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 >   > 嵐が描いてきたゼロ年代の情景とは? ドラマ作品における軌跡をたどる(後編)

嵐が描いてきたゼロ年代の情景とは? ドラマ作品における軌跡をたどる(後編)

【リアルサウンドより】

 嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日から17日にかけて、全国書店やネット書店で発売される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。

 書籍の発売に先がけ、掲載記事の一部を紹介してきた同シリーズ。前回に続き、嵐がドラマ作品を通じてゼロ年代の情景をどのように描いてきたかを、ドラマ評論家の成馬零一氏が読み解いたコラムの後編をお届けする。(編集部)

参考1:【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】
参考2:【嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う】
参考3:【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(前篇)】
参考4:【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(後篇)】
参考5:嵐が描いてきたゼロ年代の情景とは? ドラマ作品における軌跡をたどる(前編)

二宮和也と格差社会

 王子様性を一身に引き受けた松本潤や、クドカンドラマに出演し00年代の若者像を引き受けた櫻井翔が時代と並走したのだとしたら、本流とは違う立ち位置から生々しい若者像を演じ続けてきたのが二宮和也だろう。

 蜷川幸雄の『青い炎』(03年)やクリント・イーストウッドの『硫黄島からの手紙』(05年)といった映画に出演し、嵐の中では、若手俳優として高い評価を受けた二宮だが、テレビドラマでは『北の国から』シリーズ(81~02年・フジテレビ)で知られる巨匠・倉本聰が脚本を執筆した『優しい時間』(05年・フジテレビ)と『拝啓、父上様』(07年・フジテレビ)に出演したことが大きかったと言える。

 二宮が演じたのは、陶芸職人の見習いや料理人見習いといった寡黙な男たち。倉本聰が繰り返し描いてきた寡黙な青年像とストイックに役に没入する二宮の演技はとても相性がよかった。

 どちらも決して00年代ドラマの代表作というわけではないが、当時の二宮にはおじさんクリエイターが引きつけられる玄人受けする魅力が存在した。

 また、アイドルでありながらも、傍若無人なチンピラ性が見え隠れするのも二宮の魅力だろう。長瀬智也が演じる元不良の新人医師の弟分にあたる、チンピラのノブを演じた『ハンドク!!!』(03年・TBS)では、堤幸彦の乾いた映像とも相まって、二宮の中にある暗い迫力が刻印されていた。

 松本や櫻井が00年代の明るい部分を担ったのに対し、二宮が担ったのはグローバル化が進むことで若者の非正規雇用が進み、経済格差が国内で広がっていく不安定な時代に苛立つ気分だった。

 東野圭吾の原作小説を宮藤官九郎が脚色した『流星の絆』(08年・TBS)では、家族を惨殺した犯人を追う3兄妹の長男を演じ、『フリーター、家を買う。』(10年・フジテレビ)では、会社をなんとなく合わないという理由で3か月で辞めてしまった25歳の青年を演じ、建設会社で働くことで、自分の軸足を少しずつ獲得していく姿を好演した。

 どちらも決して明るい作品ではないが、高い支持を受けたのは、二宮の説得力のある演技によるところが大きいだろう。褒め言葉になるのかわからないが、二宮のような、どこにでもいそうなあんちゃんが、国民的アイドルグループにいるという幅の広さこそが嵐の最大の魅力ではないかと思う。

大野智とキャラクタードラマ

 00年代後半に入り、嵐が国民的アイドルとして盛り上がっていく中、二宮、櫻井、松本に遅れる形で大野智、相葉雅紀もテレビドラマで主演を務めるようになっていく。

 なかでも大きな伸びを見せたのが、リーダーの大野智だ。

 彼の魅力は無愛想な顔からにじみ出るヒール(悪役)性と、漫画のキャラクターを演じられることだろう。どちらの役柄にも共通するのは、役者としての自分をどこか突き放した視線で見つめているかのような強い客観性だ。

 タロットカードに見立てた復讐殺人をおこなっていく弁護士の成瀬領を演じた『魔王』(08年・TBS)は、そんな大野のクールなヒール性が強く出た作品で、どこか達観したように見える大野のカラーの根幹となっている。

 だが、何より大野の存在感を示したのは土9で放送された『怪物くん』(10年・日本テレビ)だろう。

 言わずとしれた藤子不二雄Aの人気漫画のドラマ化だが、放送前は「絶対に失敗する」と批判の方が多かったのだが、怪物くんを演じた大野の好演もあってか、放送されると同時にみるみる評価が高まっていった。

 イケメンドラマと同じくらい、00年代のドラマを象徴するのは、漫画やアニメを原作とするドラマ、あるいは漫画やアニメのエッセンスを取り入れた“キャラクタードラマ”の隆盛だろう。

 ほかの嵐のメンバーもまた、多数の漫画原作のドラマに出演しているが、元をたどれば、これらの流れを確立したのは『金田一少年の事件簿』からはじまった漫画/アニメを実写ドラマに落とし込むさいの試行錯誤の果てに生まれたものだ。

 ジャニーズドラマがおこなってきた試行錯誤が、一方でクドカンドラマやイケメンドラマに向かい、もう一方でキャラクタードラマへと向かっていったのだ。

 漫画のキャラクターを演じるキャラクター芝居は、演技を定型化させた記号性が必要となり、生身の人間を演じるのとは別のセンスが要求される。

 嵐のなかでは櫻井翔がキャラクター芝居を得意としており、クールな執事を演じた『謎解きはディナーの後で』(11年・フジテレビ)では自身を記号化することで、独自のポップな味わいを役柄にもたらしていた。対して、大野のキャラクター芝居は櫻井とは違う暗くて重いよどみのようなものがあり、それが『怪物くん』や『死神くん』(14年・テレビ朝日)のようなダークなテイストのドラマにうまくハマっていたと言える。

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