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タブー破りの300冊アイドル写真集【1】

「アイドルに会える」といったって…… ギャラ低下で中堅が最も苦境!?グラビアカメラマン【悲】物語

【プレミアサイゾーより】

──アイドルに会えて出版社のカネで海外に行けて、その上ギャラもガッポガッポ……は、もはや昔の話……。AKB48隆盛の一方で、ジリ貧なグラビア業界の影響をモロに受け、苦境に立たされるグラビア系カメラマンの今を追う!!

1204_scoop01.jpg前田敦子の最新写真集『不器用』(小学
館)。

書店の片隅で怪しい輝きを放つ、アイドル写真集。セーラー服やビキニ姿の女の子たちがポーズを決めるそれらの表紙は、男性諸氏にとってはどうしても人目が気になってしまい、立ち読みするのにも勇気がいるシロモノであろう。

 しかし、写真集で注目されるのは、被写体のアイドルばかり。撮影者であるカメラマンの名前が意識されることは、少なくとも一般読者にとってはほとんどあるまい。そこで本稿では、そんな「カメラマン」という存在に着目、そこからうかがい知れる、アイドル写真集の業界事情を眺めてみたい。

 まず最初に、「大御所」「中堅・若手」「亜流&作家系」と、グラビア系カメラマンを大きく3ジャンルに分け、まとめたものが上記の図表だ。とはいえ、そもそもここに列挙されているのは、人気アイドルの写真集を撮影できるような”一線級”の人たち。その下には、雑誌のグラビアなどを単発的に撮っている名もなきカメラマンたちが無数に存在する。

 そんなカメラマン業界だが、折からの出版不況で写真集の出版点数が減り、さらには「サブラ」(小学館)や「月刊」シリーズ(新潮社)といったグラビア雑誌もどんどん休刊しているため、活躍の場が縮小。それに伴い、業界にもさまざまな変化が起きているという。「不況によって出版社が冒険を嫌うようになってきており、アイドル写真集を作る際は、ネームバリューがあって仕事のクオリティも保証されている大御所系のカメラマンに依頼するケースが増えています」と語るのは、ある出版社で写真集の制作を数多く手掛けている編集者のA氏。かつては中堅や若手に下りていたような小規模の仕事ですら、安定性を求めて大御所に流れていくという。

「アイドル誌『B・L・T・』(東京ニュース通信社)巻頭の篠山紀信さんのグラビアなんか、毎回ライティングも一緒で、紀信さん自身もルーティンでやっているのがよくわかる。そもそも紀信さんは、芸能プロダクションや出版社に写真のチェックすらさせないような”御大”ですが、それでも、若手を使ってカッコいい写真を狙うより、『篠山紀信』というブランドが巻頭に存在することのほうが重要なんですよ」(同)

■業界を襲う不況で中堅カメラマンが苦境!?

 前述の通り、その影響をモロに受けているのが、「中堅」に位置するカメラマンたち。逆に、「若手」と呼ばれるカメラマンたちにはチャンスが回ってきているという。これはどういうことなのだろうか? 自らもカメラマン経験のあるグラビア誌の関係者・B氏はこう証言する。

bs_ikewaki.jpg『月刊池脇千鶴』。

「大御所にいい仕事が流れてしまうと、残るのはギャラの安い仕事ということになりますよね。発注サイドにしてみれば、そういう仕事って、中途半端にキャリアのある中堅どころには、逆に頼みづらいんですよ。中堅カメラマンも実績とプライドがあるので、簡単にはギャラを落とせない。そうなると、安くても受けてくれるような若手カメラマンに仕事が流れていきますよね。結果的に中堅の出番が減り、若手にはチャンスが巡ってくるという状況になるわけです。とはいえ、安い仕事なので、若手だって苦しいことには変わりないんですが……」

 また、この苦境に輪をかけているのが、他ジャンルからの参入。かつてであれば、大御所カメラマンに弟子入りし、アシスタントとしての一定期間の修業を経て独立、というのが、一般的なグラビアカメラマンのお決まりのコースだった。例えば、渡辺達生の下には「矢西誠二→楽満直城」という師弟ラインが存在し、写真スタイルも受け継がれていたりする。また、自社スタジオを持っているような大手出版社のスタジオで修業を積むというコースもあり、小塚毅之や熊谷貫は「集英社スタジオ」の出身者だ。しかし最近では、写真に個性を出したいという編集者の思惑もあり、こういった王道のカメラマン以外にも、広告やファッションといった”異世界”で撮っていたカメラマンがこぞってアイドル写真集の業界に参入しているという。

「広告写真家として有名な半沢克夫さんも『HANZO』名義でアイドルを撮っているし、谷村美月の写真集『花美月』(集英社)で高い評価を得た女性フォトグラファーの関めぐみさんも、もともとは「ku:nel(クウネル)」や「GINZA」(共にマガジンハウス)といった一流誌で活躍していた方です。そういった他ジャンルのカメラマンによって、グラビア写真のパイが奪われていることは事実でしょう。とはいえ、そのことによってアイドルグラビアが”オシャレ”になり、業界が多様化した結果、写真のレベルが上がってきていることも確かですね」(B氏)

 こうして仕事を奪われてしまったアイドルグラビア系カメラマンの中には、アイドルDVDのパッケージ写真を大量に撮ったりして食いつないでいる者もいるという。これは、特別なセンスやクリエイティビティを必要としない、いわば”誰が撮ってもいい”写真であるため、カメラマンとしては、「プライドとお金を天秤にかけるような仕事」(同)なのだとか。

■生き残るために特定の芸能プロと結託!?

bs_makiyouko.jpg新潮社の『月刊』シリーズで、グラビア業界
に新風を巻き起こしたのが、藤代冥砂。”作
家系”の代表格だが、相当な女好きとの噂も
……。(写真『月刊真木ようこ』)

 ともあれ、大御所の復権、中堅の苦労、他ジャンルからの参入など、出版不況の影響はかなり深いところまで浸透しているといえそうだ。当然、そのフトコロ事情も気になるところだが……。

「写真集というのは、基本的に肖像権はタレント、著作権がカメラマンに帰属します。なので、カメラマンには印税収入が入るわけですが、最近では払い切りのギャラで支払われるケースも多いようです。今の時代、一冊撮って10~20万円と、かなり安めの仕事も珍しくない。海外ロケに出かけた場合でも、3日間拘束で50万円くらい出ればまあまあといったところだと思います」(前出・A氏)

 制作費は縮小傾向なのに、写真集などの大きな仕事ほどギャラの高い大御所に流れる。その分は、若手のギャラを抑えることで調整されているのが現状だとか。”超大御所”の篠山紀信クラスになるとギャラの額もひと桁ケタ上がり、逆にそこまでなりきれなかったベテランのひとりである宮澤正明など、出版社、芸能プロダクションの許可を取り、グラビア写真を独自にケータイ向けのコンテンツ化して儲けている例もある。ともあれ、大御所とそれ以下の格差は広がるばかりのようだ。

「2000年代以降のデジタルカメラの普及も、苦しさに拍車をかけているかもしれません。フィルム時代は、フィルム代やプリント代を『感材費』と呼び、経費として出版社に請求できました。これをいくらか多めに請求することはこの業界では暗黙の了解だったのですが、デジタルではこれができません。さらに、デジタルだと、フィルムほど写真に差が出づらいので、仕事を取るには技術やセンスよりも”営業力”がモノをいうんです。藤代冥砂さんなんか、新潮社の『月刊』シリーズ全盛の頃は、グラビアアイドルを集めてよく飲み会をしていたと聞きますし、新垣結衣などが所属するレプロと仲の良い小池伸一郎さんや、安田美沙子などが所属するピラミッドとよく仕事をしている鯨井康雄さんのように、特定の芸能プロと密な関係を築いているカメラマンもいます。野村誠一さんなんか、奥さんが芸能プロダクションを経営していて、そこに所属しているタレントとセットで売り込んだりしていますね」(同)

 また、前出のB氏も、こんなジレンマを吐露する。

「アイドル写真集ももちろん撮りたいですが、ギャラがいいのは広告の仕事なんですよ。できるなら、そっち方面の仕事にも広げていきたいのが本音です。でも、『グラビアカメラマン』の色がつきすぎると、広告業界では一段下に見られ、敬遠される傾向がある。グラビア業界でバンバン撮っていくか、あるいは広告の仕事も取るために、それをセーブするか……悩みどころですね」

 カメラマンは、シャッターを押すだけでお金を生み出す打ち出の小槌!? しかもアイドルを間近で撮影できてウハウハ!? そんなイメージを抱かれがちなグラビア業界のカメラマン。しかし、今やその内実は想像以上に厳しいようだ。

(文/清田隆之 BLOCKBUSTER)

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最終更新:2012/03/19 14:15
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