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【東日本大震災から2年】東北の人々が抱える「被災者」と「被災地」の呪縛

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 東日本大震災から2年が経過し、日本中から緊張感が薄れつつある。こうした状況で、被災地や被災者にはこれまでにない圧力がかかっているという。それは一体どんなものなのか、その実態を探るべく、震災直後から取材を重ねてきた仙台出身のジャーナリスト・丸山佑介氏がレポートする。

■明暗が分かれた震災後の生活から見えてくるもの

 東日本大震災から2年が経過した被災地では、震災自体をすでに過去のこととして片付けようとする人もいれば、いまだに先に進めていない人も多くいる。これは無理からぬことで、震災に対しての思いが多種多様で個々人によって異なっている上に、被った損害、保険金や見舞金といった支給されるお金も、勤務先や居住地などさまざまな理由から差異が生じてしまっているからだ。その結果、被災した当事者間でも「明暗」がクッキリと分かれてしまっている。

 現在、仮設住宅に暮らしている人は約32万人。そこにも格差がある。

 大手メーカーの工場が林立する宮城県の沿岸部では、従業員が近所に家を購入するケースが多い。一戸建の住宅は沿岸部に近いエリア、マンションは内陸に位置していた。すでにおわかりであろうが、一戸建ての多くが津波で居住不可能なダメージを受けた一方で、内陸部のマンションには大きな被害はなかった。

 ある大手メーカーでは、住宅が震災で被害を受けた社員たちに一律で見舞金を支給したが、ここで格差が出た。

 支給された金額では、一戸建てはもちろん、マンションを購入する頭金にもならなかったのだ。しかも住宅ローンは返済し続けなければならず、結局行き場がなく賃貸アパートで暮らしているという。逆にマンションの場合には同じ場所で暮らせるため、震災前よりかえって家計が潤うことになった人たちもいるというのだ。

 このような格差現象は被災地では珍しくない。震災前よりも豊かな生活を送る人もいれば、より厳しい生活を強いられる人もいる。そうした混在した状況こそが現実なのである。そして、ここに登場するすべての人が「被災者」と呼ばれている。ここに彼らを縛る圧力があるのだ。

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