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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ! 【第1夜】

引くほどオタクな海洋堂が平然とドキュメンタリーになる日本

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引くほどオタクな海洋堂が平然とドキュメンタリーになる日本 – Business Journal(10月7日)

post_809.jpg日本のものづくりに求められるのは“オタク力”と痛感。
(「カンブリア宮殿HP」より)

――『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:9月27日放送『カンブリア宮殿』(テーマ:海洋堂)

 村上龍が「はぁー」とため息をついたかと思えば、「すげーすげー」と子供のような笑顔でモニターを指差す。『カブリア宮殿』の歴史でもなかなかない映像だ。だが、そんな気持ちもよく分かる。僕もつい先日、今回のテーマになった「海洋堂」のフィギュアをガチャガチャで購入したばかりだったから。

 東京現代美術館で行われた『特撮博物館』(〜10月8日まで)は、昭和のミニチュア技術を「これでもか!」と魅せる最高の催しだった。会場には家族連れがいっぱいで、子供に負けじと大人も楽しそうだった。僕も十分に満喫し、夏の思い出になった。中でも新作映画『巨神兵東京に現る』は素晴らしく、CGでは実現不可能なアナログの贅沢さをいっぱい味わえた。

 で、売店に置かれたガチャガチャで売られていたのが海洋堂のフィギュア。そこで見た映像の力強さが造形として再現され、1回500円とちと高めだが、博物館を満喫した勢いも手伝って「えい」とガチャガチャしてしまった。家に帰っても興奮は収まらず、展示品のあれこれを思い出しながら作る巨神兵はなかなか楽しいものだった。そんな経験をしたばかりだったから、番組中の龍氏の興奮にも共感できたのだ。

 番組でも触れていたが、海洋堂のフィギュアは格が違う。「これも重要なんですか?」とディレクターが呆れようとも、職人は金魚の尾びれの裏まで描き込む。美少女フィギュアを作り続けて30年 の天才に対してもキャメラが向けられた。彼はプラモ好きの少年が大人に混じって造形を始めたきっかけをどこか誇らしげに語るが、ほとんど外に出ることもなく造形を続けている。女性と接することもなく、グラビアを参考にお尻のラインを、バストを、研究しフィギュアを作って来た。今回、番組を見て「時代が変わったなー」と思わされたのは、かつてこういった「オタク」が取材がされる時は「やってることは凄いけど、気持ち悪いよね」というどこか小馬鹿にするような視点が映像に見え隠れしていた。しかし今は社会や状況が変わった。

 そして今回、衝撃的だったのは、第二次世界大戦時のドイツ軍の大砲が出て来たことだ。海洋堂は模型では飽き足らず実物を購入してしまったらしい。軍服を着た社員一同の写真も紹介されていたが、これ、国によっては完全にアウトではないのか。

 番組では「強さの秘密はオタクパワー」なんてテロップも乗っていたが、そういうことではないと思う。でもこういう人っているよな、と思う。僕の友人にも飛行機や戦車が好きで、形から入って思想も極端に……という人が。海洋堂が右でも左でも、それともそんなんを超えてしまったのかは、短い尺では紹介されなかったが(あえてしなかったのか)、映像のインパクトは強烈で僕はちょっとヒいた。

 宮脇社長は自分たちの仕事に対して客観性を持っているように思った。水着の美少女フィギュアをテーブルに置いて「いい大人がこんなことをやって」と自虐的に語っても、小池栄子は「そんな……お仕事ですからね」と平然とフォローする。村上龍は「これを作った人は仕事だと思ってないんだよ!」と笑うが、僕もそう思う。誰もやっていないこと、好きなことを続け、独創性を追い求める。海洋堂はそれを実践して来ただけなんだろう。だからオタクの走りと言われ、今も敬意を集めている。だが、先人は打たれ、否定される。造形職人もアーティストと呼ばれることに困惑するらしい。しかし、現在は『カンブリア宮殿』に海洋堂が紹介されることに違和感を覚える人はいない。時代が彼らに追いついた。

 海洋堂のフィギュアも、その存在も、面白過ぎることは30代 のサブカル好きにとっては周知の事実だ。プラモデル屋の主人とそこに集まった少年たちが「こんなの子供だましや!」と自分が欲しいものを作ってしまった。 マーケティングも成長も未来もいっさい興味がなく、ただ「今」やりたいことを続けてきた海洋堂。ミュージシャンもマンガ家も映画監督も、かつては「待つ」の が基本だったが、今はそんなこと言ってられない。自分で作り、発表するのも珍しくなくなってきた。これからはそんな動きがさらに加速するだろう。海洋堂の歴史を見て、今のDIYの先駆けなんだな、と思った。
(文=松江哲明/映画監督)

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最終更新:2012/10/08 07:00
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