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他社に厳しく自社には超アマ!二枚舌・朝日新聞の偽装委託(後編)

20080131_asahi3.jpgヘラルド朝日労働組合委員長・松元千枝氏

 しかも、朝日新聞には、人材派遣業を営む朝日新聞総合サービスという100%子会社があり、主に朝日新聞で常勤する人材を派遣している。労働者派遣法では、特定の業種を除き、3年で派遣先に直接雇用の申し込み義務が発生するが、朝日新聞総合サービスでは、親会社の都合に合わせるように3年未満の契約期間を前提に人材募集を繰り返しているのだ。

 現在、朝日新聞総合サービスで働く派遣社員は、約730人。このうち約650人が朝日新聞で働いている。07年8月、朝日新聞の社内報は「ハケンのイケン」なる同社派遣労働者の声を特集したが、そこには「年収にして倍以上の開きがあること」や「正規労働者との格差と没交渉」などを嘆く声があふれている。

契約書に「逃げ」の一文を入れる

 さらに取材を進めると、朝日新聞では、常駐する非正規労働者らと、契約書を交わし始めたことすら、比較的最近であることがわかってきた。多くの関係者が「2000年前後からではないか」と証言する。全社的に「契約書を交わすように」と通達が出たという噂だ。それ以前は、どんなに深く業務にかかわっている者でも、報酬の話は口約束だけで済まされていたという。現在でも契約書なしで働いている人はいるはずだという証言もある。

 ただ、非正規労働者が契約書を交わすようになったとしても、彼らの弱い立場が解消されるわけではない。契約書の中には、会社側の優越的地位を誇示する条項が紛れ込んでいるものがある。たとえば、ある業務委託契約書には、「雇用関係不存在の確認」という条項がある。この条項は契約書の普及初期にはなかったとする証言もある。

 この条項に問題はないのかを東京労働局に問い合わせると、「委託契約(請負契約)とは、雇用関係でないことが前提で、そのような条項を入れていること自体が、逆に、労働実態を見たとき、労働者性があるのではないかと不信感を抱かせる条項です。合意した契約書とはいえ、もし労働者性が問題になったときは、最終的には実態を見て労働者性を判断します」と、回答があった。

 前出の新書『偽装請負』は、すべての個々人が希望を持てる社会になることを願うと書いて結ばれる。朝日新聞の正規労働者が本心からそう思うのなら、取材すべき現場も、思いを実践する場も、その足元にあるはずだ。

 ちなみに朝日新聞編集委員で、現在、安倍晋三前首相の事務所秘書らから、テレビ出演時の発言をきっかけに名誉毀損で訴えられている山田厚史氏は、所属する朝日新聞社からは積極的支援を受けられず、独自に弁護士を立て、裁判に臨んでいる。山田氏は、昨年12月に開かれた出版労連など主催のシンポジウムの席上、「ジャーナリズムとメディア産業(の論理)が分離してきているのかな」と心情を漏らした。

 朝日新聞の偽装請負報道とは、非正規労働者に表面的な同情だけを寄せる「偽装ジャーナリズム」にすぎないのか? 紙面と経営のダブルスタンダードがまかり通る朝日新聞の「ジャーナリスト宣言」など、ただひたすらにむなしい。
(「サイゾー」2月号より)

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最終更新:2008/02/11 09:00
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