日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 局を悩ます、菅原文太の追悼特番

ヤクザ映画、政治活動……菅原文太さんの“追悼特番”にテレビ各局が苦悩するワケ

51O8VhJMloL.jpg『仁義なき戦い」(TOEI COMPANY,LTD.)

 高倉健さんに続く大物俳優の訃報だ。菅原文太さんが11月28日、転移性肝がんによる肝不全のために亡くなった。81歳だった。

 高倉さんと共通して言えることは、各テレビ局が出世作であるヤクザ映画の放送ができないでいることだ。高倉さんが亡くなった際、訃報を特集した各番組では『網走番外地』シリーズなど代表的なヤクザ映画のシーンではなく、『幸福の黄色いハンカチ』や『鉄道員(ぽっぽや)』のワンシーンが使われたが、菅原さんの訃報報道においても、代表作『仁義なき戦い』のシーンはことごとく使われず『トラック野郎』が使われていた。

 当然ながらこれは、暴力団排除の世相に対する配慮であるが、情報番組の関係者は「文太さんが演じたヤクザは実在の美能組初代組長、美能幸三をモデルとしたもので、広島抗争を描いている作品も事実に基づいた部分が多々ある。その中で、かなりヤクザをかっこよく描いてしまっていて、局や故人の立場を誤解されそうなものは、どうしても避けてしまう」と話す。

 また、映画ライターの杉浦倫太郎氏はこう語る。

「映画界からの視点で見ると、大きな声では言えないのですが、菅原文太は出世するほどに『過去を切り捨てた』ので、あんまり芳しくないですな。と申しますのも、大部屋時代からお世話になり、40歳で日本映画の金字塔ともいえる『仁義なき戦い』で東映から押し出してもらい、『トラック野郎』シリーズの一番星桃次郎の役をもらいシリーズ化してさんざん稼がせてもらったのに、NHKの『獅子の時代』で主役をもらえたら、ことごとく東映のオファーを蹴ったのです。そこが、東映を出てからもスタッフとの付き合いを大切にしてきた高倉健さんとの違いです」

 そうした業界内の評価があるからか、菅原さんの訃報に対して各テレビ局の特集は残念ながら小粒だ。テレビ東京は12月4日に『トラック野郎 天下御免』(鈴木則文監督)を放送、テレビ朝日は同6日に『わたしのグランパ』を放送する予定だが、フジテレビ、日本テレビ、NHKは2日の夕方時点でいずれも「現在、予定はない」との回答だった。

 また、前出の関係者からは、菅原さんが死の直前まで沖縄で政治活動をしていたことに「背を向ける業界人も多かった」と話す。

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