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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.348

人生を変えてしまう快心のエッチがここにある!? 黒川芽以主演コメディ『愛を語れば変態ですか』

aiwokatareba03あさこが愛に目覚めた後半は予測不能な展開に。黒川芽以がブチ切れ演技を見せ、ストーリーも既成のセックス観も崩壊させていく。

 1960年代に北欧を発祥とする“フリーセックス運動”が起き、世界各国へと広まっていった。本来のフリーセックスは男女間の性差別を撤廃しようというジェンダーフリーを意味する言葉だったが、日本ではフリーセックス=誰とでもエッチするエロ革命だと誤解されてしまった。まるでギャグのようなエピソードだが、あさこと夫との間にもフリーセックス運動と同じくらい大きな誤解が横たわっている。夫はあさこに貞淑で明るい奥さんという理想の嫁像を押しつけようとするが、あさこは夫のそんな考え方が窮屈で堪らない。夫はあさこのことを誰とでも寝るフリーセックスな女と思っているが、あさこは女であるとか既婚であるとかに囚われずに自由に生きてみたいだけだ。夫との暮らしには不満はない、むしろ幸せを感じている。だから、その幸せをより多くの人に還元したい。夫はそれが理解できず、あさことあさこが感じている幸せを狭い店の中に閉じ込めようとする。これでは利益を独占する悪の資本家と同じではないか。愛は社会に還元することで、もっと大きな愛に育つ(かもしれない)。

 あさこはみんなが愛をぞんざいに扱い、さらにはひとり占めしようとすることを憂う。両親が愛し合うことでみんな生まれてきたはずなのに、愛を交歓することを破廉恥なものと考えている。カレーの付け合わせはラッキョウと福神漬けのどちらにするかも大事だが、気持ちいいエッチをすることもとても大事ではないか。男たちが死闘を繰り広げたその日の夜更け、ずっとおとなしかったボンが「事故に遭ったと思って、僕に抱かれてください」とズボンを脱いであさこの上にのしかかる。性欲と支配欲を満たすことしか考えない男どもに対し、あさこの怒りが頂点に達し、そのときウルトラミラクルキスが炸裂する。この世には運命を一変させるような至高のエッチが存在するのだ。あさこは“愛の戦士”へと覚醒を果たす。新しい朝がきた。変態に目覚める朝がきた!
(文=長野辰次)

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『愛を語れば変態ですか』
監督・脚本/福原充則 出演/黒川芽以、野間口徹、今野浩喜、栩原楽人、川合正悟、永島敏行 
配給/松竹メディア事業部 11月28日(土)より新宿ピカデリーほかロードショー公開
(c)2015松竹
http://aikata.jp

最終更新:2015/11/12 17:28
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