日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > アニメ界を駆け抜ける嵐! 勢いでアニメ戦国時代を突っ走るショートアニメの世界
週刊アニメ時評 第28回

アニメ界を駆け抜ける嵐! 勢いでアニメ戦国時代を突っ走るショートアニメの世界

teq.jpgTVアニメ『『てーきゅう』

 今、ショートアニメが熱い! というわけで、今回オススメしたいのはテニス部員の女子を描きながらも、ほとんどテニス要素なしのギャグアニメ『てーきゅう』だ。本作は、通常5分枠内で放送されるショートアニメの中でも、さらにショートな3分枠で放送される超ショートアニメである。


 その魅力はなんといっても、OPテーマを除けば実質の約90秒の本編で繰り広げられる怒涛のギャグとセリフの波状攻撃だろう。異常なテンポの良さで次から次へと展開する本作は、キャラの動きを追いかけるだけでも一苦労。ちょっと立ち止まって考える暇すら与えない構成を見ていると、だんだんと思考を放棄したくなること必至である。現在、ニコニコ動画では第1話から第4話までを無料で視聴できるが、それを立て続けに見ているとちょっとしたドラッグムービーを見ているような、ある種のトリップ感を味わえることだろう。

 また、ファンシーな外見ながら、肉と金と女が好きという超俗物なキャラクター・うーさーの魅力が炸裂する『うーさーのその日暮らし』も出色のショートアニメだ。うーさーを演じるのは、クールなキャラクターからエキセントリックなギャグキャラまでなんでもこいの人気声優・宮野真守。彼の渋い演技とうーさーのビジュアルがシュールな笑いを生む本作は、宮野ファンならずとも彼の声の魅力にハートをつかまれることだろう。この作品も、ニコニコ動画でアーカイブ視聴が可能となっているので、興味がある読者はぜひとも一度うーさーの魅力に触れてほしい。

 このようにテレビアニメの多様化が進む昨今、密かな盛り上がりをみせているショートアニメというジャンルだが、かつてはテレビ局のキャラクターなどを使った低予算アニメやアクの強い個人制作アニメなどが主流であり、言わばアニメファン向けの商売ができるコンテンツではなかった。しかし現在、アニメファン向けのショートアニメがテレビという媒体と並行してニコニコ動画をプラットホームとして発信されていることは、非常に興味深い。

 短い放送時間内に怒涛の勢いで畳み掛ける『てーきゅう』は字幕コメント、弾幕コメントというニコニコ動画ならではの文化や「祭り」というネット特有の現象と非常に親和性が高いといえるし、『うーさーのその日暮らし』の独特の持つ独特のノリは同好の士と実況しながら視聴するのにちょうどいいアングラ感とテンポ感を持っている。

 今回は上記の2タイトルをピックアップしているが、現在アニメファンに受けているショートアニメ作品に共通しているのは、いずれも短時間にインパクトと話題性を視聴者に提示する動画サイト時代ならではの作り方を追求しているという点だろう。

 つまり、これらショートアニメ作品は、ネット配信のために作られたアニメだということだ。もはやアニメを放送するのに、テレビというフォーマットを想定する時代ではなくなったのだ。アニメーションが誕生して数十年。様々な表現が生み出され、進化を続けてきた日本のアニメ文化だが、ネット文化と結びついたショートアニメから、次世代の表現というものが生まれつつあるのかもしれない。
(文=龍崎珠樹)

「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

最終更新:2019/03/01 18:30
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真