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子を殺すか自分が死ぬか――知られざる精神障害者家族の実態『「子供を殺してください」という親たち』

childmarder『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)

 7月15日にTBSで放送された『水トク!「THE説得」』。精神障害者とその家族を特集したこの番組では、統合失調症や引きこもり、家庭内暴力など、精神的に問題を抱える人々が次々に登場した。

 その多くが、20代から40代にかけての大人だ。彼らは、社会にうまく溶け込めず、家族とも長い間、関係を作れないままだ。

 しかし、そこには我が子を想う親の「なんとかしなければならない」という言葉はなく、ただただ「子供と絶縁したい」と考える親たちが大勢映し出されていた。

 この番組に登場するトキワ精神保健事務所の押川剛。精神障害者を抱えた家庭からの要請で、障害者本人と向かい合って説得し、精神科病院への移送を承諾させる、説得のスペシャリスト。そんな彼が記したのが『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)である。

 本書は、精神障害者を説得し、各専門機関につなげる「精神障害者移送サービス」に携わる著者による体験談と、精神保健福祉への問題提起がテーマとなっている。ゴミ屋敷となった家で初老の母親を奴隷のようにして生活する女性、アルコールに依存し、親に対して暴力を繰り返す男性、親の金を無心し続ける40代の男性など、様々な障害者が登場する。

「精神障害者移送サービス」というのは、自分に病識(自身が病気であるという認識)がない精神障害者を家族や親類に代わって精神科病院まで移送する仕事で、古くは警備会社やタクシー会社がその業務も行っていたという。多くの場合、精神障害者は、有無を言わさず両脇を締め上げられて連れて行かれたり、す巻きのようにして身動きの取れないまま車に放り込まれたりしていたという。

 結果、本人たちは家族を逆恨みして、病識を持てないことで治療が進まなかったり、家族を逆恨みして、退院後に家族を傷つけたりすることもあった。

 そんな状況を見かねて1996年に押川氏は、精神障害者移送サービスをスタートさせ、続けて精神障害者の社会復帰を目指す事業「本気塾」を開く。

 ところが、そこからが苦難の連続だった。患者たちは身勝手に放浪したり、目の届かない場所で第三者を巻き込んだ事件を起こしかねないため、集団で就業でき、かつ送り迎えが可能な職場を探さねばならない。押川氏の元に集まったスタッフと共に、塾生の社会復帰のため、毎日電話をかける日々が続く。やっとの思いで見つけた職場でも、理解を示してくれた職場の先輩を殴る事件を起こしてしまう塾生もいた。

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