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ムービーアイ最後の夜@阿佐ヶ谷ロフトA

『バーダー・マインホフ 理想の果てに』公開記念イベントに濃すぎる面々が!

asagayalofta_.jpg左右の翼が阿佐ヶ谷の夜に羽ばたく!?

 いま思えば、なんて濃い時間だったのか……。

 去る8月4日19時半より、毎夜カルトな催しが行われている「阿佐ヶ谷ロフトA」にて、渋谷シネマライズで絶賛上映中の映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』(9月18日まで)にまつわるトークイベントが行われた。

 題して「ムービーアイPresents『バーダー・マインホフ 理想の果てに』公開記念『革命~70年代ドイツ赤軍の闘争史は、今なお矛盾に満ちた現代社会を激しく撃つ!』」。

 やたらぶっそうな単語が並んでいるが……。

 それも当然。なにせこの映画は、1960年代末期から70年代にかけて、ドイツ中を震撼させたバーダー・マインホフ・グループ、のちのドイツ赤軍(RAF)の約10年間に及ぶ反体制活動を描いたもの。つまり、伝説のテロリスト集団の武装闘争を再現した実録超大作なのだ。

 ハードコアな内容ながら、ドイツ本国では国民的ヒットを記録し、今年のアカデミー賞ではドイツ代表作として外国語映画賞にノミネートされた(その際に受賞したのが例の『おくりびと』である)。

 そんな本作をとことん語りつくすため、日本最強のパネラー陣が集結した!

 まずは元日本赤軍兵士、レバノンでの長年の拘留生活を経て、35年ぶりの新作『幽閉者』で衝撃の復活を果たした映画監督、足立正生。ヨルダンの軍事訓練で、バーダー・マインホフ・グループのメンバーと接触した経験も持つという。

 そして思想的立場を超え(?)、最近足立監督とよくつるんでるという、トークの達人としてもおなじみの新右翼団体「一水会」顧問、鈴木邦男。

 さらに東京経済大学教授、大阪大学名誉教授を務め、70年代は長らくドイツに滞在。著作『戦後ドイツ-その知的歴史-』(岩波新書)では、バーダー・マインホフ・グループの活動について批判的な見解を示しているドイツ哲学者、三島憲一。

 まったく別の立ち位置から映画『バーダー・マインホフ』、並びにドイツ赤軍が残した歴史的意味について語っていただくことになったこのお三方。司会進行を務めたのは、このレポートの筆者である不肖・森直人(映画批評&ライター)。

 それぞれ百戦錬磨の先生方をお相手に、自分のような若輩者がいったいどう仕切ればいいのか……とまごついていたのだが、楽屋でご挨拶すると皆さんとても気さくだったので、まずはホッとひと安心。

 さて本番が始まると、トークは非常にスリリングなものになった。

 まず、このイベントの発案者である鈴木氏が、「彼らの武装闘争が、まるでギャングのように過激だったことにショックを受けた。ほとんど『俺たちに明日はない』みたい。これが事実だとしたら驚きを覚える」と発言。

 それを受けて足立氏が、「映画としてはアクション満載で、ハリウッド映画に近いノリで楽しめるだろう。だがエピソードの描き方が恣意的で表面的。単に行動を追っただけで、なんら分析的に作られていない。例えばバーダーはもっと繊細な男だった」と。

 これに対して三島氏が、「史実には極めて忠実。彼らの行動は実際にこれほど凄惨なものだった。しかしこれでは当時のニュース映像を再現してつなぎ合わせただけであり、映画としてはつまらない」。

 いきなり鈴木氏を挟んで、足立氏と三島氏が真逆とも言える意見を投下。これは壇上バトル勃発か? ところが次第に、足立氏と三島氏のポジションは両極からどんどん近づいていく。お二人が共に強調しはじめたのは、透徹した高い知性を持っているはずの人間が、武装闘争を起こす時は瞬間の情動が先走ってしまう暴力のメカニズム。さらにドイツのインテレクチュアルな歴史認識だった。

 一方、鈴木氏は「僕らが学生運動やってた頃も、司馬遼太郎なんかを読んで鼓舞されていたわけですよ」と発言し、両方から「司馬遼太郎のどこがいいんだ」と執拗に攻撃を受ける一幕も……。

 会場からは数々の質問も飛び出し、トークは予定の二時間を大幅に突破。

 最後には足立氏が「自分の頭で考えることが大切」という必殺フレーズを放ち、硬質の言葉がぎゅうぎゅうに詰まった本イベントはビシッと締められることになった。

 ところが、時を同じくして重大な事件が勃発。

 なんとこの夜、イベントをやっている間に、映画の配給元であるムービーアイが倒産したのだ! 会社にとって最後の一夜、最後の仕事となったこの決起集会。

 まさに、優れた映画を世に送り出すという理想の果てに……。不況に覆われたこの現代社会を激しく撃つには、やはり我々、皆が「自分の頭で考えること」から始めなくてはならないのかもしれない。
(文=森直人)

●『バーダー・マインホフ 理想の果てに』
キャスト/マルティナ・ゲデック、モーリッツ・ブライブトロイ、ヨハンナ・ボカレク、ブルーノ・ガンツ
監督/ウリ・エデル
製作・脚本/ベルント・アイヒンガー
原作/シュテファン・アウスト著「The Baader Meinhof Complex」
エンディング挿入歌/「風に吹かれて」ボブ・ディラン
配給/ムービーアイ 協力/ドイツ文化センター、ハピネット
公式サイト<http://www.baader-meinhof.jp/
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最終更新:2009/08/10 16:00
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