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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第108回

アンジャッシュ “勘違いコント”のジャンルを築いた「コント職人のネクストステージ」

unjash.jpg『アンジャッシュ ベストネタライブ』
(アニプレックス)

 4月10日、アンジャッシュの渡部建が『ホメ渡部の「ホメる技術」7』(プレジデント社)を出版した。お笑い界随一のホメ上手として知られる彼が、仕事や恋愛に役立つ「ホメる技術」の極意をつづっている。

 東京・東高円寺に事務所を構えるプロダクション人力舎は、実力派の若手コント芸人を多数輩出していることで知られている。『キングオブコント』チャンピオンに輝いた東京03、キングオブコメディ、そして同大会ファイナリストのラバーガール、鬼ヶ島。個性豊かで確かな技術を備えたコント芸人が何組も在籍しているのだ。そんな「人力舎=コント」というパブリックイメージの原点になっているのは、アンジャッシュの存在だろう。彼らは人力舎のお笑い養成所「スクールJCA」の1期生・2期生であり、緻密に計算されたネタ作りには定評があった。コントを武器にして『爆笑オンエアバトル』(NHK)、『エンタの神様』(日本テレビ系)などのネタ番組に出演して人気を獲得。2000年代のお笑いブームの中心で活躍を続けて、「コント芸人」の代名詞ともいえる存在となった。

 彼らの得意ネタは、通称「勘違いコント」と呼ばれる。2人の人間が、それぞれの置かれた状況を勘違いしたままで噛み合わない会話を進めていく、というもの。例えば、バイトの面接に来た男性役の児嶋一哉が、店員役の渡部と対面する。ちょっとした行き違いから渡部は児嶋のことを万引き犯と思い込んでいて、厳しい態度を取る。渡部が「君は見るからに(万引きを)やりそうだな」と言うと、児嶋はほめられていると思い込んで「ありがとうございます!」と返す。すると渡部が「ほめてないよ!」と怒鳴って、噛み合わないやりとりが延々と続いていく。この種のスタイリッシュな「勘違いコント」が彼らの十八番だった。

 「スタイリッシュなコント職人」というコンビでのイメージを生かして、渡部はソロ活動でさらなるステップアップを成し遂げた。恋愛心理学に精通した彼は、お笑い界には珍しいスマートなモテキャラとして知られるようになった。一方の児嶋は、最近になって芸人たちのイジられ役としてブレイクしてきている。彼は、バラエティで何もできずに挙動不審な様子を見せて、馴染みの芸人たちにさんざんイジられる。いわば、一種のスベリキャラとして注目される存在になったのだ。

 児嶋のスベリキャラは、ほかの芸人とは種類が違う。例えば、ますだおかだの岡田圭右のように、自ら積極的にギャグを放ってスベりに行くタイプでもないし、狩野英孝のようにほかの人がイジらずにはいられない愛すべき天然ボケというタイプでもない。児嶋がイジられるときには、必ずといっていいほど場の空気が凍り付く。ザキヤマ(山崎弘也)やおぎやはぎが児嶋をイジり始めると、周りに不穏が空気が漂い始める。そのときの観客や視聴者は「こんなきちんとした人をイジるのはかわいそう」と心配しているわけでもなければ、「ここまでダメな人をイジって笑いになるのか?」と不安がっているわけでもない。ただ、児嶋本人がイジられることに対して異常なほど構えてしまうため、その素振りが自然に見る側の気持ちを圧迫するのである。

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