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「僕は、淳君に映る自分を殺したかった」酒鬼薔薇聖斗が手記に綴った性衝動と本当の動機

 Aが淳君に抱いていた歪んだ感情。そして風呂場でどんな行為を行ったのか、それは記されていない。しかし、少なくともAが淳君に“性的”とも思える感情を持っていたことが伺えるのだ。

 このように本書ではA自身が「性障害」だと認め、その犯行と性的衝動の関係が赤裸々に描かれる。もちろんだからといってAが行った行為は許されるべきものではないし、遺族の怒りも当然だ。しかしこうした猟奇的犯罪に対し、加害者自らが分析し世に問うことは、同類の犯罪研究や抑止という意味で、有益な部分もあるのではないか。

 ただ、この本にはひとつだけ気になる大きな点がある。それは文体のことだ。逮捕、少年院での生活から現在に至までの生活は、淡々と描かれているのに、犯行に至るまでの描写は、文学的ともいえるような過剰な表現を使って、まさに狂気のリアリティを感じさせる迫力のある筆致で描いているのだ。

 これはようするに、Aが犯行について回想するとき、性的サディズムの興奮から逃れられず、それが言葉となって漏れだしてきているのではないか、という気がするのだ。

 犯罪学の専門家の間では、性犯罪者の矯正は困難だという見方もある。しかしもしそうならば、Aにとって今回の手記のようにその思いを文章に吐き出すことは必要な作業なのかもしれない。言葉というかたちで狂気を発露させることがAの再犯を防ぐひとつの方法になれば……。この手記を読みながら、そう考えざるを得なかった。
(田部祥太)

最終更新:2015/06/11 13:00
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