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東日本大震災「現場はもう限界だ!」メーリングリストで叫ぶ医師たちのSOS

 死者・行方不明者が1万9,000人を超えた東日本大震災は、医療施設にも壊滅的な打撃を与えている。医薬品や燃料、治療に当たる医師や看護師らも不足する中で、現場からは「もう限界を超えている」との声が次々とあがっている。

 窮状を訴えているのは、被災地の医師や現地に派遣された医療関係者らによるメーリングリスト(以下ML)「地震医療ネット」。過酷な状況下で命を落とす患者も後を絶たない中、このMLを立ち上げたのは、東京大学医科学研究所特任教授・上昌広(かみ・まさひろ)氏。そのメールの中身は、どれも極めて深刻だ。救援物資が被災地へ届き始めたことを伝えるニュース映像をたびたび目にする一方で、その流れからまったく取り残されて「今日、明日が限界」と切実に訴える医療機関が数多くあるのだ。

 たとえば、ネット上で「茨城の情報がテレビでほとんど流れない! どうなってんだ!?」との声も聞かれる茨城県。このMLに参加する、ある病院の医師によれば、茨城県内の病院小児科29施設のうち、今回の地震で1施設が入院受け入れを現在中止し、10施設(34%)が外来機能を一部制限、さらに16施設(55%)が手術を制限せざるを得ない状態にあるという(3月18日現在)。これにより、地域の子どもたちの命が重大な危機にさらされているのである。

 また、実際には深刻な事態に陥っていながら、避難勧告エリアに入っていないなどの理由で「物資が素通りして」いる施設も少なくない。以下は福島県「村松総合病院」医師のメールより。

「こちらは『他の地域ほどの惨状ではない』という印象をもたれており、報道されることもないのですが、非常に困惑しています。県には報告しておりますが、こちらの窮状が伝わらず、今のところ何もしてくれません。(略)物流が悪く、まだ先が見えません(略)食料も限界に近づいています。特にレトルト食品をせめて送ってもらえれば助かります」(3月18日12:20のメール)

 こうした過酷な状況は、患者はもちろん医師たちにも大きなストレスとなって蓄積している。

「じわりじわりと、そろそろ職員の間でも健康障害を訴える人が出てきました(略)震災から一週間がすぎ、職員が倒れかけています。一般市民と同様に、職員も家族をなくして、それでも懸命に働いておりますので、疲労とともに精神状態もかなり不安定になってきています。現状では職員のケアまで手が回る状態ではなく、ボランティアで来てくださるカウンセラーの団体等の(心のケアの)情報を必死で求めている状態です」(3月18日16:38 秋田社会保険病院)

 この他にも「(医師の)不用意な発言によりパニックになったナースがいる」(施設名不明)など、医療従事者らの精神状態は限界に近づいている。

 さらに「石巻赤十字病院」からは次のような信じたくない声も届いている。

「避難所への支援が遅れているため、市内の店や住宅で略奪が頻発しています。日本でですよ!」(3月19日0:20のメールより)

 まさに修羅場と化している被災地の医療現場。こうした現状を専門家はどう見るのか。「株式会社医療タイムス社」の元取締役で、医療問題に詳しいフリー記者の小野貴史氏は次のように言う。

「私の実家の茨城県の家屋も被災しました。不眠不休で懸命に治療にあたっている医療従事者には心から敬意を表します。これだけ想定外の事態となれば、政府の指揮命令系統には期待しないほうが現実的でしょう。柔軟な対応が必要です。有事において手続き原理主義は被害を拡大させるだけですから。情報は現場にあり、最も的確な判断ができるのは現場です。行政をあてにせずに民間同士・専門家同士のネットワークとフットワークをフルに活用する仕組みが有効です。その意味で、『地震医療ネット』のようなネットワークの情報を、関係者らは即座に活用して被災地の救援に動いてほしいと思っています」

 おりしも厚労省は、病院同士で許可なく薬や医療機器のやりとりをしても薬事法違反にならないという特例を、地震発生からようやく一週間が経過したこの18日に定め、各都道府県に通知して被災地への援助を遅まきながら後押しした。これを受けて、医師の中には個人的な人脈を駆使し、地方議員を動かしながら地元のタクシー会社やバス会社を使い、病院から病院への医薬品の輸送を始めている例もあるという。「地震医療ネット」に関わる関係者は、この惨状を多くの人が知り、情報が拡散することで、輸送手段や人員を確保する道筋が開けることを期待している。患者や医療従事者に残されている体力にもはや余裕はない。

「疲労のピークである。休息のない仕事はミスも呼ぶ。人手が欲しい」(石巻市・相馬中央病院)

 今も現場からは血の叫び声が届いている。
(文=浮島さとし)

※編集部より

当記事は、MLに参加する医療関係者からの情報提供と「被災地の医療現場の実情を多くの人に知ってもらいたい」という記事化の依頼にもとづいて作成しましたが、一部医師が投稿したメールの内容に関して、「事実と異なる報告がされている」といった指摘を読者からいただきました。編集部で検討した結果、当該メールの内容は、個人による主観的な見解も含まれており、誤解や風評を生む恐れがあるため、該当箇所のみ削除させていただきました。ご了承ください。

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最終更新:2011/04/11 17:10
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