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うどんも、そばも、ハンバーガーも! 全国レトロ系自販機の魅力を詰め込んだ『日本懐かし自販機大全』

61wpfwgAXcL.jpg『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)

 全国各地至るところに自販機が存在する“自販機大国”ニッポン。その数、およそ500万台ともいわれる。とくに、飲料やタバコの自販機は揺るぎない地位が確立され、街角や駅、高速道路のパーキングエリアで日常的に利用する人も多いと思う。そんな市民権を得ている自販機とは別に、うどん、そば、ハンバーガーなどが販売される“食品自販機”の存在をご存じだろうか?


 「えっ、食品が自販機で出てくるの!?」「腐らないの!?」と驚く読者もいるかもしれないが、その歴史は40年以上もさかのぼり、上記の食品以外にも、トーストサンド、カレーライス、お弁当などバラエティ豊か。昭和59(1984)年の全盛期には25万台も存在していたほど、メジャーな存在だった。当時は、自販機数台をズラリと並べた自販機コーナーが「オートスナック」「コインスナック」「ベンダーショップ」と呼ばれ、郊外で続々とオープン。世の中が24時間営業ではなかった頃、硬貨を入れると、あっという間に熱々の食べ物を提供してくれる食品自販機は、実に重宝された。しかし、24時間営業の店が普及するとともに次第に廃れてしまう。

 時を経て、2015年。食品自販機は機械の老朽化もあり、絶滅しかかっているものの、全国にはまだまだ現役で存在している。今ならまだ出合える! と、その魅力を余すことなく伝えている一冊が『日本懐かし自販機大全』(タツミムック)である。著者の魚谷祐介氏は、食品自販機をこよなく愛し、まるで時が止まったような昭和レトロな懐かしさを感じる食品自販機=“懐かし自販機”と名付け、懐かし自販機を求めて全国各地を旅する、この道の第一人者。本書では、食品自販機の歴史、年季の入った名機たちの紹介、気になる内部のメカニズム、実際に訪れることができる全国各地の自販機コーナーの紹介、自販機の神と呼ばれる、島根と山口のめん類の自販機のメンテナンスを一手に引き受けるプロ・田中健一氏へのインタビューなど、実に濃い内容が盛り込まれている。

 自販機というと、相手は当然ながら機械。ところが、魚谷氏は自販機の神・田中氏とのインタビューの中で「ファストフードやファミレスと違うのは、機械なのに血が通っている感じがするところですかね。さらに、時代の中で淘汰されながらも、この辺りの店舗みたいにいいもの(おいしい食品を提供する自販機)だけが残っているんだと思う」(本文より)と語る。

 「機械」と「温かみ」は、正反対に位置しているように感じるが、食品自販機は飲料やタバコなどと違い、賞味期限が短く、しかも、よりおいしいものを提供しようと考れば、手間がかかる。つまり、食品を提供するために、毎日中身を入れ替え、鮮度をチェックしたりと、裏で支えている人がいるということなのだ。無人なのに感じる人情――。知れば知るほど奥深い、哀愁漂う自販機の世界を、ぜひともこの本で堪能してもらいたい。
(文=上浦未来)

●うおたに・ゆうすけ
レトロ系フード自販機の第一人者であり、Webサイト「懐かし自販機」(http://jihanki.michikusa.jp/)を管理運営するマルチクリエーター。ミュージシャン、Webデザイナー、フォトグラファーとして多岐にわたり活動中。本質的には“旅人”。風情と味わいを求めて、現存する全国すべての“懐かし自販機”を訪ねて取材、記録している。

最終更新:2015/01/21 21:00
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