『耳の穴』ウエラン・井口浩之の「コント師イジリ」と、かつてバナナマン・設楽が語った「売れ方」の話
奇習!「村の共有物になった娘」の短すぎる生涯
2015/10/13 09:15
※イメージ画像:『奇子 1【Kindle版】』(手塚プロダクション)
かくして村の男たちの『共有物』となったカヨさんは、毎日のように彼らの訪問を受け入れ、薄暗い土蔵の中で、ひたすらひと晩中抱かれ続けるようになっていく。しかしそうしたある種の苦境の中にあっても彼女は、自らの境遇や、その行為の意味を正確に把握できていない様子で、少年時代の山中さんに会うと、いつでも格子戸の中から微笑んでいた。やがて彼女が22歳の若さで謎の死を遂げる頃には、彼女の家は近隣でもかなり豊かな暮らしをするようになり、その葬儀は村をあげての派手なものとなったという。
「うん、詳しくはわからないけども、幸せな人生だったんじゃないかな。だって、ああいうことになっていなければ、葬式ひとつあげてもらえなかっただろうから。でもね、俺はいまだに思うんだよ。『本当はカヨさん、自分の状況がある程度、わかっていたんじゃないか?』って。もしそうだったら、なんだか気の毒にも思えてくるよな」
かつてこの国においては、障害を負った子供が生まれてくると、それを隠すようにして座敷牢のような場所でひっそりと育て、知らぬ間に葬り去るという習慣が存在していた地域も少なくない。その声なき声に耳を傾けたとき、決して教科書には載ることのない、この国における別の歴史が、見え隠れしてくるような気がしてくるのだが…如何だろうか。
(文=戸叶和男)
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最終更新:2015/10/13 11:08