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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第35回】

マニフェスト達成率5%以下! 週刊誌に総叩きされる民主党政権の”嘘”と”失態”

free.jpg「週刊ダイヤモンド」3月13日号

●第35回(3月2日~3月8日発売号より)

第1位
「FREEの正体 0円ビジネス全解剖」(「週刊ダイヤモンド」3月13日号)

第2位
「企業が狙うツイッター・マネー」
(「AERA」3月15日号)
第3位
「独占スクープ『トヨタを売った男』元顧問弁護士の告白」(「週刊現代』3月20日号)

横並び大賞「各誌の民主党批判記事」
「政権交代『6ヶ月』辛口総点検」(新潮)
「鳩山首相と小沢一郎『バカ』と『アホ』の壁」(文春)
「民主党バブルはなぜ崩壊したのか」(朝日)
「鳩山生活破壊民主党『解体新書』」(ポスト)
「歌を忘れた民主党 ボクちゃんたちの失敗」(現代)


 まるで自民党政権末期のようなタイトルではないか。政権奪取してわずか半年で、あれほど期待に胸震わせた政権交代が、かくも惨憺たることになるとは、各誌の編集長も予想してはいなかっただろう。

 その要因は、鳩山・小沢氏のカネの問題以外にも、「ポスト」が「鳩山総理よ、国民の『憤怒の声』が聞こえぬか?」で取り上げているように、「年金保険料は月5万円アップなのに受給額は未定では詐欺だ!」「子ども手当出すけど半額じゃ家計負担増で話が違う!」「産科医たちが悲鳴! 4月に出産難民があふれ出す」「高校無償化の前にこの春卒業証書がもらえない生徒を救え」「タクシー運転手を喰い物に! 国交省の天下り・格付けビジネス」など、「達成率5%以下」(新潮)と揶揄されるマニフェスト違反のせいであることは間違いない。

 しかし、これだけ同じような民主党批判を読まされると、ではどうしたらいいのかと聞き返したくなる。自民党は、与謝野馨元財務相が「文藝春秋」4月号で、谷垣禎一総裁ら執行部を批判し、内部は民主党以上に崩壊しているし、この2党に代わる魅力ある第三極など到底期待できそうもない。

 週刊誌にも、民主党政権を誕生させる一翼を担った責任があるはずだ。ただ批判のための批判をするだけではなく、国民の生活をこれ以上追い詰めないために、政治家たちが何をしなければならないのか、建設的な代案を示すべきときではないか。どれを読んでも横並びの誌面作りでは、読者は離れてしまう。各誌編集長よ、もう一ひねりせよ!

 今週の第3位は、元米国トヨタ自動車の顧問弁護士、D・ビラー氏にインタビューした「現代」の記事。

 米国でトヨタの大規模リコール問題が大きな騒ぎになっている。D・ビラー氏は、トヨタが過去の横転事故を巡る訴訟で重要な証拠開示を怠り、裁判所の開示命令に違反していたと示唆する資料を、米下院監視委員会に提出して、この問題をさらに煽った人物である。

 D・ビラー氏は、彼が顧問をしていた時代、トヨタが訴えられたいくつかの訴訟で、トヨタ側が資料開示をせず隠蔽していたと話している。だが、そもそもこの主張がおかしいと、トヨタ相手に100件の訴訟を起こしている弁護士が疑問を呈している。

「開示命令を受けても、なるべく後回しするよう議論を長引かせるのは、いわゆる企業裁判で多くの企業がやっている戦術です」

 結局、D・ビラー氏はトヨタから解雇されるのだが、解雇手当として約3億3,000千万円も受け取っている。このような人間を雇い、解雇したあげく「内部告発」されたトヨタ側に懐の甘さがあったことがよく分かる。そういう意味では、時期を得た記事である。

 今週の上位にはネット関連企画を選んだ。2位は「AERA」のツイッターについての記事。いまや「ハマコー」(現代)まで使いこなすというツイッターは、ビジネスでも超有効だというのだ。

 PCメーカーのデルはアウトレットのセール情報をリアルタイムでつぶやき、わずか2年間でおよそ6億5,000万円を売り上げた。無印良品は、2月にツイッター限定でセールを実施して、フォロワーの数を1万5,000人まで増やし、セール品はあっという間に品切れになった。日本コカ・コーラは、自社で運営する特設サイトでツイッターを使ってビンゴ大会を開き、09年夏には、5日間で47万人の参加者を集め「ギネス記録」を打ち立てた。

 ツイッターは、2ちゃんねるやmixiに比べると、年収が500万から1,000万円を超える富裕層が多く、年齢も30歳から54歳と幅広い層に利用されているという。日本初のツイッターで結婚したカップルのインタビューも独占掲載している。

 1位は「ダイヤモンド」の「FREEの正体 0円ビジネス全解剖」。ここは大特集主義で、はずれることもあるが、当たったときの衝撃力は強い。

 米「WIRED」編集長のクリス・アンダーソン氏が書いた『FREE』(NHK出版)は日本でもベストセラーになった。それは、情報がどんどんタダになって、追い込まれているメディアの人間にとっても、ユニクロ商法に追いまくられ、売値が限りなくタダに近くになっているメーカーにとっても、福音の書になるかもしれないという切実な読者が多くいるからだろう。

 ツイッターのときもそうだったが、「ダイヤモンド」は、こうした話題を先取りするのが、一般週刊誌より早く的確である。単行本もこの特集も、「フリーミアム(5%の有料ユーザーが95%の無料ユーザーを支えている)」というモデルを、どのようにビジネスに当てはめればいいのかについての明確な回答は出ていない。

 だが、「モバゲー」や「摩登天空」の成功例を読むと、これならできると思わせる何かがある。なにしろクリス氏は、無料経済規模は、控えめに見積もっても3,000億ドルあるというのだから。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

読み切るだけの価値はあるそうです。

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最終更新:2010/03/09 15:00
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