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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

『ど根性ガエル』第6話は、8月15日に戦争をどう描いたか?

dokonjogaeru0817.jpg『ど根性ガエル』日本テレビ

今クールのドラマの中から、注目の作品を1本ピックアップし、毎週追っていく新コーナー。
 
 『ど根性ガエル』の第6話の放送日は、8月15日だった。日本人にとっては特別な夏の日付である。そして『ど根性ガエル』でも、少しだけ特別な事件が起こる。主人公、ひろし(松山ケンイチ)たちが住む町で、先の大戦で落とされた不発弾が発見されるのだった。こうしてこの作品は、戦後70年という節目の夏に放送されるドラマ作品として、戦争を描くことになる。

 これは別段唐突なことではなく、『ど根性ガエル』のプロデューサー・河野英裕と脚本家・岡田恵和は、2013年1月クールのドラマ『泣くな、はらちゃん』で虚構の世界を生きる登場人物に現実の世界の悲惨さや鮮烈さを伝える場面において、かつての戦争や東日本大震災の映像を流したこともある。この手法には視聴者からの賛否両論が集まり、DVD化の際にも修正が加わったそうだが、『ど根性ガエル』にもそういった作り手としての矜持は息づいているし、より洗練された形で現代社会をドラマの中に組み込んだといえるだろう。

 ドラマに限らず、テレビというメディアで作られる作品は、常に今と向き合うことを強いられる。本来は、そういったものだ。これほどまでに記録メディアが発達し、インターネットの普及によってワンクリックで動画が見られる時代である。すでに存在する数多くの素晴らしい映画作品を見るよりも、いま放送されているテレビドラマを見るという行動を選んだ視聴者に対して、テレビは今を語らなくてはならない。少なくとも『ど根性ガエル』の作り手は、そういった信念を持ってこの作品を作っているのだろう。

 ピョン吉(声:満島ひかり)は、不発弾というのはなんなのかを知らない。作品の主要登場人物の中で唯一、リアルタイムで戦争を知っている人物である、ヒロイン・京子ちゃんのおばあちゃん(白石加代子)から爆弾や戦争の話を聞いたピョン吉は、こんな言葉を口にする。

「死んじまうじゃねえか、そんなやつが落ちてきたら。おそろしい野郎だな。おいら許せねえよ」

 ここで重要なのは、ピョン吉が批判しているのは爆弾を落とした軍隊でもなく、あるいは戦争に突き進んだ国家でもなく、あくまでも爆弾そのものに対して「おそろしい野郎」と言っている点だ。ピョン吉は人間ではない。人間とは違う世界で生きている。だから爆弾を落とした、もしくは爆弾を作った人間を責めるのではなく、爆弾そのものを自らが共感すべき対象として批判することができるのだ。

 そしてまたピョン吉は、この町で70年間も眠り続けた不発弾に対して、こんな気持ちを表明する。

「爆発するの、嫌だったんじゃねえのかな、あいつ。だって爆発したら、何もなくなっちまうじゃねえか。あいつは嫌だったんだよ。爆発してさ、人を殺しちまうのがさ。だから根性出して、黙って眠り続けたんだよ」

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