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ボクサー・辰吉丈一郎はどう家族と向き合ってきたか? 20年のドキュメンタリーに刻まれた生き様

 阪本監督と辰吉の信頼関係も、本作からは滲み出ている。公私ともに深い交流を持つ監督だからこそ、全編に渡って辰吉の「愛」を捉えることができたのだろう。また、1回のインタビューを33分(16ミリフィルム1本11分×3本分)と決め、監督自らもボクサーのような制限時間の中で撮影していることが、ある種の緊張感ももたらしている。まるで辰吉と監督との試合を観ているかのようだ。

 また、年月を追うごとに変化していく辰吉の「顔」も、本作の見どころである。ときには言葉以上に生き様を語っており、観る者の脳裏に刻み込まれていく。

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 映画の後半では、ジムに所属せず、近所のマダムたちがエクササイズをする横で黙々とサンドバッグを叩き続ける姿が映し出される。辰吉は4度目のチャンピオンになるまで、父の納骨はしないと決めており、いまもまったくその夢を諦めていないのだ。

 しかし、息子がボクサーになることについて聞かれると、「自分の子供がどつき合いする姿を見たい親がどこにいる」と辰吉。永遠のボクサーでありながら、親でもある彼の複雑な感情が垣間見えるシーンで、その人間味に思わず共感してしまう。

 この映画は、ボクシング映画である以上に、ひとりの男が抱く哲学に向き合い、その根底に流れる家族愛を捉えたドキュメンタリー映画だ。 辰吉丈一郎の心に寄り添うと、「愛とは何か」という根源的な問いについて考えざるを得ない。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

■公開情報
『ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-』
2.20(土)よりシネ・リーブル梅田ほか大阪先行公開
2.27(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー
企画・監督:阪本順治
出演:辰吉丈一郎
ナレーション:豊川悦司
製作:日本映画投資合同会社
特別協力:日本映画専門チャンネル
特別協賛:J:COM 
2016年/日本/82分/カラ―/DCP/1:1.85
公式サイト:www.joe-tomorrow.com
(C)日本映画投資合同会社

最終更新:2016/02/27 09:00
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