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第1話ネット配信スタート

「リミックス」劇場版試写会敢行!  見えてきた『アップルシードXIII』の容貌

appleseed_kaiken000.jpg左から藤咲淳一氏、浜名孝行氏。
(撮影=後藤勝)

 士郎正宗の同名原作漫画を全13話でアニメシリーズ化、劇場公開・Blu-ray/DVD販売・ネット配信で同時展開する『アップルシードXIII(サーティーン)』。6月3日から第1話のネット配信が始まっているが、さらに13日からの平日レイトショー公開を控え、6日夜に劇場リミックス版『アップルシードXIII-遺言-』の関係者・マスコミ合同試写会が行われた。劇場リミックス版はシリーズ全13話を再編集した前後編二部作で、『-遺言-』は前編にあたる1時間25分の作品。まだネット配信およびパッケージ販売がされていない2話から7話(1巻から3巻)と重なる部分の内容を先取りすることができる。
 

 上映に先立ち、一般から募ったレビュアーも含む観衆の前に姿を現した浜名孝行(監督)、藤咲淳一(シリーズ構成、脚本)の両氏が、事前に集められた質問に答える形式で舞台挨拶に臨んだ。その談話と試写会で見ることができた『-遺言-』の内容から、この作品のありようが分かってきた。

 やはり注目すべき点のひとつはビジュアルだろう。リアルとトゥーンのはざまで追求した3DCGは珍しくなくなってきているが、その分バランスや完成度を厳しく判定されるはず。

 今回のアニメ化にあたっては原作画の雰囲気を出そうという狙いが明確で、わけてもブリアレオスの描線と塗りにそれは顕著だ。ど派手な戦闘になるとさすがにCGという凄みを感じるが、むしろ日常的な場面でのなじみ具合を評価すべきなのかもしれない。

「CGのスタッフに注文以上にがんばっていただいて、最後はお任せ。いろいろな表情のブリアレオスとデュナンを観てもらえたらいい」(浜名)

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 CGは『ファイアボール』のジーニーズアニメーションスタジオが中核となり、各話制作の13社を統括するというスキームで制作されている。もちろんモデルそのものがバラバラになることはなく、統一感が保たれた上で個性が表出するということだ。『-遺言-』に用いられた1話から7話はそれぞれダイナモピクチャーズ、ウェルツアニメーションスタジオ、プレミアムエージェンシー、モズー、ダンデライオンアニメーションスタジオ、空気、フレームワークス・エンターテインメントのCG制作スタジオ各社が担当している。共通の土台がありながら滲み出る特色に目を凝らす楽しみもありそうだ。

 非核大戦後の荒廃した世界、ふたつの大きな人工島、そこに存在する巨大都市オリュンポスと技術国家ポセイドンといった世界設定は、ほぼ原作と共通のもの。主人公のデュナン・ナッツとブリアレオスがオリュンポスでES.W.A.Tなる組織に属していること、サイボーグ化する以前のブリアレオスの肌が黒いこと、バイオロイドでデュナンの友人であるヒトミと宮本義経が登場することなども原作を踏まえている。

 主な舞台は、ヒトの遺伝子からつくられたハイブリッドのクローン人間「バイオロイド」が多数存在し、生身の人間を助けるオリュンポス。ポセイドンとは握手をしながら机の下では拳銃を突きつけ合うという構図がある。

 そしてオリュンポスに牙を向く「人類解放戦線」の背後に、テロリスト集団「アルゴノーツ」が浮かび上がるあたりから対立構造は鮮明さを増す。根底には人間、バイオロイド、サイボーグ、ロボットが混在する状況での生死観のゆらぎ、思想の衝突がある。アルゴノーツの指導者アル・ケイデスは世間的にはバイオロイド否定思想の推進役と見なされていた。人間とバイオロイドの対立軸が透けて見える。

 緻密すぎる原作にオリジナルの要素を加え、ある程度分かりやすくという配慮が感じられる。それでもアニメとして消化することは簡単ではなかったようだ。

「13話という構成にしたところがいちばん大変だった。初めはどこから手を付けていいか分からない状態。やがて”映画をつくる”という天の声が降りてきて、3本でと言われていたのを2本にしてくださいとお願いしたところ、僕の中でプランが見えてきました。シリーズ全部を観てみると13なんだ、という仕掛けは用意しています。それと、劇場版の前編『-遺言-』と後編『-預言-』を見ると、また違って見える。そんな仕掛けになっているかと思います。それも12とか13という数字に引っ掛かっているんですが」(藤咲)

 キーパーソンとなるキャラクターは『XIII』のオリジナルだ。

「ディアという新キャラがいて……みんなそれぞれ思惑を持ちいろいろな感情で動いている群像劇の要素があり、(ディアは)あまり語らないキャラクターでもあるので、特に前半は語らないんですが、何かを持っているというところを考えながらつくっていた。そこは楽しかったです」(浜名)

 ディアは当初、見た目は聡明な若い美女として、職掌はバイオロイド研究者、役職はポセイドンから派遣された方舟計画の親善大使として、オリュンポスに現れ、デュナンやブリアレオスと親交を深める。

 しかし過去の時間軸で描かれる恋愛の記憶と、現在のサイボーグ化した姿とのギャップからミステリーが生じる。描写されるどこまでが真実なのか。彼女は何者で、何が狙いなのか、どこから来てどこへ行くのか──。アル・ケイデスをめぐる真相の追究とともに謎が深まっていく。

 『-遺言-』ではデュナンに与えられたとある任務の顛末までが描かれるが、そこでディアの正体がかなりの部分を示されながら、謎解きの興味はなお残る構成になっている。

「新しい原作が久しく発表されていないが、パラレルというか地続き。みんなで『アップルシード』を盛り上げていけたらいい」(藤咲)

 1980年代末に一度OVA化がされた後、2000年代に映画化の運びとなり、今般とうとうシリーズ化を果たした『アップルシード』。士郎正宗のビジョンにようやく時代が追い付いてきたのか。7月6日に発売されるBlu-ray/DVD第1巻には第1話から第3話までが収録される。
(取材・文=後藤勝)

アップルシードXIII vol.1

7月6日発売。

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最終更新:2013/09/12 21:15
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