沢氏を不起訴処分にせざるをえなかったのだとすれば、この後遺症が、検察を長い間苦しませることになるはずだ。

 第1位は、文句なく、いま話題のアイドルグループ「AKB48」に噴出したスキャンダルである。

 話題の主は、都内で電子部品製造業を営む資産家の御曹司。秋元康氏がプロデュースし、「オフィス48」の芝幸太郎社長がマネジメントして始めた「AKB48」が、始めは資金調達に難航したため、この御曹司が父親から借りた約20億円を提供し、受け皿会社として三人の頭文字からとって「AKS」を設立し、御曹司が社長に就いた。

 だが、この御曹司、気に入った「AKB48」のメンバーを呼んでは、高価なバッグやアクセサリーをプレゼントするようになったようだ。

 なかでも、一番のお気に入りは篠田麻里子(23)だという。篠田嬢は、福岡のキャバクラで御曹司と知り合い、上京して、秋葉原の「AKB劇場」に併設されたカフェで働いていたところ、ファンから要望があり、06年に「AKB48」に入ったそうだ。

 それからはとんとん拍子で、CDデビュー、CM出演、07年には紅白にも「AKB48」のメンバーとして出場を果たしている。

 大手事務所に移籍し、本格的なソロ活動や、ファッション誌「MORE」(集英社)の専属モデルにも抜擢。「週刊文春」によれば、彼女は、御曹司のクレジットカードを自由に使い、御曹司と同じマンションに部屋を借りているという。

 ファッション誌や子ども向け雑誌をもっていない「文春」ならではのスクープである。なぜなら、そうした雑誌を出している出版社で、こうした記事を掲載しようと思っても、「AKB48」を起用したい他の編集部からクレームがつきかねないからだ。

 テレビ、スポーツ紙も同様である。このスクープの後追い記事がどこにもでないのは、そうした理由によるところが多い。だが、現代の巻頭カラーグラビア「漂流するニッポン AKB48という現象」を見ればわかるように、90年代以降生まれの未成年が多くいるグループなのだ。

 これまで数々の未成年アイドルたちのスキャンダルを見ても分かるとおり、こうした若すぎるグループは、しっかりした大人たちが見守ってやらないと暴走することがままある。ベタベタするばかりのヨイショ報道ばかりでは、彼女たちのためにならない、ということは言うまでもない。ジャーナリズムは、その任を果たすべきだと思う。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

優遇接待~孤島の極楽へようこそ~オリジナルサウンドトラック

そこは楽園か、はたまた地獄か。

amazon_associate_logo.jpg

【関連記事】 「喜び組!?」AKB48運営、社長と篠田麻里子の愛人報道を否定 泥沼法廷劇に発展か
【関連記事】 「検察による言論弾圧か!?」週刊朝日編集長”検察から出頭命令”騒動の裏側
【関連記事】 小沢一郎いよいよ逮捕寸前!? 反小沢と検察批判に割れる週刊誌を読み比べ

最終更新:2010/02/16 10:50
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真