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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.293

映画よ、これがVシネマだ。史上最凶のアニキたちがVシネ記念作『25 NIJYU-GO』でドリーム競演!

nijugo02.jpg汚職公務員(温水洋一)が持ち出した年金25億円に、誘蛾灯に引き寄せられた羽虫のようにバーのママ(高岡早紀)ら悪いヤツらが群がる。

 哀川翔が映画やテレビでも活躍するようになったのに対し、小沢兄弟はVシネマを主戦場にして今も戦い続けている。小沢兄は自覚しているだけで全身を47回骨折している。でも、どんなに大怪我を負っても現場に立ち続ける。泳ぐのをやめると死んでしまうサメみたいな兄弟だ。今回、メガホンをとった鹿島勤監督は代表作にVシネ版『静かなるドン』シリーズがあるが、主演の香川照之に1シーンで100回NGを出したことで知られる。テイク99とテイク100の違いは何だったんだろうか? Vシネの世界では、そんな伝説がゴロゴロしている。キツくて、痛くて、寝る暇もない。それでも彼らはオファーがある限り、Vシネの仕事を続ける。テレビドラマや映画よりも、ずっと自由な空気がVシネの現場にはあるからだ。スポンサーや事務所の顔色を気にすることなく、彼らは現場で来る日も来る日も暴れ続けた。

 『25』での哀川翔は悪徳刑事役。その相棒に寺島進、腹に一物ありそうな警察署長に大杉漣、ヤクザの組長兄弟に小沢仁志・和義、中国マフィアに竹中直人。さらに石橋蓮司、笹野高史、菅田俊らも登場する。これだけキャリアのある俳優たちが集まれば、フツーの映画なら重厚な作品になるはずだが、『25』はまったくその逆を行く。濃い顔ぶれがそろえばそろうほど、物語にB級感がどんどん増していく。翔アニキは主演作がすでに110本を越えるのに、その芝居は実に軽やか。軽妙に、軽快に、でも軽薄にはならない、味のある軽さだ。演技のうまい下手は関係ない。この軽みこそ、翔アニキの持ち味だろう。横領した年金25億円を持ち逃げするキーパーソン役は温水洋一。彼は劇団「大人計画」に所属時代、やはりVシネの人気シリーズ『痴漢日記』に出演していた。そんな欲深い男たちの祭りに、彩りを加えるのは高岡早紀と岩佐真悠子。男たちを手玉に取る悪女役を2人とも楽しげに演じている。テレビや映画では見せない、リラックスした実にいい表情で男たちをたぶらかす。

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