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「甲子園がサバンナに」高校野球でスポーツ報知がアフリカ系ハーフのオコエ選手を人種差別! 根底にある偏見とは

 だが、今回のスポーツ報知の記事は「サバンナ」「野獣」といった明らかに事実錯誤の表現が使われていたからこそ大きく問題視されたものの、実は、以前から日本のスポーツメディアでは、ほとんどの人がスルーしてきた差別助長表現の使用が常態化している。

 それは、“黒人だから身体能力が高い”という種の表現だ。

 たとえば、前述のサニブラウン選手についても、「サニブラウンの走りはがむしゃらというか、本能任せというか、フォームは完成されておらず粗削りだ。それでも勝ってしまうのだから、並外れた身体能力があるのだろう」「こうした可能性を感じさせるのは、やはりガーナ人のDNAを受け継ぐハーフだからだろう」などと書かれ、あるいはJリーガーでU-22日本代表の鈴木武蔵選手(父親がジャマイカ人)とオナイウ阿道選手(父親がナイジェリア人)の両フォワードも、「父親譲りの高い身体能力を武器として」と形容されている。

 もちろんこれらの表現は選手をほめているもので、記事を書いているライターに差別の意図はまったくないだろう。しかし、こうした“黒人の血を引くから身体能力バツグン”というような表現は、文脈上で選手を賞賛しているか否かに関わらず、差別をまねく危険な表現だ。

 なぜならば、特定の人種や民族など、動かしがたい属性を、間違った知識をもとに偏見の目で見ることこそが、差別を助長させるからだ。「身体能力が高い」という表現も一見ほめているように見えるが、「黒人系だから」と一括りにしアスリート個人の努力や技術を無視している。しかもこれらの例の場合、差別にさらされるのはアスリート当人だけではない。偏見が形成するステレオタイプは、それ自体がそこからはみ出るものを排除する動きを促す。つまり、個々人の多様性を認めないことと同義なのである。

 そもそも“アフリカ系=身体能力が高い”という言説自体、実は科学的にはなんの根拠もないものだ。肌の色にかかわらず、俊敏な人もいれば遅鈍な人もいることは言わずもがなだが、この種のステレオタイプの形成は、われわれの直感や経験則よりも、社会的な要因が色濃く反映されることで知られている。

 社会と人種・エスニシティなどを研究する武蔵大学人文学部教授・川島浩平氏の著書『人種とスポーツ 黒人は本当に「速く」「強い」のか』(中公新書)によれば、アメリカにおける、大雑把なイメージとして黒人と呼ばれる人々の身体能力優位性を唱えるステレオタイプの起源は1930年代にあるという。事実、20年代までは、オリンピックメダリストは白人ばかりで「白人が一番強くて速い」という意識が流通していた。もっとも、ここには有色人種がおかれた社会的地位の低さが関係している。

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