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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.256

感染する“暴力”の恐怖『KILLERS/キラーズ』日本製殺人マシンとインドネシア産毒蛇の邂逅!

killers03.jpgペンの力では悪を倒せないことを思い知らされたフリージャーナリストのバユ(オカ・アンタラ)は、直接的な暴力で訴えるようになる。

 影響を受けた日本映画に『リング』を挙げるモー・ブラザーズだが、本作も貞子の呪いのビデオのように、野村がネット上にアップした殺人動画が感染源となって現実世界で暴力が広まっていく。呪いのビデオは超常現象だが、本作で扱われる“スナッフ映像”はかつては都市伝説だったものがネット文化の普及によって実際に見ることができるようになったものだ。情報だけでなく、暴力も手軽にダウンロードできる時代になってしまった。平和主義者を自認していたバユは、社会悪であるダルマを制裁するという大義名分を見つけたことで暴力に手を染めていく。口実さえあれば、誰もが簡単に暴力の虜になってしまうのだ。また、人間の中には根源的な暴力性が潜んでいることも否定できない。他の種を上回る暴力性・攻撃性があったからこそ、人類は地上に生き残ってきたのではないか。その反面、人類の歴史は自分たちの体の中に流れる暴力性をいかに抑制するかを試行錯誤してきた歴史でもあったはずだ。暴力とどう向き合うかは、いわば人類に架せられた永遠の命題なのだ。

 クールな日本製殺人マシンである野村とインドネシア社会に巣食う宿痾を凝縮した毒蛇と化したバユは、やがて運命的な邂逅を果たす。そのとき、一体何が起きるのだろうか? インドネシアと日本との合作である『キラーズ』は、毒と毒を掛け合わせた開発中の新薬のような劇毒ムービーとなっている。暴力に取り憑かれた人間の狂気を疑似体験させてくれるが、観た人にどんな副作用をもたらすか分からない。勇気ある人は新薬実験の治験のように試してみてほしい。
(文=長野辰次)

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『KILLERS/キラーズ』
製作総指揮/ギャレス・エヴァンス 監督/モー・ブラザーズ 脚本/ティモ・ジャヤント、牛山拓二 出演/北村一輝、オカ・アンタラ、高梨臨、ルナ・マヤ、黒川芽以、でんでん、レイ・サヘタピー 
製作・配給/日活 R18+ 2月1日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開 
(c)2013 NIKKATSU/Guerilla Merah Films
<http://www.killers-movie.com>

『V/H/S ネクストレベル』
監督/エドゥアルド・サンチェス、ギャレス・エヴァンス、ティモ・ジャヤント、ジェイソン・アイズナー、アダム・ウィンガード、サイモン・バレット、グレッグ・ヘイル 配給/クロックワークス R18+ 1月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開 
<http://vhs-horrormovie.com>

最終更新:2014/01/30 13:00
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