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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

ひろしはなぜ“いい話”になるのを嫌がるのか?『ど根性ガエル』第4話

dokouzyo0803.jpg『ど根性ガエル』(日本テレビ)

今クールのドラマの中から、注目の作品を1本ピックアップし、毎週追っていく新コーナー。

 『ど根性ガエル』の第4話のストーリーの主軸となるのは、花火大会だ。ヒロイン・京子ちゃん(前田敦子)に一緒に行こうと声をかけてフラれる主人公のひろし(松山ケンイチ)、というお約束の展開もあるが、この花火大会はひろしにとって意味がある。子どもの頃、まだ記憶もないうちに父を亡くしたひろし。いつも頭にかけているサングラスは、父の形見らしい。幼いひろしにそのサングラスを渡した母ちゃん(薬師丸ひろ子)は、こう声をかける。

「ずっとつけてな、これを。いいかい。今日は花火大会だ。空の上から、父ちゃん見てんだよ」
 
 ひろしがつけているサングラスは、亡き父から見つけてもらうためのものだったということがここで明かされる。とても“いい話”だ。さらにいうと、親の死というのはひろしに限ったことではなく、主要な登場人物である京子ちゃん、ゴリライモ(新井浩文)、五郎(勝地涼)もそれぞれ親を亡くしている。だからこの第4話は、全員にとって“いい話”になっていい。感動して、誰もが涙するような“いい話”にすることはたやすいだろう。

 だがひろしは、ストーリーがそういった“いい話”になることを拒絶する。京子ちゃん、ゴリライモ、五郎が集まってひろしの父の話をしんみりとしているときにも乱入して、その空気を壊す。ひろしがピョン吉に言うには、こうらしい。

「どうせ、五郎のやつが俺の父ちゃんの話でもしたんだろ? 苦手なんだよ、そういう“いい話”の人、みたいになるのはよ」

 これはひろしのキャラクターでもあるが、同時に『ど根性ガエル』の全体を通じるテーマ、あるいはルールでもある。『ど根性ガエル』は、“いい話”になることを決して好まない。むやみに感動的になるのを避けているフシさえある。なぜかといえば『ど根性ガエル』が描くのは、伝えたいのは、特別な感動的な場面ではなく、むしろ日常そのものだからだ。

 花火大会が雨で中止になったときの母ちゃんの言葉が、それを示している。

「雨なら雨で、あーあ、って空を見上げるだろ? それでいいんだよ。花火も、なーんにもない空でも、上向くのは大事なことなんだよ」

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