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無知が生んだ日本最大のタブー! 右翼も訝しがる”報道”を忘れた皇室番組の意義を問う

urashima002.jpg『皇室』(扶桑社ムック)

──土曜日の早朝、放送開始から50年以上たつ長寿番組『皇室アルバム』がひっそり続いていることをご存じだろうか? ニュース番組では、当たり障りのない事象のみを伝える報道がなされ、深掘りして報道するはずの皇室番組も、鳴りを潜めている。果たして、既存の皇室番組、そして皇室報道の存続意義とは?

 近頃、皇室周りが何かと騒がしい。今年11月に気管支肺炎を患って長期入院をされた天皇陛下の健康問題に、未婚の女性皇族が結婚した場合に生じる”皇族減少”を防止するべく検討され始めた、女性宮家の創設。さらには10月、皇太子夫妻が長女・愛子さまの通う学習院初等科の運動会に出席され、その時の模様が一部週刊誌で「ほかの父兄が自分の子ども以外を撮影する際は、相手の承諾を得ることを固く義務付けられていた中、皇太子殿下は愛子さま以外の子どもも無断で撮りまくっていた」などと報じられたり、皇室に対するバッシングも過熱している。皇室ウォッチャーならずとも、ニューストピックとして気になっている人は多いだろう。


 現在、テレビでは『皇室アルバム』(TBS)、『皇室ご一家』(フジテレビ)、『皇室日記』(日本テレビ)という3つの”皇室番組”が毎週放送されている。詳しくは次特集を参照いただくとして、いずれも基本的には皇室の一週間の動向を追い、ニュース番組などの皇室報道では取り上げられない公務やプライベートの模様を垣間見ることができる。しかし、放送の時間帯が日曜もしくは土曜の早朝に設定されているため、社会人にはリアルタイムでチェックすることはなかなか難しい。さらに3番組あるといっても、放送内容はどれも似たり寄ったりで、制作側のモチベーションの低さが透けて見えるのも事実。しかし、「女性自身」(光文社)で皇室記事を50年以上担当している記者の松崎敏弥氏いわく、「昔はもっと報道を意識した作りになっていた」という。

「特に皇室番組の中で最も歴史のある『皇室アルバム』はすごかった。制作元の毎日映画社は、皇室報道に定評のある毎日新聞社の系列会社だから、毎日新聞の記者から撮影の際にアドバイスがもらえたんです。『昭和天皇はご病気のせいで顔が麻痺しているから、ご病状を伝えるためにお顔のアップを撮ったほうがいい』とか。でも今は、各局、系列の新聞社とのつながりも薄くなってしまって、自分たちで考えて撮るよりほかなくなった。しかも、例えば同じ祭りごとでも、各局がその切り口を考えるにしても、そもそも知識がない。結果、宮内庁の指示通りに撮って、『これでいいや』という感覚で作ってしまっている。そりゃあ、内容のかぶった番組になりますよ(笑)」(松崎氏)

■宮内庁もわかってない? 曖昧なままの報道姿勢

 では、皇室番組はなぜ、みな宮内庁の言いなりとなってしまったのか。そこには、情報の引き継ぎをおざなりにしてきたテレビ局の制作スタッフの世代交代による、皇室報道の変化があるという。

「例えば最近だと、10月23日に眞子さまの『成年式』、11月3日に悠仁さまの『着袴の儀』と、ご皇族の儀式が立て続けにあったんですが、それを報道する情報番組のスタッフが『この儀式はどんなことをするんですか?』って聞いてくるんですよ。ちょっと調べたらわかるだろうに、それを教えてくれる人が現場にいない。さらに、行事を取り仕切る宮内庁側ですら、最近は若い職員とか、警察庁や外務省など外からの出向組が増えてきて、古くからの皇室のしきたりについてちゃんと理解している人が少なくなっている」(同)

 皇室に関する職務を司る宮内庁側までそんな状況では、何が正しく、何を規制すべきなのか、コントロールすることも難しいのだろう。前述の皇太子夫妻による運動会騒動をはじめ、バッシングやスキャンダルにつながるような報道が増えているのも、そのことが大きく関係しているように思えてならないのだが……。

「それは一理あるでしょうね。ただでさえ今の皇室は、天皇陛下のご健康や愛子さまの付き添い通学など、さまざまな問題を抱えていることもあって、ネガティブな報道を恐れた宮内庁がはっきりとした情報を出さなくなり、それがまた悪循環を生んでしまっている。天皇陛下が入院された時も、当初は『一週間ほどで退院できます』と発表しておいて、予定日になったら『熱が上がってきたので、退院は延期します』とか、そんなことを3回もやってしまった。ましてや病状もただの風邪だの、マイコプラズマ肺炎だのって二転三転して……。宮内庁がそんなでは、メディア側や視聴者に『天皇陛下のご容体、実は相当ヤバいんじゃ』と疑われても仕方ないですよ」(同)

 ”重病説”にさらなる信憑性をもたらしたのは、入院先が東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)であったこと。風邪なら宮内庁病院でも治療できるだろうに、わざわざ東大病院に入院されたことで、疑惑を深めてしまったのだ。それにしても、なぜ東大病院だったのだろう?

「これはあまり知られていない話なんですが、実は東大病院の最上階には、皇室専用の病室があるんです。エレベーターも専用で関係者以外は立ち入れないようになっていて、警備も厳重。ただ、皇室の方々は健康保険に加入できないので、入院すると1泊20万円近くかかるらしい。なんでそんな大枚はたいてまで東大病院に入院するのかというと、宮内庁病院に腕の良い医師がいないからなんですよ。設備は充実していても、医師がいまひとつだから、重病が懸念される場合は利用されない。じゃあ、宮内庁病院の存在意義は……と聞きたくなりますけどね(笑)。

 天皇陛下は2003年に前立腺がんの摘出手術を受けて以降、再発を防ぐためにホルモン治療を続けられているんですが、その副作用で骨密度が骨粗しょう症レベルにまで低下してしまったため、皇居内に新設したプールで運動されるなど、もともと健康面に注意しなければならない状態だったんです。さらに今年は震災が起きたことにより、7週連続で被災地をご訪問されるなど、イレギュラーのご公務がどっと増えて、お疲れも相当たまっていた。だから大事を取って、今回は東大病院で検査しよう……というのが当初の来院目的だったはずで、そういった説明を宮内庁がしないもんだから、変に勘ぐられる結果になってしまったんですよ」(元皇室担当記者)

 確かにそうした背景もきちんと説明されていれば、余計な憶測は呼ばなかったはず。しかし、宮内庁が説明をしないのであれば、これまでの動向を見てきた担当記者が先立って報じる手段もあったわけで、それがなされなかったことにもいささか疑問が残る。

「新聞や雑誌、テレビなどの宮内庁担当記者のうち、15社くらいは宮内庁の中にデスクを置いて、常駐して取材をしているんです。でも、その『宮内記者会』という記者クラブの中にも”お約束ごと”があるため、知っていても書けないことがある。テレビ局の担当記者なら、各ニュース番組の担当者たちが『これどうなってるの?』って聞けば答えるけど、自分たちからは積極的に話さないことも多いんだよ。さらには、記者クラブ内のお約束ごとを破るわけにはいかないからと、プロデューサーに聞かれても答えないこともあるらしい。言ったら誰が流したかバレるからね。そうなったらもう、情報や写真などの資料が一切もらえなくなってしまう」(同)

■右翼におびえるテレビ局 スクープしない担当記者

 報道の職に就いておきながら、情報発信に自主規制をかけまくるというのもおかしな話だが、それが宮内庁担当記者の仕事だというなら仕方あるまい。さらに記者たちをびびらせているものがもうひとつ、それは”右翼団体からの抗議”だという。

 確かに皇室に関するネガティブな報道には、右翼団体によるクレームの不安がつきまとう。とはいえ、実際に抗議活動は行われているのだろうか? 新右翼団体「一水会」の代表を務める木村三浩氏に聞いた。

「街宣車を走らせるまでにはなかなか及びませんが、テレビの報道に対しても、電話や書面で抗議している活動家はいますよ。ただ、最近は事実が先行した上でネガティブな報道をされることが多いので、発信元よりも現場に抗議がいくケースが増えているようです。10年に愛子さまの不登校騒動が取り沙汰された時も、学習院に『愛子さまをいじめたとされる児童は本当に存在するのか』とか『ご皇室の子弟をお預かりする管理体制は万全なのか』といった抗議が殺到しました。事実よりもネガティブな報道が先行した場合は、当然ながら発信元の報道機関に抗議がいきます。そのため、フライング報道は危険と言わざるを得ません」

 宮内庁にも右翼団体にも目をつけられずに皇室報道をまっとうするには、宮内庁から正式に発表された情報だけを発信するのが一番。前出の松崎氏によると、皇室にとって重要な情報については、宮内記者会の中で「宮内庁より正式な発表があるまでは解禁しないように」といった協定が結ばれることもあるという。

「現に雅子さまのご病気についても、協定が結ばれていました。これによってスクープは絶対に取れなくなる半面、他社に出し抜かれることも絶対になくなるし、『正式発表があるまでは解禁できない決まりになっているから』と、大義名分を掲げて安心していられる。ただ、一方で宮内庁側から流してほしい情報が特定の記者にリークされ、それがスクープとして報じられることもあるんですよ。最近だと、11月に読売新聞が報じた『宮内庁長官が野田首相に女性宮家創設の検討を”火急の案件”として伝えた』というニュースがそう。読売の記者はスクープが取れたと喜んでいたけど、周りはみんな『どうせリークでしょ』と(笑)」(松崎氏)

 もし本当にリークまでしたのであれば、現在の宮内庁にとって一番の問題は、やはり女性宮家の創設なのかもしれない。ただ、確かにそれも気になるものの、どちらかといえば、天皇陛下のご容体のほうが気がかりになっている人も多いはず。一部情報によると、11月中に読売テレビが、天皇陛下が万が一崩御された時に備え、緊急体制に入った日もあったと聞くが……。

「その話は僕も聞きましたよ。『陛下のご容体が危ないらしい』と聞いた局側のスタッフが、宮内庁担当記者に電話で確認しようとしたら、『今それどころじゃない』なんて言われたもんだから、すっかり勘違いしてしまったらしくて。まぁ、78歳といったら、一般的にいえば”何があってもおかしくない年齢” ですからね……。

 実はXデーに向けてのシミュレーションは、すでに各テレビ局で始まっていて、陛下がお生まれになってから現在に至るまでの映像をまとめた番組などが制作されているんですよ。昭和天皇の時も公にしていなかっただけで、局内では事前に特別番組の制作が行われていた。僕も携わっていたんですが、いつでも放送できるように、週1ペースで頻繁に準備して、いろんなパターンをそろえて……。さすがにまだそこまで差し迫ってはいないですが、各局で内々に準備は進められているはず」(同)

 崩御に向けた準備なんて、不謹慎極まりないと思われるかもしれないが、これは常にリアルタイムで世相を報じなければならないテレビメディアの宿命ともいえる。

 最後に松崎氏が「09年、NHKが両陛下のご成婚50周年の記念番組で宮中の朝の散歩のご様子を放送し、お2人のプライベートな会話も流れました。これからはもっと若い世代が皇室に関心を持てるよう、こうした踏み込んだ取材をしてほしい」と述べたように、さまざまな問題が提示されている今こそ、皇室番組の真価を見せてもらいたいものだ。
(文=アボンヌ安田/「プレミアサイゾー」より)

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最終更新:2013/09/09 19:34
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