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アイドル映画専門映画監督・梶野竜太郎の【アイドル映画評】第13幕

あの堀越のりだからできた変身願望映画の傑作!!『特命女子アナ 並野容子』

アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。

●今回のお題
脚も胸も大強調! 負け犬アイドルだからできた変身願望映画の傑作!!
『特命女子アナ 並野容子』
監督:田尻裕司 女性主演:堀越のり、小泉麻耶、高木あずさ、大沢佑香(晶エリー)

 変身願望ってありますか?

 「将来、ミュージシャンになりたいです!」とか、「映画監督になるためにがんばってます!」とかではなく、現状の生活を保ちながらも、裏の顔を持つ……みたいな感じの変身願望。

 最近はうまく時間をやりくりして、”その世界”へ足を踏み入れる方も多い気がしますが、それもこの願望を体現しているのかもしれませんね。

sundome02.jpg『特命女子アナ 並野容子』
『特命係長 只野仁』の柳沢きみおの原作コミックを堀越のり主演で実写化。朝売テレビの女子アナ・並野容子。彼女には、白川会長直属の特命アナとしてトラブルを解決する裏の顔があった。彼女は会長宛てに届いた脅迫メールの真犯人を追い詰めていく。 (Amazonより引用)
(c)2009 柳沢きみお/ぶんか社/「特命女子アナ」製作委員会

 例えば、会社ではおカタい役員様が「俺、ヒーローになりたい!」なんていう気持ちからコスプレイヤーに目覚め、年に数回のコスプレイベントでは、スーパーサイヤ人のコスプレで大暴れ。また、「昼間はさえないOLでいいの。でも、夜は~♪」なんていう欲望から、昼の地味なイメージ180度回転! 六本木のキャバクラクイーンへ! なんてのは、実際にあるでしょう。

 さて、この変身願望を、おもしろおかしく、そしてセクシーに分かりやすく描いたのが、今回紹介する『特命女子アナ 並野容子』なのです。

 主人公は、どこにでもいそうな(どこにでもいないけどね)テレビ局の窓際女子アナ、並野容子(堀越のり)。しかし、窓際アナというのは表の顔! 彼女には白川会長(長門裕之)直属の特命アナ(どんな職業?)として、会社に関わるトラブルを解決するもうひとつの顔があるのであった!(規模狭いけど)

 そんな彼女に与えられた特命は、会長あてに届けられた脅迫メールの捜査。メールにはエースプロデューサー秋山(岸本裕二)のスキャンダラスな写真が添付され、犯人からは秋山が担当するすべての番組の放送中止を要求されたのだが、これを解決せよ、というもの。さまざまな人間模様が描かれるなか、特命女子アナ並野容子は真犯人を追いつめてゆくのです。

 本当にさえない女子アナ、いや、「ここまでさえない女子アナいね~よ」ってくらい、さえない役を演じた堀越のりなんだけど、意外にも映画2本目で、今回、初主演なんです。

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 今でこそ、「負け犬アイドル」とか「激マズ料理女王」など、そっちを武器にしてますが、昔は第2の優香って言われてたんですよね、HIP(ホリプロ・アイドル・パラダイス)時代は。

 でも、この映画を観て分かったんですよ、何で堀越のりを主役に抜擢したか。まぁ、察しはつくと思いますが、マイナスイメージを売りにする今の堀越のりが、この物語でいう”さえない女子アナ”を演じる、いや、そのまま! そのままだからこそ、裏の顔の”特命女子アナ”が、より一層引き立つ!! こんなバッチリなキャスティングないですよ!

 例えば、『ゼブラーマン』だって、変身前のさえない役は、元々カッコイイ哀川翔さんを、さらにさえなくするしかない。この作品のネタ元『特命係長 只野仁』だって、変身前のさえない役は、高橋克典さん。カッコ良すぎでしょ!? でも、この作品は元々が「負け犬アイドル」なので、さえなくする必要がない。そして、変身後は、元々第2の優香なわけで昔からのファンは、「おおっ! これぞのりちゃん!」だし、新しく知った方は「へ~! 堀越のりっていい女だったんだ~!」という色が出せる。これが出来る女優は、堀越のりと、くまきりあさ美以外、いない!

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 さらに映画の中でも、その堀越のりのいい女ぶりが拝めるシーンが多々ある。基本、特命女子アナになった時のコスチュームは、メッチャ綺麗な足&太ももから後光が射し、強調された胸元からは、スペシウム光線を喰らったような衝撃を受ける。いわゆるファッション誌のグラビアのような、最先端の美の追求ではなく、堀越のりだからこそフィットする”ベタなセクシー演出”が、どハマリ。ベタなカメラワークがこれほどまでに、堀越のりを光らせることができるなんて、撮影前に予知できた人がいただろうか。(いただろうけどね)

 意図的か、偶然かは、分かりませんが、”女優・堀越のり”を、活かす演出、役柄、物語、世界観、台本、効果……and moreが、気持ちいいくらいのピッタリフィットキャスティング。おみごと。

 これ、映画館での公開は、2日間4回上映のみだったんですよ。もったいないー。シリーズ化して欲しいですね~~。堀越のりvsくまきりあさ美の、崖っぷち特命女子アナバトルとか見てぇ~~!!
(文=梶野竜太郎)

特命女子アナ 並野容子

じつは演技派なのです。

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●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/

●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX
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最終更新:2010/01/21 16:41
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