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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第10回】

選挙と覚せい剤で食傷気味の週に「東洋経済」アマゾン特集が光る

amazontouyou.jpg「週刊 東洋経済」8月29日特大号

部数低迷が叫ばれ、その存在意義が問われども、テレビや大手新聞が”書けない”真実を暴く週刊誌ジャーナリズム──。毎週発売される各週刊誌の中から、伝説の編集長・元木昌彦が選りすぐりのスクープ大賞を認定!!

●第10回(8月12日~8月24日発売号より)

第1位
「知られざる出版革命 アマゾンの正体」(「週刊東洋経済」8月29日号)

第2位
「スクープ 金正男激白『クリントンと会ったのは影武者』(「週刊朝日」9月4日号)

第3位 
「『遺伝子分析』で相性を」(「週刊朝日」9月4日号)

 君は民主党のテレビCMを見たか? 「まず政権交代」とは、呑み屋に行って「まず、とりあえずビール」と同じじゃないか。政策も党首のリーダーシップも判断しなくていいから、とりあえず自民党を切り捨てて、民主党を選べというのだ。

 これでは、05年の小泉純ちゃんの「郵政民営化イエスかノーか」選挙と、たいした違いはない。だのにメディアは、民主党大勝、大勝と無批判とも思えるお祭り騒ぎ。それに踊らされる「民意」は、次の選挙があれば、「とりあえず民主党にしたから、今度は自民党」となるのは、これまでの歴史が証明している。

 その上、民主党政権の本当の恐さを、どこのメディアも書いていない。民主党が300議席以上獲得すれば、鳩山代表を操る小沢一郎氏が当選させた「小沢チルドレン」を含め100人以上の小沢派ができる。参議院を合わせると、かつての田中派のような150人近くの超大派閥ができるのだ。

 政治評論家の森田実さんや田原総一朗さんに、小沢はこれからの日本のことをどう考えているのかと聞くと、両人とも、小沢という人間は、そんなことは何も考えていないはずだという。

「政権奪取すること、支配者であり続けることが小沢の最終目標。基本的には彼はアメリカべったりの政治家」(森田さん)

「鳩山政権の大臣、幹事長、官房長官は小沢の意のままに動く人物しか据えない。財源がなく、これからバラマキを始める民主党政権は、日本の終わりの始まりだ」(田原さん)

 小沢独裁政権の始まりが日本をよくするとは、20年近く小沢をウォッチしてきた私にも、思えない。

 この頃の週刊誌は、どれを読んでも「民主党大勝」「酒井法子覚醒剤事件」に「新型インフルエンザ」や「大地震」の恐怖を煽る記事ばかり。私同様、飽き飽きしている読者に、今週はひと味違ったスクープをお届けする。

 第3位。世は婚活ブームだそうだが、何とか結婚まで漕ぎ着けたとしても、それから、幸せに共白髪まで添い遂げることができるかどうかわからない。そこで、スイスの「ジーン・パートナー」という会社が、遺伝子学者を集めて、遺伝子を使って理想のパートナーを探すサービスを始めたというのだ。

「同社が、数百組のカップルの遺伝子を分析したところ、相性がよく、関係が長く続くカップルには、ある一定の特徴があったという」(朝日)

 どうやるのかというと、まずはサンプルキットを購入する。キットで唾液を採取して送るとIDが付与される。同社のSNSなどでIDを掲載している相手を探す。同社のHPにログインして、相手と自分のIDを入力してマッチングする。分析は「総合評価、魅力レベル、興味のタイプ、魅力の類似性、妊娠の可能性」の5つのカテゴリーに分けて数値化されるという。要は、デートする前に、相手をふるいにかけようというのだ。ただし現在は、日本語サイトも日本人の登録者もいないという。

 だが、大和撫子を求めているアメリカ人をゲットするチャンスかもしれないと、辛酸なめ子さんはコメントしている。端々に、この記事を書いた未婚アラサー女性記者の本音が出ていて面白い。

 第2位も「朝日」。ただしこれがもし本当だったらという「?」付きではあるが。某日本人ビジネスマンが、クリントン元大統領の北朝鮮訪問直前に、金正日総書記の長男・正男氏と、中国瀋陽のレストラン「平壌館」で会った。正男氏は、以前にもメディアのインタビューに答えているから、会ったこと自体はさほどのニュースではないが、彼が金総書記の容体や影武者について語っているところがすごい。

「父は半身不随で十分に歩けない。会話はできるが、重要な問題を決断できるほどは回復していないのが現実です」

 では、韓国・現代(ヒョンデ)グループの会長やクリントン氏に会って、元気な様子を見せられたのはなぜか?

「クリントン氏と会談するのは本物の父ではないかもしれない。日本で言う『影武者』ですよ。(中略)顔をよく見ればわかるが、笑っているとしたら、それは父の影武者で、無表情の写真が発表された時は本物だよ」

 その他にも、米記者解放で1,000万ドルをアメリカは払ったという。実の息子から出た言葉だけに、しつこいようだが、本当だとしたら、世界的スクープだと思うのだが。

 今週の第1位は、「東洋経済」の「知られざる出版革命 アマゾンの正体」。私も使っているネット小売り書店の最大手「アマゾン・コム」について書かれた特集である。

 1994年7月、当時30歳だったベゾス氏が創業したアマゾンは、書籍販売に始まり、CD、家電、玩具などへ取扱商品を拡大していった。05年までは債務超過が続いていたが、このところ財務体質は一変し、電子ブック端末「キンドル」の売上げも順調だという。

 最近では、靴などを販売する「Zappos」を買収し、シアトルの一部地域では、生鮮食品のお届けサービスまで始めた。

 この特集で最もページを割いているのが、電子ブック「キンドル」についてだ。アマゾンは全米最大の書店チェーン「バーンズ&ノーブル」を抜き去った。07年に売り出した「キンドル」も急成長し、今年6月に電子書籍のダウンロード売上げは対前年比136.2%増で、1,400万ドルになったという。これには「ソニー」の「リーダー」も含まれているのだが、両者の差はいかんともしがたいようだ。

 今年2月に「キンドル2」を、6月には「キンドルデラックス」を発売し、新聞も割安で読める。日本では、「リブリエ」(ソニー)「∑ブック」(松下=現パナソニック)が無惨に敗退したのに、なぜアメリカでは成功しているのか。それは「コンテンツの豊富さと安さ」だという。

「キンドルデラックス」は重さ535グラムだが、そこに3,500冊のコンテンツを入れることができる。低消費電力のモノクロ電子ペーパーを採用し、1回の充電で連続40時間の使用に耐えられる。

 出版界に革命を起こしつつある「アマゾン」は、全米の利用者数では「グーグル」「マイクロソフト」「ヤフー」には及ばないが、9位と大健闘している。日本では13位だが、値引きができない「再販制度」が撤廃されれば、日本一の書店になることは間違いないだろう。

 出版や本に興味のある人なら、見逃せない特集だ。こうした他の週刊誌との差別化が、東洋経済やダイヤモンド好調の秘密だろう。週刊誌の編集長諸君! 選挙と酒井法子事件が終わったら何で部数を維持するのか、今から考えているんだろうね。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、年講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

元木昌彦の【週刊誌スクープ大賞】INDEX
【第9回】 〆切が明暗分けた週 のりピー、押尾、大原まで網羅した「週刊朝日」圧勝劇
【第8回】 二岡、小池、宮里……冴える「フラッシュ」の恋愛スキャンダル3連発!
【第7回】 “加害者”にされた者たちが週刊誌に語る「痴漢冤罪」の恐怖と屈辱
【第6回】 『250議席差で民主圧勝!?』衆議院解散総選挙「週刊現代」の大胆予測
【第5回】 師匠が愛弟子をバッサリ!「ヨゴレ芸人から首相へ ビンカンな下半身には要注意!」
【第4回】 週刊現代シルバー世代向けトルコ風呂もいいけど、ポストの民主党政権予測は他誌を圧倒!
【第3回】 新潮・文春、二大硬派週刊誌を押さえ、今週も『フライデー』が熱い!
【第2回】 週刊誌ジャーナリズムの原点  『女性自身』の長寿連載の真価
【第1回】 「フライデー」の”百聞は一見にしかず”強硬グラビア

週刊 東洋経済 2009年 8/29号

世界を牛耳るAmazonが丸裸!

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最終更新:2009/09/15 20:38
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