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元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第125回

ふとした気の迷いから犯罪者へ転落 元博報堂社員が見た地獄

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第1位
「東大地震研 平田教授の『正体』」(「週刊文春」2月16日号)

第2位
「博報堂元社員が明かす『わが転落の記』」(「週刊現代」2月25日号)

第3位
「福島『求人』職種の危険度と賃金 被災地のハローワーク」(「AERA」2月20日号)

 天皇陛下の玉体、それも心臓にメスが入ることになったことで号外まで出された。

 2月11日から東大病院に入院され心臓の精密検査を受けていたが、薬やカテーテルによるステント治療ではなく、詰まった血管に迂回路をつくるバイパス手術をすることになった。

 「週刊新潮」の「『天皇陛下』心臓にメスが入る日」によれば、「一番左端の左冠動脈左回旋枝はほぼ9割方ふさがっているのです。もう一本も相当程度、狭窄が進んでしまっている。しかも場所が悪いため、すでにステントを入れるのは不可能なのです」(東大病院関係者)

 天皇の体は「冠動脈の狭窄や動脈硬化ばかりか、不整脈も患われ、心臓は悲鳴を上げている状態だというのである」(新潮)

 体に負担がかかる手術になるそうだが、無事終わることを祈りたい。

 今週の3位は、東日本大震災の被災地で起きていることを「求人」というキーワードから探ってみようという「AERA」の記事。

 南相馬市の中心地にあるJR原ノ町駅前のホテルは復興関連の人々でごった返しているが、深刻なのは人手不足である。

 放射能が怖くて20代から30代の女性が来てくれないのだ。時給700円ということもあるかもしれないが、経営的にそれ以上は無理だという。

 しかし、有効求人倍率は復興事業支援策予算約11兆7,000億円もあって、福島県相双地区の場合、求職者数549人に対して求人数は1.7倍の962人ある。

 被災地の求人数では、最も多いのが医療福祉で全体の19.1%、次いで建設が18.2%。

 しかし、11月から求人を始めた福島市内の建設機器レンタル業者によると、時給800円でもさっぱりだという。ほかにわりのいい仕事があるからだ。

 それは放射能の除染関連。防護服を着用しなくても済む一般住宅などの除染関連だと月給20万円ほど、放射線量の高い区域などでの直接的な原発事故関連作業だと25万円以上になる。

 ハローワークで調べてみると、現場を2カ月から3年くらいかけて移動しながら、瓦礫撤去や構造物の解体、手作業による物資の積み込みの仕事は、1日の実働は4時間で月給は27万6,000円から34万5,000円。宿泊食事付きだ。だが「履歴書に必ず血液型と緊急の連絡先を記入」という特記事項が付いている。

 この求人を出しているゼネコン傘下の零細業者は「30人の定員に全国から150人ほど応募があった。ただし、安全のため40歳以上の男性に限定しています」と話している。

 原発から20キロ圏内の警戒区域で空き巣パトロールの仕事もある。3交代で24時間体制。従事しているのは地元消防団の人たちが多いという。日給は7,000円ほど。

 樹木の伐採の求人も多い。だが山の急斜面での伐採は危険を伴うし、伐採時に放射性物質が飛び散る危険も加わる。林野庁が出した現場監督と調査を手がける係長の求人は月給24万6,800円から40万1,800円。

 専門技術を必要とされる職種は当然ながら高賃金。例えば宮大工は、基本給の3倍の月給最高34万5,000円までを支給する建築会社(いわき市)がある。

 ほかには放射線測定員が基本給16万から24万。韓国語や中国語の翻訳などの仕事もある。韓国語の翻訳員が基本給17万4,300円。中国語の通訳が基本給14万0,080円。

 求人票からは復興が進まない分野も見えてくる。福島県内の漁協は操業を自粛しているために求人はゼロ。

 少し違う視点から物事を見る。週刊誌ならではの記事である。

 第2位は「週刊現代」の詐欺で捕まった元博報堂社員の告白である。平凡なサラリーマンがふとした気の迷いから、犯罪者に転落していった。身につまされる。

 本間龍(49歳)は1989年に博報堂に入社し、一貫して営業を担当。

 転落のきっかけは得意先企業からパンフレット制作の仕事を受注したことからだった。

 その費用1,000万円が、向こうの社長の「期末を超えた請求はびた一文払わない」という身勝手な主張により回収できなくなってしまったのだ。

 そのとき上司に話していればよかったのに、異動させられるかもしれないという恐怖心から言い出せなかった。

 転勤先の北陸から戻って子どもが小さかったこともあり、なんとか陰で穏便に処理したいと思っているとき、博報堂の上場が話題になり、株の上場話を元に金を借りようと思い立つ。

 自分が持っている株が上場になれば2,000万円ほどになる。それで返済すればいいと、大学の後輩やサークルの仲間に持ちかけて1,000万円作るのだ。

 それをきっかけに彼の評価は上がり、電通が独占的に扱っていた大手石油会社の仕事を博報堂に持ってくるなどの成果を上げる

 そうなるとほかの部門のスタッフのケアをしなければならず、得意先などにも身銭を切ってご馳走することも多くなる。

 そしてお決まりの女性関係。10歳年下の派遣で来ていた人妻と理無い仲になり、夜仕事が終わってからの食事、ホテル代、タクシー代と嵩んでくる。

 そうして彼はまた、博報堂の未公開株の購入を友人知人に持ちかけ、集めた額は2,000万円を超えてしまうのである。

 それでも出て行く金は増え続け詐取した分を注ぎ込んでも足りず、ついに闇金に手を出してしまう。40社から800万円くらい借り、返済が滞ると自宅にも会社にも「コラァ、本間を出せや!」と催促の電話が入る。とても仕事どころではなくなる。

 そうして2005年2月に博報堂が上場されるが、持ち株は2,000万円どころか800万円にしかならなかった。

 上場から1年近く経って、もはやだまし続けるのは限界と、一人に「未公開株の話、実はウソだったんだ」と泣きながら告白する。

 妻にも打ち明けるが、総額を知った彼女は離婚を切り出す。借りていた二人から合計1,800万円で告訴され、会社を退職し、妻子が出ていった数日後に詐欺容疑で逮捕されるのである。

 懲役2年の実刑判決が出て、未決勾留期間を差し引いた1年4カ月服役し、08年10月に出所する。

 馬鹿な奴だというのは容易い。だがサラリーマンを経験した人間には、彼と自分との違いはほんの僅かなものだと知っている。

 1,000万円の未回収金を上司に相談していれば、始末書か異動で済んだのだろう。それを隠すために儲け話をでっち上げて金を借り、それがうまくいったことで仕事もうまく回り出し、借金が雪だるまのように大きくなっていく。

 私にもクレジットカードで、それに近い経験がある。当座の資金にと借りた10万20万があっという間に100万を超す。

 それを返すために新たにクレジットカードを作る。そうして借金は増え続ける。私が曲がりなりにも躓かなかったのは、気が小さかったからである。

 彼ほどの金額でなくても、金銭的な問題で悩んでいるサラリーマンがいたら、これを読んで、すぐ上司に相談したほうがいい。そうすれば最悪「解雇」になるだけである。

 今週のグランプリは、読売新聞1月23日付の「首都圏直下型 4年以内に70%」の発信元になった東大地震研究所平田直教授から、以下の言を引き出した「週刊文春」の記事である。

「だからね。その数字に意味はないって何度も言っているでしょ。五年~七年というのも僕のヤマ勘ですよ、ヤマ勘!」

 読売の記事を受けて大騒ぎになり、他紙や週刊誌、テレビが追随した。平田教授も連日メディアに出て「解説」したため、首都圏はパニック状態になっているのだ。この数字がヤマ勘だったとは。

 この数字に対する異論が次々に出てきた。京都大学防災研究所の遠田晋次准教授は明らかにこの数字は高すぎるという。

 震災から今年1月21日までに首都圏で起きたM3以上の地震回数を、東大と同じと思われる計算方法でM7地震が起こる確率を計算してみたところ、「5年以内に起こる確立は28%」になったという。

 なぜこんなに開きが出るのか。それは東大がとったデータは震災から9月10日までで、関東で頻繁に地震が起きていたときのものだったからだ。その後から現在まで地震の回数は減ってきている。

 批判は身内からも出ていて、地震研のホームページには「平田直教授の伝え方、あるいは記事の書かれ方のいずれかの問題によって、(略)正確でない表現や記述不足がありました」と平田教授と読売新聞両方が批判されているのである。

 平田教授は毎日新聞のインタビューにこう答えている。

「(今回の報道は)誤解を招きやすい報道でしたけれども、関東地方の油断に警鐘を鳴らす意義はあった」

 東大地震研の学者が確たる根拠もなくて警鐘を鳴らすとは、地震研の名が廃る。

 日本の今年度の地震調査研究関係予算は135億円、来年度の概算要求額は460億円を超えるが、それを牛耳っているのが東大地震研なのだ。

 だが、地震研は地震観測一辺倒で、阪神淡路大震災が起きてからも、「予知は不可能だから、地震現象の基礎研究に重点を移す」としてしまった。

「そもそも『地震ムラ』は予知にはまったく手をつけてこなかったのです」(上田誠也東大名誉教授)

 東日本大震災が起きて「地震学者たちは何をしていたのか」という批判が出てきたため、あわてて「予知モドキ」が出てきたのだそうだ。

 つまり、自分たちのアリバイ証明として派手な花火を打ち上げたということらしい。

 原発事故で原発ムラへの批判が噴出したが、地震ムラも東大地震研が牛耳っていて、「成果をほとんど挙げなくても、潤沢な予算を得ることが出来たのですから、学問として発展するはずがありません」(島村英紀元北大地震火山研究観測センター長)

 こうした連中のひと言で右往左往する自分が情けない。だが、これから10年ぐらいの間に大地震が来ることは間違いないようだ。

 いい加減な地震予知などで一喜一憂せずに、いつ来てもいいように寝室のタンスやテレビなどを固定し、非常時用の食料、水の用意、家族との集合場所などは早急に決めておく必要があるはずだ。あとは運否天賦。どこでそのときを迎えるかは誰にもわからないのだから。
(文=元木昌彦)

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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか


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