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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.292

『キス我慢選手権』の最中に“アイ”を叫んだけもの 劇団ひとりこと川島省吾は脚本なき人生を生きる!!

kiss_gaman2_01.jpg『キス我慢選手権 THE MOVIE2』でヒロインに抜擢された上原亜衣。彼女は劇団ひとりを狂わせる魔性の女か、それとも運命の恋人か?

 主演俳優のみならず、共演者も脚本家もカメラマンも、そして監督ですら結末を知らずに物語が進むという壮大な実験映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』(13)が帰ってきた。『キス我慢選手権』にはこれまで何度も裏切られてきた。テレビ番組『ゴッドタン』(テレビ東京)の人気企画だった『キス我慢選手権』が映画化されると聞いたときは、「テレビだから面白いのに、映画化する意味があるのか」といぶかしんだが、完全に裏切られた。劇団ひとりが24時間をアドリブで演じ通すという驚異のノンストップムービーとして、映画館を爆笑と感動の渦に巻き込んだのだ。そして前作のヒットを受けて登場したのが、『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』。「さすがに前作以上に面白いものは無理だろう」と予測していたら、またしても見事に裏切られた。劇団ひとりのアドリブも、共演陣やスタッフの対応もさらなる進化を遂げ、前作以上に面白い作品に仕上がっているではないか。

 今さら説明するまでもないが、『キス我慢選手権』は深夜番組『ゴッドタン』の企画のひとつであり、お笑い芸人たちがセクシーアイドルたちのキスの誘惑にどれだけ耐えられるかを競い合うシンプルな内容だった。企画を盛り上げるためにドラマ的なシチュエーションを設けたところ、劇団ひとりが人格交替したかのような尋常ならざるアドリブ能力を発揮。美女たちの甘いキスをかわすために次々とキザな台詞(=痩せ我慢)を連発した。ゼロ年代の名作『SRサイタマノラッパー』(09)でヒロインを演じるなど長回しになればなるほど魅力を発揮するみひろが劇団ひとりのアドリブに対応し、伝説級の名場面の数々が生まれた。どれだけキスを我慢できるかという当初のコンセプトから大きく逸脱し、男と女の見栄と本音が激しくせめぎあい、そしてドラマならではの娯楽性とドキュメンタリー的なリアルさを兼ねそろえた奇跡的な映画へと羽ばたいていった。だが、『キス我慢選手権 THE MOVIE2』には劇団ひとりの潜在能力を存分に引き出してみせたミューズ・みひろはもういない。一抹の寂しさ、喪失感が漂う。それでも、劇団ひとりは新しいステージへと単身で挑む。

 前作の劇団ひとりは、自分が何者であるかを知らない『ボーン・アイデンティティー』(02)のジェイソン・ボーンを思わせる凄腕のスナイパー役だった。アドリブで演じるうちに自分の正体に気づき、巨大な組織を相手に戦うというハードボイルドタッチの内容だった。今回はTVシリーズで人気を博していた青春学園ドラマという設定で始まる。メインキャストが一新された『キス我慢選手権 THE MOVIE2』の共演女優は、2011年にAVデビューして、たちまち売れっ子になった上原亜衣。清純そうなルックスながら、大胆プレイで男性ファンのハートと局部を鷲づかみしている。豊かなバストから母性愛がほとばしる白石茉莉奈、アイドル並みのキュートな容姿を誇る小島みなみも出演。前作のみひろ、葵つかさ、紗倉まなも強力だったが、今回もAV界のトップ女優をきっちりと押さえている。前作越えを狙う、スタッフの本気度が感じられるキャスティングだ。

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