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光市母子殺人事件でも見られた「主文後回し」が示す“重さ”

「主文、後回しです! 主文は後回しにされました!」

 4月22日、広島高裁で公判が行われてた山口県光市母子殺人事件の差し戻し控訴審で、テレビカメラの前に記者が駆け込み、こう叫んだ。

 この後、死刑判決が下ったわけだが、ここで少々疑問に思ったことがある。テレビなどではよく聞く「主文後回し」という言葉。そもそも「主文」とは、「懲役○年の刑に処す」などの判決の結論部分のことで、通常はいちばん最初、判決理由を述べる前にまず述べられる。で、「主文後回し」とは、この主文をいちばん最後に述べることで、この言葉が出ることはすなわち死刑判決が下ることを意味するということは、たいていの人なら知っている。

 しかし、そもそも死刑の場合に、なぜ後回しになるのだろうか? 「結論部分を先に聞いてしまうと、被告人が動揺してその先が聞けなくなるから」などと一般的には思われている。しかし、死刑でなくとも、動揺が生じる重い判決だってあるだろう。ということは、死刑以外でも、主文を後回しにするケースもあるのだろうか? 法律関係者に話を聞いた。

「主文を後回しにするのは、ご想像通り、先に言ってしまうと被告人が動揺してしまうからです。死刑判決にするときは、ほぼ主文後回しになり、逆に死刑判決以外で主文を後回しにするというのは、聞いたことがないですね」

 よって、主文を先に言わなければ、ほぼ100%死刑だとわかる。報道機関では、その時点で「死刑」とは確定していないために「死刑判決が出た」とは言えないものの、一刻も早く報道するために、裁判官が「主文後回し」と述べた時点で法廷を出て、カメラの前でこの点を強調し、死刑判決が下ることを暗にほのめかすのだという。

 では、そもそも通常は、なぜ「主文」を先に言わなきゃいけないのでしょう?

「それは、そう決まっているから。『判決書』自体が、「判決・主文」と書くべき事項が決まっているんです」

 判決書には特定の用紙があるものなのなんですか?

「いいえ。特定の用紙があるわけではないのですが、様式が決定しているんですよ」

 常識外れな質問ついでに、もうひとつだけ。死刑判決が出ない場合にも、裁判官が主文を後回しにしたいと思えば、そうしてもいいものなんでしょうか?

「やりたかったらやってもよいですが、やる人はいませんね。やる意味もありませんし」

 「主文後回し」には、「極刑」という結論を先に言うことで被告人を動揺させないためという意味のほかに、わざわざ通常と違う手順をとることによって、「それがいかに重い刑か」をアピールするという、戒めの意味もあるのだとか。

 というわけで、「主文後回し」には、やはり深くて重い意味があったのでした。
(田幸和歌子)

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最終更新:2008/04/23 20:06
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