自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

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