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のり・たまみのへんな社会学 第7回

一時の流行語で終わる可能性も…… 実はテキトー&曖昧な「メタボ」の実態

metabo.jpgこれがメタボじゃなかったら何がメタボなの?

世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。

 天海祐希さんがCMキャラクターを務めている、清涼飲料水「DAKARA(ダカラ)」の余分三兄弟は「脂肪、糖分、塩分」です。では、メタボリックシンドロームこと通称「メタボ」の「余分四兄弟」とはなんでしょうか。

 答えは、「腹囲(ウエスト)」「血圧」「血糖」「中性脂肪」です。この4つのうち3つ以上が基準値以上の場合に、「メタボ」と診断されます。また中でも「腹囲男性85cm、女性90cm以上」が必須で、かつ残り3つのうち2つ以上が当てはまればアウト。逆に、「血圧」「血糖」「中性脂肪」がダメでもウエストが細かったらセーフです。

 「腹囲が基準値以上」をあえて「デブ」と表現するなら、メタボを強引に要約しちゃうと、「デブで高血圧と高脂肪」「デブで高血圧と高血糖」「デブで高脂肪と高血糖」もしくは全部の「デブで高血圧・高脂肪・高血糖」の人を言います。

 2008年4月から「メタボ検診」が義務づけられ、日本でも一気にその言葉が知れ渡りましたが、実はメタボを巡って現場は大混乱&異論が続出しています。というもの、いろんな団体が「メタボの定義」を争っていて、果ては「メタボなんて、そもそも人々を迷わす概念だからやめちまえ!」と大手医学団体(アメリカ糖尿病学会とヨーロッパ糖尿病学会など)が声明を出す事態にまで発展しています。

 このまま「デブの渾名(あだな)」として、曖昧なまま風化しちゃうんでしょうか? メタボはもともと「シンドロームX」「死の四重奏(肥満・糖尿病・高脂血症・高血圧)」なんておどろおどろしい名前で呼ばれていて、それらを統合する形で生み出された名称です。肥満や高血圧などが複合的に合わさり、いろいろな病気の原因になるのではと提唱されていたのがきっかけです。

 ところが、メタボの定義はハッキリしません。というか、国や団体によっててんでばらばら。国によって食べ物や体格が違うからしょうがない部分もあるのですが混乱を極めています。

 日本の場合は、以下の通りです。

 「腹囲男性85cm、女性90cm以上」が必須で、「血圧130/85mmHg以上」「中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満」「血糖110mg/dL以上」の3つのうち2つ以上が当てはまるもの。05年に8つの学会(日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会、日本内科学会)が集まって決めたものです。みんなで決めたから無難にまとまったのかと思いきや、全くそうでない様子で、いろんなところで異論続出されてます。

 たとえば「腹囲男性85cm、女性90cm以上」。身長は無視してます。筆者夫婦のように160cmちょっと人でも、180cmの人でも全く基準は一緒。すごい強引ですよね。言ってみれば「体重65kg以上はデブ。それ未満はOK」としているようなもの。身長や年齢も考慮すべきですよね。

 そもそも日本人のウエストですが、実は正式な平均データは分かっていません。一律にデータを取りやすい義務教育の小中学生と違って、大人はいちいち「私の体重は●kgで、身長は●cmです」なんて国や公共機関に届けませんものね。旦那にさえ自分の体重を秘密にする妻がいるくらいですから、正確な統計なんて取れません。なので、いろんな団体が任意で発表しています。国の機関である経済産業省が調べて発表した「size-JPN 2004-2006」によると、メタボ検診対象の「40才~74才の中高年男性」の平均は84~86cm台です。平均が84~86cmなのに、85cmでメタボにする意味なんてあるんでしょうか。ちなみにアメリカだと男性のメタボ基準は102cmです。いくら体格が違うといえ、85cmと102cmは違いすぎますよね。そもそもアメリカの人たちは、一部医療関係者以外は「メタボ」なんて言葉を知らないそうですが。

 他にも「痩せていても高血圧・高血糖・高脂肪の人は非常に危ない」「そもそも血糖を含む価値は疑問」「世界でもウエスト基準が男性の方が女性より厳しいのは日本だけ」とか、挙げ句の果てには「メタボなんて適当で曖昧でいい加減なレッテル貼りはやめちまえ」といくつかの学会から共同声明が出される始末。日本でも厚生省が「女性のウエスト基準を90cmから80cmにしちゃいましょうよ」と一気に10cmも変える案を出すなど、もう滅茶苦茶。取りあえずの見切り発車で初めてしまったのでしょうがない部分もあるのですが、高田純次ばりにテキトーな感じでメタボは揺れ動いており、空中分解寸前の状態になっています。

 中身がテキトー&曖昧なまま世間に広まってしまった「メタボ」。単なる数年間の流行語で終わってしまうかもれませんね。
(文=のり・たまみ)

●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。

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最終更新:2010/08/27 18:00
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