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ビジネス志向へと大きく変化? 【東京国際アニメフェア2012】

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 昨年は東日本大震災の余波で開幕直前に中止となった東京国際アニメフェア(以下、TAF)が22日より4日間の日程で開催された。22日と23日は商談を目的としたビジネスデー、24日と25日の2日間は、一般客向けのパブリックデーとしてスケジュールされた。

 東京都が主催するイベントであるTAFは、昨年、東京都の“表現弾圧条例”こと「東京都青少年健全育成条例改正案」に反発した出版社10社が加盟する「コミック10社会」がボイコットを宣言。TAFの実行委員会事務局を務める日本動画協会が「実質的に実行不能な事態」と声明を出す中、角川書店らがTAFと同じ日程で幕張メッセにて「アニメコンテンツエキスポ」(以下、ACE)の開催を表明し“分裂”による混乱が取り沙汰されたが、震災が原因で両イベントとも開催を中止する結果となった。

 以来、2012年はどのような形で開催されるのか注目を集めていたが、昨年10月にACE側はTAFの開催日から一週間後の開催を発表。この発表の直後に筆者が取材したフジテレビのアニメ深夜枠「ノイタミナ」の山本幸治プロデューサーは以下のように語った。

「今年の同日開催は正直“やめてよ”と思いましたよ。現場ではどちらにつけばよいのか混乱しましたし、お客さんが右往左往する事態になっていたと思います。今回は日程がずれたことで、最悪の事態は回避されたのではないかと思っています」

taf2012002.jpgビジネス目的の来場者で、ところどころ混雑しているところも。

 そもそもTAF側もACE側も昨年の騒動を“分裂”とは口が裂けてもいわない。むしろ、ファミリー向けのコンテンツが多いTAFとオタク向けコンテンツの多いACEとに“棲み分け”をするいい機会となったと捉える向きもある。

「2010年のTAFは13万人の来場者がありました。ですので、今回は両方のイベントで16万人来場すれば成功だと考えています」

 とは、昨年取材した際のTAF事務局のチーフプロデューサー・鈴木仁氏の言葉だ。

 一年の空白期間を経て再開されたTAFの会場で目立ったのは、海外からの出展者であった。とくに広い面積を占めていたのは、中国のアニメ企業による「チャイナアニメーションズ」と名付けられたスペースだ。ここには、40を超える中国のアニメ産業に関わる企業や大学などが出展し、中国におけるアニメ産業の巨大さを示していた。ただ、中国が巨大なアニメの生産国であり市場でもあることが広く知られるようになった現在では、目新しさを感じるものはない。

taf2012004.jpgぜひ本編を見てみたくなるチュニジアのアニメーション。

 海外の出展者の中でも目を引いたのは「オーバーシーズパビリオン」と名付けられた一角である。ここには、フランス・スペイン・ハンガリー・ブルガリア・チュニジアなどのアニメ企業や大使館などが出展している。そこで展示されているのは各、々の国で制作されているアニメーションやキャラクターである。各国とも、自国で生産しているアニメーションやキャラクターの日本への売り込みを図るという、これまであまり見られなかった形が見られるようになってきている。中でも異色だったのは、チュニジアのブース。ここでは、チュニジアで今もっとも人気のあるアニメとして、「キャプテン・ゴブザ」というキャラクターが活躍する作品が紹介されていた。これは、ヒーローや民衆がバゲット(長いフランスパン)を武器に武装警官と戦う作品だというが、そんなキャラクターを大使館自らが売り込むことに「本当に革命が起こったのだな」と実感させられる。これら海外ブースは日本語が話せるスタッフがおらず、共通言語が英語だったことも、TAFがビジネス寄りの路線を志向していることを感じさせた。

■ビジネスイベントへ舵を切ったTAF

taf2012003.jpg「石ノ森萬画館」の復興は全国のファンからも注目を集める。

 海外からの出展とともに目立ったのは、東北の被災地関係の出展だ。津波で被災した宮城県石巻市の「石ノ森萬画館」の復興活動に関する展示のほか、「宮城・仙台アニメーショングランプリ」のブースでも復興と絡めた企画が紹介されていた。被災地に限らず、地方で開催されている各種イベント関連の展示も目立っており、漫画・アニメを使った地域振興が、全国の津々浦々で行われていることを如実に示していた。

 このように、今回のTAFで目立ったのは、新たなビジネスパートナーを求めたり、ライセンスの売り込みを図ったりするBtoBの出展が多いことだ。対して、既に発表されているACEの出展概要を見ると、一般の来場者に主眼を置いた出展者が多い。このことからも、(意図しているか否かは別として)TAFはACEとの棲み分けを模索していると見ることができる。単に目当ての作品やキャラクター関連のブースに行列し、グッズを買い求めるのではなく、アニメ産業の全体を俯瞰できるイベントとなったといってよいだろう。一年の空白を経て、多くのバイヤーが集うアニメの市場としてTAFは、大きく舵を切ったと見てよいだろう。今後、ACEとの再統合が行われるか否かはわからないが、一般客が集うイベントとしての価値以上に、市場としての価値が高まっていくと、予測することができる。

 ビジネスデーに開催されたイベントに関しては、別に報告していきたい。
(取材・文=昼間 たかし)

もっとわかるアニメビジネス

なるほどね。

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最終更新:2013/09/06 17:01
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