源頼朝が死刑から一転流刑になった背景――後白河法皇の“寵愛”のたまものだった?

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

源頼朝が死刑から一転流刑になった背景――後白河法皇の“寵愛”のたまものだった?の画像1
大泉洋演じる源頼朝(ドラマ公式サイトより)

 『鎌倉殿の13人』第2回の放送、みなさんはどうご覧になったでしょうか。源頼朝(大泉洋さん)をめぐる、政子(小池栄子さん)と八重(新垣結衣さん)の静かな対決シーンは、今週のドラマの一番の見どころだったと思います。政子からすれば、筋を通したかったのかもしれませんが、八重は傷口をえぐられたようで面白くなかったでしょう。

 あれも当時の政子が女性として経験豊富とはいえなかったからこそ、できたことだったのかもしれません。化粧をする政子が使っていた鏡の曇り具合が筆者には気になりました。あの時代の鏡も、ちゃんと手入れをすれば顔がハッキリと映るのです。あの曇った鏡は、恋愛に対して距離を置いていた彼女のそれまでの人生の象徴だったのかもしれませんね。まぁ、その割にドラマの政子は、頼朝から温泉に誘われたのに「まだ早い」と断るなど、なかなかの手練手管の持ち主と想像させるシーンもありましたが……。

 政子の代わりに頼朝と露天風呂で二人っきりになったのはなぜか北条義時(小栗旬さん)で、頼朝から「お前だけには話しておく」と彼の真意を聞かされ、「このことは兄にも話すな」「小四郎。お前はわしの頼りになる弟じゃ」などと言葉巧みに口説かれてしまっていました。しかも、すぐにその気になってしまう義時を見て、「ファー」という声が筆者の口から漏れ出ました。

 当時の貴人は温泉に浸かるときも、湯帷子(ゆかたびら)を着て、肌をみだりに見せたりはしません。また、頭を丸出しにすることは、現代において人前でズボンを脱ぐような恥ずかしいことだとされた時代ですので、入浴時も烏帽子を二人がかぶっているとか、時代考証がやけに丁寧だった理由を邪推してしまいました。あの頼朝の口説き方、裸同士だったら別の意味合いが出てきますよね(笑)。姉も弟も頼朝のトリコにされてしまいます。

 ほかに興味深かったのは、大輪田の泊(おおわだのとまり、現在の神戸港)を通じて輸入した中国などの物品を見て、悦に入る平清盛(松平健さん)が、頼朝をめぐる東国のイザコザを嫡男・宗盛(小泉孝太郎さん)から伝えられ、「(頼朝を)なぜ殺さなかった?」と言いだした場面ですね。宗盛に「父上がお助けになられたのです」と指摘されるも「忘れた」と言い切っていましたが、いわば天皇家の“身内争い”に平家と源氏(など)がそれぞれ対立する形で協力した「平治の乱」の記憶は、清盛の中では遠い昔のものとして消え去っていたのでしょうか。

 『平家物語』では、「平治の乱」において後白河上皇(※この当時はまだ上皇。後に出家し、ドラマ開始時には法皇)の側についた源義朝・頼朝父子は、二条天皇方の平家との争いで敗者となり、死刑という実に厳しい処分が下りました。平安時代、基本的に処刑は廃止されていたので、その衝撃は大きかったことでしょう。義朝は逃亡先で入浴中に追手に討たれて亡くなり、頼朝も身柄を拘束され、殺される寸前までいきました。

 そこに清盛の継母・池禅尼(いけのぜんに)が、夭折した息子の面影を頼朝に見いだし、清盛に頼朝の処刑を中止させたという逸話があります。しかし、現存する信頼できる史料の中に、頼朝が処刑を免れた理由を説明するものはまったくないのです。いわば歴史の闇ですね。

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