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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.299

発見! SEX以外にも快感を味わう方法がある!? 歓びと痛みが永久ループするR18映画『メビウス』

moebius_02.jpg父(チョ・ジェヒョン)と息子(ソ・ヨンジュ)は、1本の男根を共有し合う仲に。映画史上かつてない、濃厚な父子関係が描かれる。

 男根を失い、性的な快感を知ることができない絶望の中にいる息子を、どうすれば救い出すことができるか。インターネットを検索し続けた父は、あるサイトに辿り着く。そのサイトには性器以外の部位で快感が得られる方法が記載されていた。肌を石で擦り、皮膚が破けてもさらに擦り続ける。猛烈な痛みに襲われるが、その痛みの直後に形容しがたい快感が湧き上がってくるという。早速、自分の身体で試してみた父は、あまりの痛さと気持ち良さにびっくり。息子がいる収監先まで嬉々として面会に出掛け、この快感メソッドをこっそり息子に伝授する。最初はバカにしていた息子だが、独房で他にやることがない。『あしたのジョー』の矢吹丈ばりに、このメソッドにのめり込む。初めて知る快感の世界が、息子を虜にする。激しい痛みと歓びと同時に、息子は自分がこの世界で生きていることをリアルに実感できた。

 こうして父と息子は新しい快感メソッドを通じて、親子の関係を修復していく。息子が出所し、男2人での平和な生活が始まった。息子を救った快感メソッドだが、やりすぎると全身が生傷だらけになるという難点がある。父はインターネットで男根の移植手術が可能なことを知り、病院に預けていた自分の男根を息子に譲ることを決意する。そんな折、あの母が帰ってきた。2人の男と1人の女は残された1本の男根をめぐって、再び修羅場を演じることになる―。

 壊れた回転木馬のように、永遠に続くループ地獄を生み出したキム・ギドク監督は、作品を重ねるごとに作風がますます研ぎ澄まされたものになっている。主なキャストは3人。父役に『悪い男』(01)などキム・ギドク初期作品に主演していたチョ・ジェヒョン。息子役は撮影時15歳だったソ・ヨンジュ。2015年1月公開の廣木隆一監督作『さよなら歌舞伎町』でも見事な脱ぎっぷりを見せているイ・ウヌが、母と女の2役を巧みに演じ分けた。撮影期間はわずか5日間という早撮り。台詞はいっさいなく、男根を切り取られた際のうめき声や快感にのたうち回る歓びの声がキャストの口から漏れてくるだけ。まるで、まだ地上に言語が溢れ出す前の、神話の世界を見ているかのような気分になってくる。

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