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渡辺謙がおもわず男泣き! 幾多の困難を乗り越えた大作『沈まぬ太陽』



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(C)2009「沈まぬ太陽」製作委員会

 先月開催された第22回東京国際映画祭で審査員長を務め、菊地凛子を世界に輩出した『バベル』や『アモーレス・ペロス』などで知られるメキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが、映画祭閉幕後の記者会見で「映画はテレビの延長線じゃない。興行収入しか考えない作品があまりにも多いが、映画は人間の心を伝達するものだ」と熱弁を振るった。安易なテレビドラマやコミックの映画化が市場を席巻する現在の映画界にとって痛烈な一言で、果たして現在の製作者たちにどれほどこの言葉が響くかは分からないが、奇しくもその前日、公開初日を迎えた『沈まぬ太陽』の舞台挨拶上で、主演の渡辺謙が、決して平坦ではなかった同作の製作過程に思いを馳せ、感極まって男泣きしたことが話題になった。

 いまや名実ともに日本を代表する俳優となった渡辺謙は現在、来夏公開の『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督最新作で、レオナルド・ディカプリオと共演する『インセプション』を撮影中ということもあり、主演作『沈まぬ太陽』を初日の劇場でやっと鑑賞することができたという。そしてその後の舞台挨拶で号泣したわけだが、その涙の理由は、同作が幾多の困難を乗り越えて実現し、「ここまでくるのにどれだけ大変だったかを、ちょっとだけご理解いただきたい」という思いがあったからだ。

 原作はドラマ『白い巨塔』『不毛地帯』でもおなじみの国民的作家、山崎豊子の代表作。折しも、いままさに経営再建で揺れている日本航空や、1985年の御巣鷹山ジャンボ機墜落事件をモデルに、企業や組織の腐敗、その中で戦い続けた男を描く人間ドラマの傑作だ。その原作を、3時間22分という史上まれにみる長尺で堂々映画化。あくまでフィクションとして描かれてはいるが、原作は山崎豊子の入念な取材により事実に限りなく近いとも言われ、その原作を映画化した本作もまた然り。それだけに製作は困難を極め、企画も何年も前から存在したが、やっとのことで実現。渡辺はそれら先人たちの苦難を思い、「この作品を映画化しようとした何人もの映画人の熱い気持ちを忘れることのないように演じた。それ以上に、事故で亡くなった方々とご遺族の気持ちを絶対に忘れてはならない」と熱く語ったのだ。

 シビアな題材だけに、製作には昨今当たり前になっているテレビ局が名を連ねていない。映画公開直前に、出演者が出資テレビ局の番組に一日中出まくって、うんざりするほどの番宣をするようなこともなく、原作や、そこに描かれる事故で亡くなった人々に対する真摯な思いが込められていることは画面からも伝わる。真っすぐに向き合っているが故に、映画としては冒頭に大きな山があって以降は、やや平板で延々と主人公・恩地元の苦渋、苦難の日々が続くのが難点と言えなくもないが、それでも渡辺や三浦友和らの重厚な演技にも支えられ、約3時間半(途中休憩10分間あり)、観客の目を引き付けるだけの力がある。

 イニャリトゥ監督が憂えたように、凡百の気楽な娯楽作ばかりが目立つ中で、こうした苦難を伴ってでも妥協せずに問題を描ききろうという気骨にあふれた映画は希少。派手な宣伝がなされていないとはいえ、今年の日本映画界で大きなトピックといってもいい、この一作。ぜひ劇場のスクリーンで見届けたい。鑑賞する時間を作るのは大変かもしれないが......。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)

・『沈まぬ太陽』
<http://eiga.com/movie/54297/>

・『沈まぬ太陽』特集 応援団総決起集会 動画レポート
<http://eiga.com/movie/54297/special>

・『沈まぬ太陽』映画評
<http://eiga.com/movie/54297/critic>


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2009.11.06 金  



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