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織作亜樹良の「アニメ・クローズアップ!」

日常系なのに登山は本格志向! 第2期シリーズから一気に化けた『ヤマノススメ』

yamanosusume.jpg『ヤマノススメ セカンドシーズン』公式サイトより

 現在放送中の『ヤマノススメ セカンドシーズン』が、ネットを中心にちょっとした話題となっている。本作は、2013年1月から5分枠アニメとして放送された『ヤマノススメ』の第2期シリーズ。第2期放送に伴い、放送枠も5分から15分へと拡大された。内気で高所恐怖症の主人公・雪村あおいが、ちょっと強引な性格の幼なじみ・倉上ひなたに引っ張り回される形で山登りをするところから物語はスタート。登山趣味を通じて知り合った1つ年上の斉藤楓、中学2年生の青羽ここなの4人を中心に、女の子たちだけの「ゆるふわ」な日常を描いた、いわゆる日常系アニメ作品である。しかし、それが今回、2クールの折り返し地点となる“富士登山編”で、日常系アニメとは思えない過酷な描写やリアルな演出で視聴者の注目を集めたのだ。

 異性との恋愛要素が一切排除された中、美少女キャラクターたちのゆるふわな日常が描かれていく“日常系”、もしくは“空気系”と呼ばれるジャンルのアニメ作品群は、ゼロ年代後半あたりからある一定数を占めるようになった。“キャラ萌え”がとにかく重視され、物語性が希薄となるのが特徴であるが、2007年に放送された『らき☆すた』の大ヒットにより、日常系アニメはその後、量産されることとなる。しかし、『けいおん!』『ひだまりスケッチ』『ゆるゆり』といった作品がヒットしていったものの、それ以外の日常系アニメ作品は、視聴率的にもパッケージの売り上げ的にもそれほど特出した人気が出たものはなかった。それでもこのジャンルが廃れずに今でも毎クールに1、2本ほど放送されているのは、なんといっても、気楽に見ることができるからだ。物語を真剣に追う必要はなく、キャラクターたちが織りなす「ゆるふわ」な世界観にまったりと萌えるだけでいい。ストレスを抱え込みがちな現代人にとって、日常系アニメはちょっとした癒やしの時間を与えてくれるのだ。

 そして『ヤマノススメ』 も、公式サイトで「女の子だけのゆるふわアウトドア」と称されている通り、物語のメインは「女の子だけ」で構成され、その関係性は「ゆるふわ」でつながっており、「萌え」を重視したキャラクターデザインとなっている。ここだけ見れば、『ヤマノススメ』は間違いなく王道の日常系アニメ作品だろう。しかし、この作品はこれまでの日常系アニメとは大きく違うところがある。それは公式文の「ゆるふわ」に続く「アウトドア」の部分。ここが、まったくもって「ゆるふわ」ではないという点だ。あおいたちは実際に存在する山を登っていくのだが、その描写がとてもリアルなのである。

 第1期では、天覧山や高尾山といった、どちらも低くて初歩の山登りだったこともあり、登山の「リアルさ」よりもあくまで「ゆるふわ」な部分が勝っていた。しかし、現在放送している第2期では一気に1700メートル級の三ッ峠山や、日本最高峰である富士山への挑戦をしている。これではいくら「ゆるふわ」なキャラクターたちといえども、「ゆるふわ」なままで登っていくことはできないし、実在する山を登場させているので、それらの山を登る際の注意点なども詳細に描かなくてはならない。そのため、制作スタッフたちは作品に登場する山へ実際にロケハンを行い、丁寧な背景や風の音、どのポイントが大変かといった細かなところまで忠実に登山風景を作り上げている。キャラクターは「ゆるふわ」でも、登山に関してはあくまで本格志向。これらのことをたった15分間に凝縮し、見事な映像作品として成り立たせているところに、スタッフたちのこの作品にかける熱い思いと、登山に対する真摯な気持ちがひしひしと伝わってくる。

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