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塩谷瞬が二人一役で裁判官に挑戦! 社会派ラブストーリーの感動作『ゼウスの法廷』

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 裁判官とは、果たして信頼を託すに値する聖人君子なのか?

 地裁の判事で年間の処理すべき事件の数は、およそ300件あまりだといわれる。より多くの事件を扱う東京地裁では、いくつもの刑事・民事訴訟が日々処理されており、世間から注目される事件を除けば、その処理は文字通りの流れ作業。一日の間に細かくスケジュールが切られ、次から次へと主張を聞き、淡々と判決を下す。あたかも事務作業のように時間を区切って処理されていく手順を目の当たりにすれば、誰だって裁判官に対する不信感が芽生え、思い描いていた信頼は脆くも崩れ去ることだろう。

 3月8日から全国順次公開される高橋玄監督の新作映画『ゼウスの法廷』は、そんな裁判官の生々しい実態を暴露する衝撃の作品だ。高橋玄監督と聞いて先ず思い出されるのは、警察内部で平然と行われている組織犯罪の数々を描いた長編映画『ポチの告白』である。この作品は、2009年に全国劇場公開されるや、反権力マスコミを中心に評価が高まり、大方の予想を超え、ロングランヒットを記録した経緯がある。

 決して誰もが触れたがらないであろう、警察組織の闇に踏み込んだ高橋玄監督を危険人物扱いするマスコミ関係者は数多い。しかし、いかなる権力中枢に狙いを定めた次回作を世に問うのか固唾をのんで待ちこがれた映画ファンは、日本国内のみならず海外にも数多く存在する。そうした国内外からの期待を一身に背負い、『ゼウスの法廷』は製作されたのだ。

 今作のストーリーは、エリート判事である加納清明(演:塩谷瞬、声:椙本滋)の日常を縦軸に描き、一方で、婚約者である中村恵(演:小島聖)の結婚への不安や、学生時代の元恋人との間で揺れ動く恋愛感情を横糸として織りなす、社会派ラブストーリーとでも呼ぶべき趣き。ところが、加納との結婚に踏みきれない恵は、自ら婚約解消を告げた直後、密会を重ねる元恋人を不測の事故で死なせてしまうのだ。恵は重過失致死罪で起訴されてしまい、順風満帆だった加納の人生設計は瞬時に崩壊、失意のどん底で上司の反対を押し切って、恵の裁判を担当させるよう裁判所長に直訴する……という、予断を許さないサスペンス調の展開となり、クライマックスとなる前代未聞の法廷劇へと突入。まるで試写室の座席が地裁の傍聴席になったかのような緊張感に支配される、規格外の完成度となっている。

 『ポチの告白』のストレートな作風に触れ、高橋玄監督の男性的で骨太な脚本と演出術を知った映画ファンは多いことだろう。しかし、そんなイメージを抱いた観客は、今回の作風に若干の戸惑いを感じてしまうのは否めない。というのも、ストーリーで示される通り、今作においては、日本の司法制度の盲点を深く鋭くえぐるというメインテーマが、あくまでも女性目線のラブストーリーとして描かれているからなのだ。

 そして、この作品にはもうひとつの仕掛けがある。それは、元婚約者が重過失致死罪の被告となる法廷を裁く加納清明の配役だ。長らくキャスティングが難航した加納役を見事に射止めたのは、若手俳優の塩谷瞬。その塩谷とともに連名表記された役者名をみて、劇中で加納の少年時代を演じた子役の名前であろうと勝手な解釈をしていた矢先、『ゼウスの法廷』公式HPのキャスト紹介欄を閲覧したところ、椙本滋・加納清明役(声)という表記を確認したのである。

 そこで初めて、椙本滋は劇団俳優の傍ら、ラジオのパーソナリティから番組ナレーションまで幅広く活動する、声のプロであることを知ったのだった。屈折した若きエリート判事という困難な役柄の背景について、二人一役体制で挑んだ塩谷瞬、椙本滋の両氏に早速、ぶつけてみることにした。だが、残念なことに塩谷瞬の所属する俳優事務所からは、質問内容への回答は得られなかった。その一方で、椙本滋からは、書面ではなく取材に応じる旨の連絡があったので、塩谷瞬・椙本滋の連名表記に到る経緯を聞いてみることにした。

「高橋玄監督から直接、本編を観てほしいと言われて、鑑賞後に塩谷瞬さんの吹き替えを依頼されました。70年代に放映された『刑事コロンボ』では、小池朝雄さんがピーター・フォーク演ずるコロンボの声をあてて人気を得たり、クリント・イーストウッドには、今も山田康雄さんの吹き替えイメージが鮮烈に残っているので、ならば日本映画でもそれをやってみようと、所属する俳優事務所とも相談して引き受けさせて頂きました」

以下、椙本への取材を一問一答で記していこう。

──小池朝雄や山田康雄は声優としての人気とともに、顔も売れていたわけですが?

椙本 自分自身は、小島聖さん、野村宏伸さんという素晴らしい俳優さんたちと映画で共演したつもりなんですが、実際の撮影で絡んだわけではないので、ならば顔も名前も出さないほうがいいんじゃないかと考えてました。何といいますか、甘く精悍なマスクの塩谷さん演ずる若き判事に声をあてたのが、真逆のツラの奴ということで……。

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