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アイドル映画専門映画監督・梶野竜太郎の【アイドル映画評】第23幕

覗きを越えた見せたがる演出『Oh!透明人間』

oh01.jpg(c)2010中西やすひろ/少年画報社/インターフィルム

アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。

●今回のお題
覗きを越えた見せたがる演出
『Oh!透明人間』
監督:右田昌万
女性主演:柳本絵美、村上友梨

 この世に、”透明人間を”題材にした映画はいくつあるだろうか? その映画のほとんどが、消えるのは男性で、その男性が”透明”になることで興味を示す=日常を覗かれるのは女性という図式だろう。もちろん、それは女性の私生活を覗きたい、という欲求から来ている。透明人間の利点――つまり”見つからない覗き”である。

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『Oh!透明人間』
荒方透留(標永久)は、親戚の家
に下宿する高校1年生。しかし、
この下宿先:萩谷家は、何と全員
女性のパラダイスだった! ある
日、夕食に嫌いなイクラが出され、
恐る恐る食べてみたところ、なん
と体が消えてしまった!? イクラ
を食べればいつでも透明になるこ
とができる不思議な能力を身に付
けた透留は、密かに思いを寄せる
次女の良江(柳本絵美)のムフフ
な秘密を覗こうと動き出す。さら
には、学校でも透留の欲望は暴走
し、エッチな事件を巻き起こす。
そんなある日、隣家の陽子(村上
友梨)宅へ出掛けたまま良江が行
方不明になってしまう。いてもた
っても居られなくなった透留は、
イクラ瓶を手に取り、良江を探し
に家を飛び出すのだが……果た
して、2人の運命は!?
<http://www.interfilm.co.jp/
tohmeiningen/
>

 今回紹介する作品は、1982~87年にかけて「月刊少年マガジン」(講談社)にて連載されたマンガ『Oh!透明人間』を原作とした映画である。その後も「スーパージャンプ」や「オースーパージャンプ」(いずれも集英社)で『Oh!透明人間21』として続編が発表された。

 カルト的な人気はあるとは言え、講談社の続きが集英社で読めるとは。覗きの美学は大手出版社のマンガ誌が持つ閉鎖性を超えた、ということか……。しかもこの作品、殿方の”透明人間になりたい欲”を満たすため、ひじょーに分かりやすい設定だ。

 女性だらけの家に下宿することになった主人公が、イクラを食べると体が消えてしまうことに気づく。事に乗じて主人公はエッチな妄想を実行に移す……うーむ、分かりやすい……。なぜイクラなのかというのは、この際どーでもいい。この映画はそんな設定にツッコミを入れる間を与えないほど、あることに長けている。想像してください。あなたが今、一番、プライベートが見たい女の子のことを。それは、グラビアアイドルでもいいし、好きな女の子でもいい。それこそ裸体を想像しやすいようにAVのお姉さんでもOK。あなたがイクラを食べて、体が消える。ターゲットの女の子の部屋へ入る。女の子は、体が消えているあなたがそこにいることを知らない。うひひひひ。も~~好き勝手に見放題~♪(30分経過)……うーむ、なかなか動かないぞ。思ったより暇だな。。。(1時間経過)……寝そべって友達と電話しながら、おっ! ようやく起き上がった!! つ、ついにって、おい、菓子食ってる場合じゃねーだろ! なんなんだよ! 女子のプライベートってこんなかよ! なんて具合になる。

oh03.jpg

 もちろん、筆者の趣味は覗きではないが、自分の行動パターンを考えても、これが現実だろう。そんなにいつもいつも、しずかちゃんだって風呂には入りませんよ。そんなに簡単に女の子(男の子もそうだ!)が裸になるわけない。

 なもんで、過去に映画化された透明人間ネタのほとんどが、透明中(どんな時間だ)に必ず、お風呂行ったり、着替えたりする。それを見て、「く~~~~!! 覗いてる気分~~~」……に、なりますか? なりませんよね?? だってそんなシーン、お色気系映画ならありがちのシーンだから。”覗き”がテーマの映画なら、まわりをぼかして覗いてるっぽい演出が出来ますが、透明人間なのでぼかす必要がないのでサービスカットが淡々とあるだけなんです。透明だろうが、何だろうが、映画で見る分にはカメラがその女の子の裸を映すだけ。

 つまり、透明人間が意味を持たない。そんな透明人間ムービーがはびこる中(そんなにはびこってないけど)この作品はダントツに、見事に割り切った演出をしているのです。それはっ! 女の子たちの”見せ方”が抜群に上手い! 上手いというか、どうせ表現できないなら女の子たちは見せたがっちゃえ! という開き直りが凄いんです。

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 だって見えないはずの主人公に向かって、女の子の方から見せにくるんですよ! オイオイ、それはねーだろっていうくらい、お尻をわざと近づけてきたり、おっぱいも寄ってきたり! 「透明人間の追及!? ム~リムリ! どうせ無理なら開き直っちゃえ!」っていう一線を越えたバカバカしい演出がテンコ盛りなんです。

 セリフもものすごくて、主人公が透明人間の状態でスカートめくりをした時のセリフが「もぅ、エッチな風さんねぇ~」

 おい! 昭和だっ! ”エッチな風さん”だって! 女の子がみんな可愛かったころの良き昭和だぁ!! エンコーやら、見せパンやら、ギャルやら、少子化やら、今の子、言いますか? 言いませんよね!!?? これです! この開き直りの局地! 見られる恥ずかしさではなく、見られたい女の露出感! そこに重点を置いた演出! お見事! たまんねぇっす!

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 女の子を露出狂にしただけでなく、ラストシーンなんて、透明人間なのに棒持って戦うから「……いや、その棒のおかげで、どこにいるのかバレてんじゃん」みたいなノリ! もう透明の意味なし! 無いから面白い♪ いいね~こういう開き直り。

 実はこの映画で私が一番好きなシーンは、透明人間になって女子更衣室から逃げるシーンなんです。「こらまてー!」とか言って追いかけるのですが、その追いかけている女の子たちが、裸の子、ランジェリーの子! 体操着の子! スク水の子! うっひー! ブルセラコンプリートじゃないっすか!! この4種が一緒に一挙に学校内を走る!! なんたる衝撃!「レッドクリフ」で1万本の弓矢が飛んでくる時に等しい衝撃の嵐! そこだけでもいい! そこだけでもいいから見てください! 憧れるわぁ~~。
(文=梶野竜太郎)

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●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/

Oh!透明人間21 6

どうにかなれないものか。

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●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX
【第22回】バレない浮気の疑似体験MOVIE『セブンカラーズ』
【第21回】『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビ VS ストリッパー5』思い切りさらけ出す演出と”AV女優”の必然
【第20回】『ラブファイト』──北乃きいを5倍堪能する方法。
【第19回】男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』
【第18回】無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』
【第17回】ヴァーチャル監督視線体験ムービー『テレビばかり見てると馬鹿になる』
【第16回】メイキングDVD希望! アイドル映画の死角”鎖骨”全開の『笑う大天使(ミカエル)』
【第15回】女子高生の体育の時間を、遠くから眺めていたあの頃……『平凡ポンチ』
【第14回】「君はどうしてダメ男ばかり好きになる!?」堕ちてゆく女の美学『ララピポ』
【第13回】あの堀越のりだからできた変身願望映画の傑作!!『特命女子アナ 並野容子』
【第12回】セルフアフレコの美学『カンフーシェフ』加護亜依フォーエヴァー!
【第11回】鈴木美生ちゃんの真の萌声(もえごえ)が男の脳髄直撃!『机のなかみ』
【第10回】バカエロ映画の極×2『まぼろしパンティ VS へんちんポコイダー』
【第9回】「電車男」でカニバリズムで格闘映画の傑作『カクトウ便 VS 謎の恐怖集団人肉宴会』
【第8回】トップアイドルの制服(もちろんミニ)とM男君の快感『ときめきメモリアル』
【第7回】知的に低脳な『秘密潜入捜査官 ワイルドキャッツ in ストリップ ロワイアル』
【第6回】『インストール』──女の子が部屋でひとり。何をしているのか、見たくないか?
【第5回】『お姉チャンバラ THE MOVIE』──ビキニvsセーラー服の恍惚
【第4回】『デコトラ・ギャル奈美』──古きよき時代のロマンポルノ・リターンズ
【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む”多角的フェチズム”
【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内
【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

最終更新:2011/05/10 12:55
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