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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.273

惚れた女の数だけ傑作残すウディ・アレンみたい 今泉力哉監督の新感覚コメディ『サッドティー』

sadtea02.jpg映画監督の柏木(岡部成司)は脚本が書けずにいるが、かわいい女の子とのおしゃべりは欠かせない。今泉監督自身を投影したキャラクターだ。

 本作を撮った今泉監督は、モト冬樹が主演した恋愛コメディ『こっぴどい猫』(12)が高く評価された次世代の注目監督。福島県出身、名古屋市立大学芸術工学部卒業後、大阪のNSC(吉本総合芸術学院)に1年間通ってネタづくりを学んだこともあり、コメディづくりに並々ならぬ情熱を注いでいる。『こっぴどい猫』はモト冬樹以外オーディションで選んだキャストの新鮮さが魅力的だったが、ワークショップ形式で製作にじっくり手間ひまを注いだ『サッドティー』も若手キャストのアンサンブルと展開の読めないオリジナルストーリーで楽しませてくれる。

 今泉監督作品の主人公たちは、毎回のようにみんな浮気性であるか浮気願望を抱えている。『サッドティー』で脚本づくりに頭を悩ませている映画監督・柏木も2人の女性の間を行ったり来たりする。ウディ・アレン監督が“現役”バリバリだった頃の『マンハッタン』(79)あたりを連想させるキャラクターだ。今泉作品はコメディ映画の巨匠ウディ・アレンと作風が似ているというよりは、お気に入りの女優と出会う度に傑作を生み出すウディ・アレンの創作スタイルに通じるものを感じさせる。そのことを伝えたところ、今泉監督は大きくうなずいた。

今泉「創作活動する上で、女の子の存在ってすっごく大きいと思います。モチベーションが違ってきますから。それこそ、僕が映画監督を目指した理由はモテたくて(笑)。まぁ、映画をつくっているうちに“モテたい”より“面白いものを”の気持ちが強くなりますけど。僕が初めて映画賞をもらった『微温』(07)という短編映画があるんですが、僕が勤めていた映画館のバイト仲間に出てもらって撮った作品なんです。僕はその職場にいた女の子に一度告白して振られたんですが、ダメもとで出演交渉したらOKしてくれた。それで撮影が終わってからテンションが上がってもう一度告白したら、また振られてしまった。同じ子に二度も振られた(苦笑)。でも、一度好きになった人って、嫌いにはなれないんですよね。自分が好きだった子が出てるから下手な作品にはできないと気合い入れて編集した覚えがあります(笑)。傑作と呼ばれる作品が誕生する背景には、監督の創作意欲を刺激する存在があるんだと思います。今回の『サッドティー』でいえば、棚子役の青柳文子さんがその存在。青柳さんはモデルとしても活躍しているけど、人間的にも面白くて魅力的な女性。僕は結婚して子どももいるので実際に浮気はしないけれど、僕の短編映画に何本か出てくれた青柳さんと長編映画でがっつり仕事がしてみたいという気持ちが今回は強かったように思いますね(笑)」

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