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週刊!タレント解体新書 第2回

ベッキーはなぜテレビから必要とされ続けるのか 『モニタリング』(5月15日放送分)のワイプ術を徹底検証!

 ここまででも充分な仕事ぶりである。しかし、ベッキーが本当にすごいのは、ここからだった。そのVTRが進むにつれて、リアクション主体である自分の立ち位置を変幻自在に変えていくのである。具体的に言うと、実際にガソリンスタンドでセクシーな女性が姿を現したとき、ベッキーはこう言う。「いいね~」と。ちょっと下卑た感じで。つまりここでベッキーは、男目線からのリアクションに立場を変えているのだ。お茶の間的には「お父さん」になっている。さらに、目のやり場に困る男性客を見て、冷やかすように「照れ屋~」とツッコむ。お茶の間的には「ちょっと年上のお姉さん」だ。ベッキーはこのようにして、発言者としての立場を変えながら反応していく。このワイプ術は、ただ程度としてのレベルが高いということではなく、そもそもの発想の転換であり、ある意味でワイプにおける革命だとも言えるだろう。これができる「タレント」は、おそらく今の日本において彼女しかいないはずだ。

 なぜベッキーは、それほど特殊なワイプ術をこなすことができるのか? ここからは推測だし、彼女本人が意識しているかどうかは分からないが、おそらくベッキーはスタジオからリアクションしているのではなく、完全に、お茶の間からリアクションしているのだ。VTRをプロとしてスタジオから見ているのではなく、VTRそのものをテレビとして見ながら、お茶の間の視聴者としてリアクションをしている。それは、彼女が幼少期からずっとタレントになりたかったという事実に由来しているのかもしれない。それも推測に過ぎない。だが、事実としてベッキーが発する言葉は、お茶の間の視聴者が発する言葉とほぼ一緒なのだ。

 ベッキーを考えるということは、テレビを考えるということだ。実はテレビは、大勢で見たほうが楽しい。一人で真面目に見るよりも、両親や兄弟や友人と、なんやかんやと言いながら見る楽しみ方がある。ベッキーは、お茶の間からのリアクションをすることによって、その楽しみ方を蘇らせてくれる、現在では唯一無二の存在なのだ。そう、だからこそベッキーは、いつまでもテレビから必要とされ続けるのである。

【検証結果】
 テレビの視聴環境は、この10年で大きく変わった。HDDの発展や、テレビの小型化により、テレビはお茶の間で見るものではすでになくなっている。それでもなお、テレビを誰かと一緒に見て楽しみたいという欲求は我々の中にまだ残っていて、その欲求をベッキーは現実のものにしてくれている。彼女がずっとテレビから必要とされ続けているという事実は、ある意味では過去への郷愁だと言えるかもしれない。だがそこに、テレビの一つの可能性のともしびを消すまいという大きな意志と矜持を感じてしまうというのは、さすがに言い過ぎだろうか。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2014/06/18 11:49
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