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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第108回

アンジャッシュ “勘違いコント”のジャンルを築いた「コント職人のネクストステージ」

 その後、児嶋はイジりを嫌がり、イジられるのを必死で拒否しようとした挙げ句、最後に「うぉい!」などと自暴自棄にキレてみせる。それでもやっぱりウケないものはウケない。相変わらず場は凍り付いたまま。ただ、そこまでしてウケないこと自体が、笑いに飢えた芸人やお笑いファンからすると面白くて仕方がないので、彼らはそこで初めてニヤリと笑う。児嶋はイジリとイジメの境界線上で危ういバランスを取りながら、新たな形のスベリキャラを演じているのだ。

 世間では「渡部が売れたおかげで、児嶋も脚光を浴びるようになった」と思われがちだが、実はそうとも言い切れない。「きっちりしたコントをやるアンジャッシュ」という世間のイメージを覆したのは、むしろスベリキャラの児嶋のほうだ。児嶋があえて隙を見せて、イジられる方向に一気にアクセルを踏んだことが、アンジャッシュ再ブレイクのきっかけとなった。

 実際のところ、恋愛、グルメなどに精通し、端正な顔立ちでなんでも器用にこなす渡部は、見方によっては鼻持ちならない人物でもある。ただ、彼が世間にそう思われていないのは、それを紛らわすために児嶋が絶好の位置につけているからだ。児嶋は渡部の計算高さといやらしさを紛らわす、煙幕の役割を果たしている。渡部が児嶋を引き上げたというのも事実だが、児嶋が渡部を守っているというのもまた一面の真理なのだ。

 コントの職人から、互いの個性を高め合う存在へ。「コント王国」としての人力舎の礎を築いたアンジャッシュの牙城は、まだまだ揺らぎそうにない。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

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