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連載

北芝健の「いわんや悪人においてをや」vol.01


さらば、三浦和義...アウトローに愛されたカタギの"悪人"



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週刊文春10月9日号より
「犯罪者である彼あるいは彼女にも我々同様に人生があり、そして罪を犯した理由が必ずある。その理由を解明することはまた、被害者のためにもなるのでは?」こんな考えを胸に、犯罪学者で元警視庁刑事・北芝健が、現代日本の犯罪と、それを取り巻く社会の関係を鋭く考察!


 連載第一回目の今回は、先日ロサンジェルスで獄死された故三浦和義氏と『ロス疑惑』と呼ばれる一連の事件を、考えてみたい。私自身三浦氏と交流があり、その性格を知る者として、彼がどのようなタイプの"悪人"であったのか、思うところがある。

 ご存知のように三浦氏は、裁判では逆転無罪を勝ち取り、法的にはシロになった人だ。しかし、一部メディアは彼に対してまったく敬意を払わず、「妻を銃撃させ保険金を騙し取った男」として取り扱ってきた。そこでは司法でのジャッジは無視され、クロだと言い立てられてきたのである。それを世間の人々もまた嬉嬉として受け入れてきた。

 今年2月に旅行中のサイパンで拘束されたのも、アメリカ司法警察によって、日本の司法が無視された結果であった。保険金殺人というのはアメリカでは古くから当たり前に行われていた犯罪である。マフィアがターゲットに保険金をかけて殺す、といったような「一挙両得のカスタム」というのが、米国犯罪世界では伝統的にあるのだ。

「オレのワイフを殺してくれたら、保険金の何割かやるぜ」

 このようなセリフは、アメリカ人がパブで酔っ払って飛ばす、品のないジョークとして、ごく日常的に聞けるものである。実際、三浦氏も当時同様のことを言っていたのは有名な話だが、それを三浦氏が心の底から、つまり実は"マジのマインド"で言ったからといって、それを根拠に共謀罪に問い、サイパンで身柄を拘束しロスに連れて行くというのは少し無理があると私は感じていた。必ずクロだと思った容疑者を裁けなかったというアメリカ司法警察の怨念が、このような法権の逸脱ととられても仕方がない行為として表出したのである。

 無実を勝ち取りながらも、世間的には悪人とみなされてきた三浦氏であるが、一方で、だからこそ日本の闇社会において彼はアイドルだった。闇社会の人々にとって三浦氏は、当時日本ではほとんど例を見なかった保険金殺人を成功させ(実際に行ったのかは別にして)、新宿警察署署長を弁護側の証人として法廷に呼び、裁判で無実を勝ち取るという偉業をなした男であり、いわば英雄と呼べる存在であった。「都内のヤクザ事務所の駐車場は、いつでも自由に使わせてもらえるよ」そんな話を本人の口から聞いたこともある。

 私自身、三浦氏とは何度か会ったことがあるが、彼はイケメンで屈託のない子供っぽさがあった。だから女性にもモテるし、ある種の華もある。「これはアウトローの雛形だな」という印象を持った。ただ、一方で罪悪感や社会的なモラルが明らかに欠落している人でもあった。レジに並ぶのが面倒だからといってペット雑誌やサプリメントを万引きしたりする、そんなセコい犯罪を当たり前にできてしまうマインドは、私自身はとうてい共感できるものではなかった。しかし、そんな奔放さすら裏社会の人間にはある種の説得力を持つこともまた確かである。彼らにとって、三浦氏は強烈なシンパシーを感じさせる人間だった。三浦氏はカタギの人間でありながら、社会規範感覚が希薄なアウトロー気質を備えた、現代の"悪人"の「トップ引き」だったのだと、私は感じている。
(談・北芝健/構成・テルイコウスケ)


shibakenprf.jpg●きたしば・けん
犯罪学者として教壇に立つ傍ら、「学術社団日本安全保障・危機管理学会」顧問として活動。1990年に得度し、密教僧侶の資格を獲得。資格のある僧侶として、葬式を仕切った経験もある。早稲田大学卒。元警視庁刑事。伝統空手六段。近著に、『続・警察裏物語』(バジリコ)などがある。


続・警察裏物語-27万人の巨大組織、警察のお仕事と素顔の警察官たち

人間だもの、警官だって!


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2008.12.01 月  



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